あなたはどこにいるのか

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聖書の言葉

主なる神はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか。」

旧約聖書 創世記 3章9節

常石召一によるメッセージ

神さまは、人類の代表者であるアダムに対して「どこにいるのか」と問われました。神さまは全知全能のお方ですから、人がどこにいるのかお分かりにならないはずがありません。この質問は、あなたは今、何県何市のどの辺りにいるのか、などという意味ではありません。実は、これは本来、人間が自分自身に問う必要がある言葉なのです。

「あなたは何をするために生まれ、今どのように生き、そしてどこに行くのか」、と問うているのです。これは人間にとってはとても大切な問いです。他の生き物は、こういうことを考えないのだと思いますが、人間はこの問いを必要としているのです。そしてその答えを必要としているのです。

皆様は、何をするために生まれて、今どのようにして生きておられるでしょうか。私の両親がまだ健在だった時のことです。ある夜、母が父に「お風呂が沸いていますから入ってください」と言いました。父は本を読みながら「うん」と答えはするものの、聞き流していました。父はもともとお風呂があまり好きではありませんでした。不潔にならないように仕方なく入浴するものの、優先順位としては高くなかったのです。けれども母はまた「お風呂が沸いていますよ」と勧めます。それが二、三度続いた後、父は(高知県出身でしたので高知弁で)こう言いました。「わしは、風呂に入るために生まれて来ちゃーせん」。それを傍で聞いていた私は笑ってしまいました。生まれて来た目的とお風呂を結びつけるというのは随分大袈裟だな、と可笑しかったのです。お風呂に入ることが人生の楽しみだという方はおられると思います。私自身、お風呂に入って、しみるように「生きててよかった」と思うことはあります。仕事を終えて、疲れている時には特にそうです。しかし、お風呂に入るために生まれて来た、と言うのとはやはり違うのだと思います。

では私たちは何のために生まれて来たのでしょうか、そしてどこへ行こうとしているのでしょうか?

先日、内藤朝雄さんという社会学者の方が書かれた本を読みました。そこに、寄生虫の話が載っていました。カタツムリは本来暗い所を好む生き物ですが、リューコクロリディウム属の虫に寄生されると、何故か光を求めて日中に行動するようになるのだそうです。動画サイトでその映像を見ました。この虫がカタツムリの角に入り込むと角が緑色に変わるのです。その部分がまるで青虫のように見えます。すると鳥が、そのカタツムリを見つけて青虫だと思ってついばむ、こうしてこの虫は今度はその鳥に寄生するのです。もともとこの虫は鳥に寄生することを目指してカタツムリに寄生していたのです。内藤先生はこう記していました。「カタツムリはこの虫によって、光を求めるように内側から操作されたと考えられる」。この本の題名は、『いじめの構造-なぜ人が怪物になるのか-』です。この虫のように何か得体の知れないものが人間を内側から操作して、いじめを起こさせているのではないか、と分析しているのです。

実は、聖書は、人は全員罪というものに乗っ取られている、そして操作されている、と言っています。聖書の中でパウロという人は「わたしは自分の望む善は行わず、望まない悪を行っている。それをしているのは、・・・わたしの中に住んでいる罪・・・。・・・わたしはなんと惨めな人間なのでしょう」と言っています。罪というのは、人に気付かれないように寄生して、とんでもない方向へ向かわせるのです。互いに憎しみ合い、争い合い、理解し合えない、そういう所へと連れて行くのです。

神さまがアダムに「あなたはどこにいるのか」と尋ねられたのは、人間が創られた本来の目的、いるべき場所から離れてしまったからです。そのことに気付かせるためなのです。

私たち人間の本来あるべき状態とは、かつてエデンの園で生きたように生きることです。そこでは、人は適度に労働し、人と人とは一つになるように愛し合いました。人間の前には常に神様がおられ、神様と共にいる深い安心の内にいたのです。しかし人は罪のためにエデンの園から追い出されました。それが今の私たちの状態です。私たちを取り巻く労働環境は厳しいものがあります。愛も自分本位なものになりがちです。

聖書が示しているのは、このエデンの園へと帰って行く道があるということです。救い主イエス・キリストがその道を開いて下さったということです。

人生、願った通りにいかず、落ち込むことがあります。失敗だなと思わされることもあります。しかしイエス・キリストと共に歩む時、イエス・キリストに裏切られることはありません。イエス・キリストは確実に、神さまの前で憩う場所へと連れて行ってくれるのです。その安心を味わっていただきたいと願っております。

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