波風を静められる主

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聖書の言葉

わたしたちの救いの神よ

        あなたの恐るべき御業が

わたしたちへのふさわしい答えでありますように。

遠い海、地の果てに至るまで

        すべてのものがあなたに依り頼みます。

御力を持って山々を堅く据え

雄々しさを身に帯びておられる方。

大海のどよめき、波のどよめき

諸国の民の騒ぎを静める方。

旧約聖書 詩編 65編6~9節

長谷部真によるメッセージ

先日SNSで、ある友人が「コロナ禍」の禍を「渦」という漢字に書き間違えた、と投稿しているのが目に留まりました。私たちの日常を含めて社会全体が、渦や荒波のように目まぐるしく変化しています。その一方で、非常事態が日常となり、出かけたいところに出かけられなかったり、親しい方々と会えなかったり、多くの制約を受ける毎日に、疲れを覚える方も多いのではないでしょうか。先の見通しの立たない息苦しさの中で、早くこの禍が過ぎ去ってほしい、誰か助けて欲しい、そんな思いが募り、気持ちも沈むこともあるかもしれません。実は私自身も最近、気持ちの沈みからか、体に不調を覚えることがありました。しかし息苦しさと思い悩みの多い現実がある一方、今朝の詩編に目を向けますと、詩人の神様への賛美がささげられています。

詩編の歌い手は、世界を造られた神様の御力と、その御支配に生きる恵みを喜びます。「わたしたちの救いの神よ あなたの恐るべき御業が わたしたちへのふさわしい答えでありますように。遠い海、地の果てに至るまで すべてのものがあなたに依り頼みます。」私たちの生きる世界を造られた方は、生きて私たちに思いをよせ、支配しておられる。私たちの生きる世界の遠い海と地の果てに至るまで、その御支配が及ばないところはない。神様への深い信頼が、歌われています。詩人にとって、神様はどんな方でしょうか。「御力を持って山々を堅く据え 雄々しさを身に帯びておられる方。大海のどよめき、波のどよめき 諸国の民の騒ぎを静める方」山々のように、決して揺らぐことのない雄々しさを持つお方、それが神様というお方である、と詩人は歌います。この神様の御支配のうちに、平安のうちを歩んでいることの信頼を、詩人は歌います。私たちは嵐や荒波を前にした時、それを静めることは出来ません。しかし、海や波のどよめき、人の力ではどうしようもない禍をも静めるお方が、わたしの救いの神として共におられる。詩人は喜びと信頼の歌を神様にささげます。

イエス様と弟子たちが福音宣教の旅を続けていた頃、嵐に遭遇したことがありました。ある日の夕方、イエス様が弟子たちに、ガリラヤ湖の「向こう岸へ渡ろう」と言われます。夕方の舟旅ということで、漁師出身の弟子たちの中には、不安を覚えた人もいたかもしれません。イエス様は弟子たちの漕ぐ舟の後ろに一緒に乗って、出発しました。やがて天候が変わり、弟子たちの乗った舟は激しい突風によって波を被り、水浸しになりました。今にも沈みそうな舟になんとかしがみつきながら、弟子たちは慌てふためきます。嵐がいつおさまるのかも分からない。灯りもなく、自分たちの進む道も分からない。弟子たちの心は不安で満たされていました。ふと舟の後ろを見ると、弟子たちの不安をよそに、眠っておられるイエス様の姿がありました。

当然、弟子たちはイエス様を起こして叫びます。「先生、わたしたちがおぼれてもかまわないのですか」それは弟子たちの心からの叫びであり、イエス様に向けられた助けを求める祈りでした。するとイエス様は起き上がって、風を叱りつけ、湖に「静まりなさい」と命じられました。その言葉によって嵐はおさまり、静かになりました。弟子たちはイエス様を恐れると共に、イエス様が共におられることの平安を覚えました。

弟子たちの舟旅には、波や風を静めることの出来るお方、イエス様が共に乗っておられました。イエス様は恐怖におののいていた弟子たちに、「なぜ怖がるのか、まだ信じないのか」と語りかけられます。「なぜ怖がるのか、まだ信じないのか」その言葉の後に、イエス様はこう思われていたかもしれません。「わたしがいるというのに。」イエス様は、目の前の事柄や、自分の思いに振り回されてしまう、私たちの弱さも、全てご存知でした。その上で、私たちと共にいる。

私たちの歩みも、暗闇の中を漕ぎ出した弟子たちと重なるかもしれません。先の見通しの立たない中、希望が見いだせない中、私たちの心は目の前の事柄に揺さぶられ、いつの間にか目の前の事柄しか見ることが出来なくなり、不安で満たされていくことがあります。誰が自分の舟に共におられるのかが、分からなくなることがあります。しかし、実は私たちの舟旅は孤独の旅ではありません。そこには突風や大波に動じることなく、静めることの出来る神の御子イエス・キリストが、あなたの舟に乗っておられるのです。

新しい一週間、神様の支えと平安がありますように。

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