ダニエルの預言(1)

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聖書の言葉

見よ、「人の子」のような者が天の雲に乗り、「日の老いたる者」の前に来て、そのもとに進み、権威、威光、王権を受けた。

旧約聖書 ダニエル書 7章13,14節

禰津省一によるメッセージ

ずいぶん昔のことですがノストラダムスの大預言と呼ばれる世界滅亡の預言が世界中を駆け巡ったことがありました。太陽系の惑星が直列する年に天変地異が起こり、世の終わりが来ると騒がれました。預言された年1999年7月がやってきましたが、結局何も起こりませんでした。人々の耳目を集め、有名になったりお金を儲けたりするために、埋もれていた預言を紹介したり、自ら預言を語る人はいつの時代にも現れるのだと思います。同じように人々を驚かせる占い師や超能力者と呼ばれる人々も出てまいります。しかし、聖書に登場する預言者たちは自分のためにではなく、神様によって使命を与えられて預言しました。その使命は、次の三つに分けることが出来ると思います。第一に今も世界を導いておられる愛と正義の神を告げ知らせること、第二に神に背く王や権力者を悔い改めさせて神に立ち返らせるためでした。そして第三は、迫害や弾圧に苦しむ信仰者を励ますためです。

預言者の中でも、ダニエルは少年の頃から神の特別の守りを受け、夢や幻を解き明かすたぐい稀な賜物を与えられました。ダニエルが活躍した時代は、旧約聖書の中では新約に最も近い時代です。すでに北王国イスラエルは無く、南王国ユダもバビロンによって滅ぼされ、人々は捕囚の民として連れ去られました。ダニエルは、次の大国であるメディアやペルシャが、バビロンにとって代わる時代まで活動します。さらにその先のギリシャによる支配の時代についてもダニエルは預言しました。地上の国家権力に翻弄される神の民の苦難は終わることがなく続くように見えるのです。そんな時代にダニエルは幻を見ます。

先ほど、お読みしました聖書の言葉は、ダニエルが見せられた幻とその中で聞いた神の御言葉です。四頭の獣が次々と大海の中から現れました。鷲の翼をもつ獅子、熊に似た獣、四つの翼と頭をもつヒョウのような獣、そして最後に鉄の歯と十本の角をもつ恐ろしい獣が出現しました。それぞれの獣はこれから地上に起こる四つの国家を表します。国家は本来、人々の福祉を増進し平和を保つために神様から立てられます。しかし、国家はしばしばそれ自身の権力保持のために獣となります。国民から自由を奪い国民を奴隷化します。支配者は、永遠の支配を目指して神のようになるのです。

イスラエルの民は、ペルシャの王クロスの時代、すなわち紀元前538年から537年に故郷へ帰ることを許され、エルサレム神殿を再建しました。やがてマケドニアにアレキサンダー大王が起こり、その後継者のギリシャ人の王がユダヤを支配するようになります。セレウコス王朝のアンティオコス4世は、ユダヤ教を禁止し、エルサレム神殿にギリシャ神話の神ゼウスの像を持ち込むことさえしました。信仰者たちは死を覚悟してこれに反抗したのです。

ダニエルが見た四頭の獣は、バビロン、ペルシャ、ギリシャであり、最後の獣はローマ帝国、あるいは、あらゆる野獣化した国家の象徴です。しかし、おごり高ぶる第四の獣を打ち殺すお方として「日の老いたる者」が現れます。その衣は白く、燃える炎を王座とします。この方が席について巻物を広げますと、その前に「人の子」のような者が天の雲に乗って到来します。「人の子」のような方は、権威、威光、王権を受け、諸国民は彼に仕えます。ダニエルは、宣言します。「彼の支配はとこしえに続き、その統治は滅びることがない」

この世界はいつも強い者、大きなものによって支配されるように見えます。現代においても超大国は覇権を争い、周辺の国は右往左往しています。しかし、この世界を真にご支配される方がおられるのです。

ルカによる福音書1章33節で天使ガブリエルは、ナザレという町で乙女マリアを祝福しました。「おめでとう。主があなたと共におられます」。そして「あなたは身ごもって男の子を産む。その子をイエスと名づけなさい」「神である主は、彼に父ダビデの王座をくださる。彼は永遠にヤコブの家を治め、その統治は終わることがない」と告げました。このガブリエルの御告げは、かつて預言者ダニエルが聞いた神の言葉と響き合っています。私たちは、イエス・キリストと言うお方に何を見るでしょうか。愛と赦しの神です。しかし同時に聖書が告げる主イエスのお姿は、起きては倒れるこの世の国の王とは違う王、真実の力ある統治者です。矛盾だらけに見えるこの世界です。しかし、このお方、まことの力ある王イエスに希望を置きましょう。

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