勝利のために神の掟を守る

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聖書の言葉

「イスラエルよ。今、わたしが教える掟と法を忠実に行ないなさい。そうすればあなたたちは命を得、あなたたちの先祖の神、主が与える土地に入って、それを得ることができるであろう。」

旧約聖書 申命記 4章1節

大西良嗣によるメッセージ

今、私たちは、「戦争を感じさせられる」、そんな時代を生きています。戦争は、誰もが避けたいと願うものですが、聖書を読むと、特に旧約聖書の中に、戦争を肯定するような言葉が出て来ます。しかも、他の人たちが住んでいる土地に入って行って戦い、その土地を奪い取るように命じる言葉まであります。現代の感覚で言えば、侵略戦争と思えるようなことです。旧約聖書に記された言葉を、戦争を肯定する言葉として単純に受け取って、戦争に向かってしまう人たちが、今も少なくないかもしれません。

しかし、それは、聖書の意図をきちんと受け取っているとは言えません。聖書を丁寧に読みますと、私たちが戦争に関して考えることの常識と、かなり違うことが書かれています。

ふつう、戦争に勝利しようと考えるならば、軍備を増強するように命令するのではないでしょうか?武器をたくさん用意しておけば、戦いに負けないと考えるのが常識です。ところが、旧約聖書を読んでも、戦いに勝利するために武器をたくさん用意するように命じる言葉はありません。あるいは、常識的には、武器を使いこなすために、兵士を訓練しておくことも大切でしょう。ところが、聖書には、兵士を訓練するように、命じる言葉も出て来ません。

旧約聖書の中で、戦いに勝利するために命じられているのは、神の与える「掟と法」を忠実に守ることです。旧約聖書の中には、たくさんの「掟や法」が記されています。それらを「忠実に守るように」と言うのです。ところが、その「掟」の内容を見ても、戦争の勝利につながるようなことは命じられていません。

例として、「掟」を1つ紹介します。こんな「掟」です。3年ごとに、農作物の収穫の十分の一を、町の中に蓄えておくようにというものです。その蓄えたものを用いて、貧しい人たちを援助するために用います。具体的には、「寄留者」(今で言う在留外国人に当たる人たちのことです)、それから「孤児」(両親のいない子どもたちです)、そして「寡婦」(夫を亡くした女性。今で言えばシングルマザーに当たるでしょうか)、このような人たちが「食べて満ち足りるようにしなさい」と命じられています。つまり、経済的に苦しくなることが多い、在留外国人や、孤児や、シングルマザーのような人たちの生活を援助するように命じられているのです。言ってみれば、福祉的な「掟」です。

あるいは、このような「掟」もあります。貧しくて借金をした人について、「7年毎に借金を帳消しにしなさい」という「掟」です。借金の返済を免除してしまうのです。お金を貸した人にとっては、大きな損失になりますが、そのようにして、貧しい人たちを助ける「掟」です。

神である主が与えられる「掟や法」には、このような貧しい人たちを助ける「掟」が含まれています。戦争に勝利するためには、何の役にも立たないように見えます。しかし、このような「掟」を含む、神の「掟や法」に従うならば、戦争に勝利できると教えられているのです。

常識的な感覚では、軍事力になる馬をたくさん購入したり、強大な軍事力をもった大国を頼りにしたりすることのほうが、戦いに勝利するために必要なことです。ところが、聖書では、たくさんの軍馬を購入したり、軍事大国と同盟を結んだりすることは、不信仰なこととして断罪されています。そのようなことをしても、戦争に勝利することはできない。かえって国が滅ぼされることになると警告されるほどです。

聖書を読みますと、「戦争を感じさせられる時代」の中で、何を大切にすべきかを、教えられます。人間の常識的な感覚で行動をすると、実際には戦争に勝利するどころか、破滅への道を進むことになりかねません。

神の掟には、多くのことが記されていますが、その要点は、つぎの2つにまとめることができます。1つは、唯一のまことの神だけを拝むこと。そして、もう1つは、他の人たちを自分自身のように大切にすることです。この2つを守ることは、平和への道にもつながります。そして、実際のところ、平和こそが、誰にとっても、最大の勝利です。

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