神の眼差し

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聖書の言葉

わたしの目にあなたは値高く、貴く、わたしはあなたを愛し、あなたの身代わりとして人を与え、国々をあなたの魂の代わりとする。

旧約聖書 イザヤ書 43章4節

長谷部真によるメッセージ

【溢れるほどある私たちの思い悩み】

コロナ禍が長く続き、ネット動画を視聴する時間が長くなっている、という記事を読みました。誰もが簡単に配信できて、誰もが簡単に動画を視聴できる。便利であると同時に、情報が溢れて、大変な時代になったなぁと思わされます。私も時間のある時、よく動画を視聴します。ある動画が好きでよくみていました。ある有名な実業家で、お酒を片手に動画のチャット欄に送られる質問に応える動画が話題になりました。豊富な知識と経験で、分かりやすい答え方が人気で、多くの人々がお金を払って質問を投げかける。そんな動画です。進学先の悩み、就職・転職の悩み、老後の貯蓄の悩み、家族や友人との関係の悩み。さまざまな年代の方が、この実業家に質問を投げかけます。誰にも相談できない悩みを、理路整然と軽快に答える姿に「なるほど」と思わされました。ふと思ったのは、私たちの人生は、どうしてこんなに悩みが多いのだろう、ということです。私たちは些細なことから大きなことまで、思い悩みに対する答えを求めるものです。

【私たちの「物差し」】

動画に寄せられる相談は、生活が行き詰まったり、絶望の中で苦しんだりするものでした。具体的な逃げ道や対策をアドバイスする実業家に、私も感心していました。しかし、気になることが一つありました。それは彼が質問者に対して、「無能」という言葉を何度も使っていたことです。「仕事がうまくいかない」、短い質問に、淡々と分かりやすい方法をアドバイスしていました。言葉を選びながらもその人を「無能」と評価しているように聞こえました。

動画の彼だけでなく、私たちは普段、人間関係の中で、相手と自分を比較しながら、自分の、また他人の価値を計っています。学校の成績、会社の業績、人間関係。競争でお互いを高め合うことは大切です。しかし私たちはその競争の中で、しばしば「無能」「価値が無い」と無意識にお互いの価値を低め合うことがあります。「私はあなたよりも上」、「あなたは私より下」。私たちは社会の中のさまざまな物差しに囲まれています。そして社会の中で自分自身を計り、相手の価値を計ることに慣れています。しかし、互いに「無能」「価値が無い」と思い込ませる物差しに、心が傷つけられた方々の相談を受けることが少なくありません。「価値がない」と自分を評価する「社会の物差し」に疲れることはないでしょうか。

【神様の眼差しに、あなたは値高い】

思い悩む人生を送りたい人はいないはずですが、社会の物差し、人々の眼差しに囲まれる中で、自分の価値を見失い、思い悩むことが少なくありません。先ほどお読みした聖書の書かれた時代から、私たちの思い悩みは絶えることはありませんでした。聖書の時代、人々は戦争の末に国を失いました。「国を失った民」「神に見捨てられた民」として、虐げられ、自分の価値と希望を失った中でバラバラに生きていました。

しかし神様は、自分の価値を失い、絶望にいる人々に向けて、預言者を通して、「わたしの目にあなたは値高く、貴い」と語りかけます。マタイによる福音書6章25〜34節で、イエス様は思い悩みの多い私たちに、「空の鳥」と「野に咲く花」に目を向けさせて、「思い悩むな」と教えられます。「空の鳥をよく見なさい。種も蒔かず、刈り入れもせず、倉に納めもしない。だが、あなたがたの天の父は鳥を養ってくださる。あなたがたは、鳥よりも価値あるものではないか。」神様に造られ、生かされている私たちに、イエス様は「顔をあげなさい」と語りかけるのです。

【温かい神様の眼差しに、生きる希望がある。】

世界を造られ、今も導いておられる神様ご自身の眼差しに、「あなたは値高く、貴い」と告げられる。お互いの価値を定めようとする時に、私たちの眼差しは、時に冷たくなることがあります。しかし、「あなたは値高く、貴い」とおっしゃる神様の眼差しはあたたかいものです。そのあたたかい眼差しの神様は、「わたしはあなたを愛し あなたの身代わりとして人を与え 国々をあなたの魂の代わりとする」と約束され、私たちに愛を注いでくださいました。

教会のカレンダーでは、アドヴェントという季節を過ごしています。救い主の誕生を祝うクリスマスの日を待ちながら私たちは時を刻みます。それは、世界と私たちを造られた神様から、私たちに愛が贈られた日だからです。2000年前のあの日、救い主の誕生の知らせは、暗闇の中に生きる羊飼いたちに、真っ先に伝えられました。「わたしの目に、あなたは値高く、貴い」そうおっしゃってくださる神様のあたたかい眼差しに、私たちは今朝も招かれています。教会の礼拝では、神様の御言葉が語られています。アドヴェントの日曜日、神様の祝福が豊かにありますように。

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