人の価値

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聖書の言葉

弟子たちはその言葉が分からなかった。彼らには理解できないように隠されていたのである。彼らは、怖くてその言葉について尋ねられなかった。

新約聖書 ルカによる福音書 9章45節

常石召一によるメッセージ

この聖書の箇所で弟子達は不安の中にいます。それはこの直前にイエス様が「私は排斥されて殺される」このようにお語りになっておられたからです。自分達の愛する、そして先生として付き従っていたイエス様が、敵対する人々によって殺されてしまうというのです。さらにイエス様は自分に続くようにと弟子達に促されるのです。弟子達にはイエス様が言われることの文字面は分ります。しかしその意味する所が分りませんでした。理解を超えた恐怖にとらわれているのです。

そういう中で彼らは何をするのでしょうか?「弟子たちの間で、自分たちのうちだれがいちばん偉いかという議論が起きた」のです。意外な感じがします。「これからイエス様は、そして私たちは、どうなるのだろうか?」と心配し話しあうというのなら分るのですが、こういう時に「誰が一番偉いのか」という議論を始めた、というのです。それは、少なくとも自分は一番駄目というわけではない、そのことを確認したいと思ったということでしょう。自分はそこそこ良い所にいる、そのことによって安心したかったのです。

また続いて弟子の一人はイエス様にこのように言いました。「お名前を使って悪霊を追い出している者を見ましたが、わたしたちと一緒にあなたに従わないので、やめさせようとしました」。この時、既に様々な理由によってイエス様と一緒に行動は出来ないけれどもイエス様のことを信じて良い働きをしている、そのような人たちがいたのです。けれどもこの弟子はそのような人による働きを喜ばないで、私たちと一緒にイエス様に従わないような人は劣った者であり、出しゃばったまねをさせないように指導すべきだと考えたのです。自分達よりも成果を上げている人がいることに焦りを抱いたのかもしれません。あるいはイエス様と一緒にいるという自分達の特権によって安心しようとしたのかもしれません。

今日の弟子達の姿は、人間は不安の中でどういう行動を取るのか?ということをよく示しているのではないでしょうか。不安というのは根源的には神様から離れることによって生じるものです。しかし私たちは、自分がしっかりと成果を挙げることで人からの評価を得、それにより不安を取り除こうとするのです。成果と評価によって人間の価値や優劣を決めようとする風潮は現代においても一般的です。会社などの組織を動かしていくためには確かにそういうことが必要でしょう。しかしそのような評価は一面的で一時的に過ぎないものです。決して人間に対する絶対的な評価ではない、そのことを忘れてはいけないと思います。私たちは往々にしてこうしたこの世的な価値観に支配されてしまうのですけれども、そのようなもので自分の本当の価値は測れないし、そのことによって優越感を持ったり、劣等感を持ったり、人をうらやんだり、蔑んだりするべきではないのです。

イエス様は弟子達を戒め、「一人の子供」を立たせて言われました。「私の名のためにこの子どもを受け入れる者は、わたしを受け入れるのである」。「あなたがた皆の中で最も小さい者こそ、最も偉いものである」。あなた方は子どものように小さくなって欲しい、それが本当に大きくなることだというのです。イエス様は「私は排斥されて殺される」と予告されました。イエス様は無実であるのに極悪人として十字架にかけられ処刑されるほどに小さい者となられるのです。しかしイエス様は復活させられます。誰よりも大きくさせられるのです。イエス様は私たちに、「あなた方もこのようにして大きくなるのだ」ということを教えておられるのです。自ら偉くなろう、大きくなろうとするのではありません。イエス様の大きさに私たちが与るために、小さくされたイエス様を決して見失ってはいけないのです。そのことは小さな者を受け入れるということ、そして小さくされてしまう自分に絶望しないことでもあるのです。

私たちの価値は何をしたのかという成果と人からの評価によって決められるものではありません。イエス様がこの私をどのように扱って下さったか、ここにかかっているのです。イエス様は私たちのために御自身の生命を差し出し、極限まで小さくなって下さいました。それほどの価値をイエス様は認めて下さっているのです。私たちはイエス様によって、成果によらず、人からの評価によらず、価値ある者とされているのです。

私たちは褒めそやされたり、けなされたりするたびに、自分の存在価値が揺れ動く、そういう社会に生きています。しかしそのような相対的な一時的なものに振り回されないように、絶対的で変わることのないイエス様の言葉を是非続けてお聞き下さるようにと切に願っています。

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