神の愛は落ち着かない

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聖書の言葉

主はすべての国を超えて高くいまし、主の栄光は天を超えて輝く。わたしたちの神、主に並ぶものがあろうか。主は御座を高く置き なお、低く下って天と地を御覧になる。

旧約聖書 詩編 113編4~6節

藤井真によるメッセージ

私の息子は5歳になりますが、家にいる時と日曜日教会で過ごしている時とでは、少し様子が違うように思えてきました。息子としてはいつもどおりにしているつもりかもしれませんが、家と教会とではなぜか違って見えるのです。教会だからといって、行儀良くしているというのではありません。教会に同年代の子どもたちがいるということもあるかもしれませんが、礼拝中も騒がしくしている。変な声でわざと賛美歌をうたったり、司会の先生を無視して、一人で勝手に喋り始めたりします。楽しいのは分かるのですけども、もう少し静かにしなさい、落ち着きなさいと言いたくなります。

この「落ち着く」ということは、子どもだけではなく、大人にとっても大事なことでしょう。私たちの人生にはたいへんなことがたくさん起こるのですけれども、もしそこで、パニックになってしまえば、ますます心が騒ぎ、冷静に対処することができなくなります。自分の心をいつも思いどおりにコントロールすることは難しいのですけれども、なるべく、落ち着いて物事をしっかりと見つめ、考えることができたらいいなと思うのです。

ところで、今朝のお話の題を「神の愛は落ち着かない」といたしました。「神様の愛は落ち着かない」と聞いて、皆様はどう思われるでしょうか。「ちょっとそれは困るなあ」と言う人が多いのではないでしょうか。私たち人間に落ち着きがないというのならば、まだ分かります。けれども、神様にはいつも落ち着いてもらわないと困ります。神様の心がぐらぐら揺れて、勝手なことをされたら困るのです。皆様は、落ち着きのない神様を本当に信じることができるでしょうか。心がいつも揺らいでいるような神様に自分のすべてを委ねることができるでしょうか。それはちょっと難しいかもしれません。しかも、神様の「愛」は落ち着かないというのです。愛というものにも落ち着きがなければ、その人の愛自体を普通は疑ってしまします。いったい神様の愛が落ち着かないというのはどういうことなのでしょうか。

最初に詩編の御言葉をお読みしました。神様というお方は高い所におられる。神様のご栄光というのは、天を超えて輝いていると言って、神様を心からたたえるのです。でも、聖書はこのようにも語るのです。「(その神様が)なお、低く下って天と地を御覧になる。」この「低く下って」というのは、「己を低くして」という意味です。聖書が語る神様というのは高い所や大きくて広い所にどっしりと腰を降ろして座り続けておられるお方ではないということです。

天におられる神様が、この世界をご覧になった時、そこにどんな人間が見えるのでしょうか。自分の罪に苦しみ、他人の罪に苦しめられている人間がいます。愛の関係が崩壊してしまっている家族や夫婦がいます。誰からも顧みられず、貧しい生活を強いられている者がいます。今の自分を運命のいたずらだと思い、諦めの思いに捕らわれ続けている者がいます。どれだけ祈っても願いが聞かれないと言って、信仰を失いそうになっている者がいます。死の恐怖によって、生きる望みを持つことができない者がいます…。

それらの人間の姿をご覧になって、いてもたってもいられない。落ち着いて、ここにじっとなどしていられない。わたしはどうしても人間の世界に、己を低くして下っていかなければないらない。これが神様の愛なのだと聖書は語ります。「低く下って」という言葉は、他の聖書の箇所では、「投げ捨てる」と訳されています。神様はご自分の身を投げ捨てるようにして、この地上に降りて来てくださったのです。天から身を投げ捨てたならば、どうなるでしょうか。それはもう本当にバラバラに砕け散ってしまうと思うのです。でも神様の愛というのは、それほど激しいということなのです。そのような意味で、神様の愛は落ち着かないのです。

来週はいよいよクリスマスです。クリスマスは、神の子であられるイエス・キリストが、私たちを罪から救い出すために、この世界に下って来てくださった出来事です。神様の愛の出来事、それがクリスマです。光に溢れ、美しい賛美歌が教会でも街でも流れ、静かな雰囲気の中で、クリスマスの喜びを噛みしめることもできるでしょう。でも、神様のご栄光というのは、見た目の美しさにあるのではないのです。私たち人間の悲惨というものをご覧になって、落ち着いてなどいられないと思われた神様が、ついには、御子イエス・キリストをこの世界にお与えくださいました。その神様の愛がイエス・キリストの十字架の上で明らかになりました。神が天から身を投げ捨てるというのは、主イエスが十字架について、自らのいのちを私たちのために献げてくださった出来事です。神の愛は落ち着くことを知りません。だからこそ、そこにあなたの救いがあるのです。

※音声のアップは少し遅れます。

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