朽ちない冠

私は子どもの頃、運動会が大嫌いでした。いや、100メートル競走が嫌でした。なぜなら、いつも決まってビリだからです。小学校、中学校と9年間も決まって最後尾なのです。スタートの合図と共に出たはずなのに10メートルも走らないうちに後ろには誰もいなくなるのです。そのころの級友に会って食事をするときこの話が出て、「お前と走るグループになると安心だった」と笑い話になります。

今朝の聖書の箇所はコリントの信徒への手紙一9章24節です。

クリスチャンになってこの聖句を知り、「聖書でも一等賞を取るように言っているのかなー？」と少し不機嫌に思いました。ところが、よく学んでみると大きな間違いをしていました。「賞を得るように走る」というのは、他の人より早く走りなさい、という意味ではなく他人の益になるように、他人の信仰にとってプラスになるように走りなさい、という意味なのです。

確かに私たちクリスチャンには神様から「朽ちない冠」が約束されています。オリンピックの金メダルという栄光にも勝る、朽ちることの無い大きな栄誉が約束されています。しかし、この栄光はほかのクリスチャンと競争して打ち勝つことで得られるものではありません。むしろ、どれだけ他の人の為に生きたか、他の人の信仰を高めるために、徳を高めるためにどれほど自分自身を用いてきたのか？それが問われているのです。そのような目的で自分の自由をコントロールし、節制をするのです。信仰を得て、クリスチャンとして生きる時、何らかの制限、自制は必要とされます。滝に打たれたり、断食をしたりの難行苦行は必要ありませんが、努力は必要な事と思います。こうする時に、クリスチャンは本当の神様のアスリートになるのです。ゴールした時、キリストから朽ちない冠を頂くことが出来るのです。それは決して他人に勝つためではありません。あくまでも、神の家である教会を建てあげるため、また、互いの信仰を高め合うためなのです。

聖書にパウロという人がいます。彼は教会のため、福音のために自分に厳しい生き方をした人です。パウロは「自分の体を打ちたたいて従わせます」とまで言います。

福音を宣べ伝える、自分自身の生き方を通じて、自らの自由を捨てて他人の為に生きたイエス様の生き方を表すという究極の目的のためには、あらゆる個人的な欲望をもコントロールして生きていく覚悟がありました。多くの人々にイエス様の教えを伝え広めていながら、自分自身がダメな人間にならないように、自分に厳しく律していました。パウロという人はそんな人でした。

オリンピック、パラリンピックの最中に、世界中を不安に陥れたコロナの災難も終わりそうに見えてきました。2022年の新しい年、自由な安全な生活が取り戻せるかもしれません。

過去、2年間は経験したこともない制限と節制を強いられましたが、今こそ神様のアスリートとして隣人の信仰と豊かな生活のために何か、力になってあげたいものです。他人を押しのけて先頭に立つ必要はなくなりました。いつもビリだった100メートル競走も「最後尾を自分が守ってきた」と思えば随分楽になりました。オリンピック選手のような栄冠は味わえませんが、神様から与えられた見えない自分だけの栄冠は等しく得られる賞です。

私は、神様の教えに従い、人に仕え、人に少しでも喜ばれる生活を目指して行けるでしょうか？と、いつも自問自答しています。

「あなたがたも賞を得るように走りなさい」の御言葉が他の人の益の為に、更に他の人の信仰の為に、とは何と大きな、み言葉の力でしょうか？何と懐の広い信仰でしょうか？これがキリスト教信仰だと思います。この世の月桂樹は時がたてば無くりますがイエス様から授かる冠は朽ちない冠です。

ラジオお聴きの方で初めてこの聖句に出会えた方は是非神様のアスリートになれる様、挑戦してください。価値ある目標を定めるなら、たとえどんな困難に遭っても全ての事に意味があります。神様はあなたを「忠実な僕だ。私はあなたの歩みを全て知っている。誰も見ていなくても勝利者だ」と、言ってくれるでしょう。神様が示してくれた道をしっかり定め、あなたの賜物を生かして意義ある人生を送りましょう。

聖書は時折、文面だけでは分かり難い、隠された神様の奥儀を語ります。お近くの教会の扉を叩き、先生とお話してください。そして正しい聖書解釈を得てください。訪ねていくあなたを先生は喜んで迎えてくれるでしょう。お話の中から、神様の隠された奥儀がはっきり見えてくることと思います。

新年はどのような目標を心にお持ちですか？今の時代は災害、経済難、人間関係、病気など多くの困難が沢山報じられます。そんな中にあっても神様の恵みと導きは確かに与えられます。あなたに備えられた新しい年は、あなたの歴史に残る1ページとなることでしょう。

教会はあなたのおいでをお待ちしています。