旧約聖書は「律法」「歴史書」「詩歌書」「預言書」の4つ
律法
もう一つの名は「モーセ五書」
はじめの
- 創世記
- 出エジプト記
- レビ記
- 民数記
- 申命記
これらが「律法」と呼ばれる部分です。そのすべてをモーセが書いたと伝統的に考えられてきたことから「モーセ五書」とも呼ばれますが、今では研究が進んで、すべてをモーセが書いたのではないようだということがわかっています。この五つの書は、キリスト教が教える「罪」と「救い」を理解する上で非常に重要なものです。
物語として読んで面白いのは創世記の全体と、出エジプト記の20章くらいまででしょうか。まずはそこまでだけでもしっかりと読まれることをおすすめします。あとの書で、ここに描かれている物語への言及がたくさん出てくるからです。
出エジプト記20章よりあとには細かい規定集が書かれているのですが、それゆえにこの五つの書は「律法」と呼ばれていて、これも大切な部分です。今、キリスト教会でこれをすべて守っているということではありませんが、やがて世に来られるイエス・キリストが律法についての正しい理解の仕方をお教えになるので、この部分も知っておく必要があります。
歴史書
イスラエルの繁栄と滅亡
次のヨシュア記からエステル記までが「歴史書」と呼ばれる部分の書物です。
- イスラエルの民のエジプトからの脱出
- 40年の荒野の旅
- 約束の地カナンへの定住
まず、これらをヨシュア記が扱っています。
続いて、士師(しし)たちがイスラエルの指導者として活躍した時代を士師記が描きます。
やがてイスラエルは周辺諸国に習って王制をとり、イスラエル王国となります。ダビデ王・ソロモン王の時に栄華を極めるけれども、その後、神に従わない王が続いて、神の怒りを買い、王国が分裂し、北王国がアッシリアに、南王国がバビロンに滅ぼされて、王国は終焉、民はバビロンに捕囚として連れて行かれます。
70年の後にバビロンがペルシャ帝国に滅ぼされ、補囚民はエルサレムに帰還します。その歴史を
- 列王記
- 歴代誌
- エズラ記
- ネヘミヤ記
が記しています。
エステル記はペルシャ帝国時代の物語です。
詩歌書
知恵と愛の歌
詩歌書には様々な文学類型の書物が含まれています。その代表が詩歌集である詩編で、150編が収められています。ヨブ記・箴言・コヘレトの言葉は「知恵文学」と呼ばれています。雅歌は男女の愛と性について歌っています。
成立年代は様々で、ヨブ記は創世記よりも古いと言われていますし、「知恵文学」は知恵者として名高かったソロモン王の時代に諸外国との文化的交流を通して発展したもののようです。
預言書
神から言葉を預かった者たち
イザヤ書以降マラキ書までが「預言書」と呼ばれる書物です。カタカナはすべて、預言者の名前です。このうち、
- イザヤ書
- エレミヤ書
- 哀歌
- エゼキエル書
- ダニエル書
以上を「大預言書」と呼んでおり、
- ホセア書
- ヨエル書
- アモス書
- オバデヤ書
- ヨナ書
- ミカ書
- ナホム書
- ハバクク書
- ゼファニア書
- ハガイ書
- ゼカリヤ書
- マラキ書
これら12の預言書は「小預言書」と呼ばれています。それは分量の大小でそう呼ばれているだけで、内容の重要度の差によるものではありません。
「よげん」と聞いて、「予言」という漢字が思い浮かぶ方が多いと思いますが、聖書で言う「よげん」は、未来のことを予言することではなく(そのような内容のものも実際にはありますが)、神から預かった言葉という意味で「預言」、またそのような言葉を取り次いだ人のことを「預言者」と呼んでいます。これらの預言書の中の言葉が、新約聖書において、イエス・キリストによって「成就した」と記されて、たくさん引用されています。
前後も知っていることを前提にして引用している箇所もあるので、新約聖書を理解するためには、預言書もよく読んで、知っておく必要があります。
聖書は「旧約聖書」と「新約聖書」全66巻から成り立ちます。そのうち旧約聖書は39巻。天地創造から始まって、イエス・キリストが生まれる400年ほど前までのイスラエルの歴史を扱っています。この39巻の書物は大きく分けて「律法」「歴史書」「詩歌書」「預言書」の4つに分類されます。ここでは4つの特徴と簡単な内容について紹介しています。