父親の眼差し

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聖書の言葉

わたしは、こう祈ります。知る力と見抜く力とを身に着けて、あなたがたの愛がますます豊かになり、本当に重要なことを見分けられるように。

新約聖書 フィリピの信徒への手紙 1章9,10節

山中恵一によるメッセージ

現在、わが家では、3歳の長男と、じき9ヶ月になる長女とが、元気に動き回っています。長男はイヤイヤ期のど真ん中。彼が2歳になった頃にこれがイヤイヤ期かと感じ入ってましたが、甘かったですね。魔の2歳児、悪魔の3歳児という言葉があるそうです。何をするにも「イヤだ~」と、毎日、そのわがままぶりを惜しみなく披露してくれています。まぁ、それでも、子供が1人だけだったころは、親として大人対応をして、付き合ってあげていればそれで済んでいました。それも、大変なことではあるんですけれど。でもですね、ここに新しく妹が加わって、家庭の中に、あらたに子供同士の関係というものが入りこんできました。長男が傍若無人な振る舞いをしても大人であれば、ある程度、受け止められます。ところが、0歳児の娘にとっては、そうはいきません。感情が爆発して、暴れまわる長男の横で、妹は常に危険に晒される日々を過ごしています。

そんなわけで、今、私の切実な願いは、お兄ちゃんと妹が無事に一日を過ごすことに向けられています。息子が妹を大切にできますように、と心底思わされています。妹の方も、まったく悪意はないのですが、お兄ちゃんのお気に入りのおもちゃに手を伸ばして、それをなめまわします。0歳児には仕方のないことと思いつつも、彼女が、お兄ちゃんの暴発の引き金にならないように、すこしでも、兄の怒りのスイッチを知ってくれたらと願ってしまいます。

平和でハッピーな家庭を願う、この父親の思いを汲んでくれはしないか?子供同士、大切にし合うことができやしないか?これは、親にとっての切実な思いです。だたですね、子供にはそう望むのですが、自分のことを振り返ると、恥ずかしい話、全然できていなかったことなんですね。0歳の記憶も3歳の記憶もほとんどありませんが、物ごころついた時には、反抗期の中にいた、ということはしっかり覚えています。私には一つ違いの兄がいるんですけれども、ひとつ屋根の下、彼と一緒に、ずいぶん長い間、家庭に険悪なムードを造り出してきました。その期間は、ざっと20年近くに及びます。今は仲良しですけど。あの頃、兄弟ゲンカの日々に、親の説教を口うるさく思っていました。あの頃、親がどのような思いで、私たち兄弟に接していたのか、自分が親になって、やっと当時の親の気持ちが分かり始めました。子供たちに、親である自分の気持ちを知ってほしい。そして、幸せな毎日を家庭に築き上げて行くために、兄弟同士、手を取り合って、大切にし合って欲しい。

先ほどお読みした聖書にも、これと似た思いが記されていました。「わたしは、こう祈ります。知る力と見抜く力を身に着けて、あなたがたの愛がますます豊かになり、本当に重要な事を見分けられるように。」これは、使徒パウロの言葉です。聖書に登場する「使徒」と呼ばれる人たち。これは、いわばイエス様の代理人のような人たちでした。ですので、ここで祈られているパウロの願いは、イエス様の願いであり、また、神様の願いでもあるんですね。神様を知り、間違いを見抜いて、お互いの愛が豊かになって、何が重要かを見分けられるように。父親が子供たちに向ける思いと重なるような願いではないでしょうか?神様は、ご自信と私たちが深く理解し合うことを願われます。私たちが間違った考えに気付くことが出来るようにと願われます。私たちが愛し合う事を願われます。そうして、私たちが、生きる上での大切な事、神を知り、人を愛する、ということをしっかりとおさえて、成長することを切実に願われるんですね。

そして、父親が子供の成長を願うのは、ケンカばかりで困りものだ、という消極的な理由からだけではありません。子供の成長を願う心には、もっと積極的な思いが大いに込められています。それは、子供の健やかな成長とは、それだけで親にとっての喜びである、ということです。理由なんてありません。子供が育つ。これは、理屈抜きで親の喜びです。子供たちそれぞれに課題があり、その子の成長のペースがありますが、成長しなくてイイ、とは思いません。ありのままでイイよ、とは言いつつも、お前は、成長しなくてイイよ、とは思わないんですね。神様もまた、ありのままの私たちを、わが子として受け入れてくださいます。そして、同時に、私たちの成長を心から楽しみに願ってくださいます。

新しく2019年が始まりました。みなさんの1年をおぼえて、イエス様は私たちのことを祈っていてくださいます。父なる神様を知りつくし、兄弟同士、本気で愛し合うことがどれほど喜ばしい事であるのかを知っているのがイエス様です。このイエス様が、私たちにも同じ喜びを味わってほしいと祈ってくださいます。ぜひ、みなさんも心合わせて、その喜びを願い求めて頂きたい、と思います。父なる神様はかならず、その祈りに答えてくださいます。みなさんの1年が、神様と神様の愛を深く知り、そして、みなさんの傍にいる方との愛が深められ幸いな1年となり、神様にとっても、父親冥利に尽きる一年となりますよう、心からお祈りいたします。

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