本当の自分を知っていますか?

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聖書の言葉

わたしの目にあなたは価高く、貴く、わたしはあなたを愛し、あなたの身代わりとして人を与え、国々をあなたの魂の代わりとする。

旧約聖書 イザヤ書 43章4節

藤井真によるメッセージ

今週と来週にかけて、それぞれ1冊ずつ絵本を紹介していきたいと思います。今日、紹介する本は、マックス・ルケードというアメリカの作家が書いた『たいせつなきみ』(いのちのことば社)という本です。

この絵本の主人公は木彫りの小さな人形です。名前は「パンチネロ」と言います。面白いことに、パンチネロが住んでいる村には、彼と同じような木彫りの人形たちがたくさん住んでいます。そして、さらに興味深いのは、彼らの体に、何かのシールがたくさん貼られているということです。そのシールは二つの種類があるようです。灰色の「だめじるしシール」と金色の「星シール」です。人形たちは、毎日、二つのシールを貼ることばかりを考えて生きていました。なめらかな木でできた可愛らしい人形たち、あるいは才能が豊かな人形たちには、金の星シールがもらえました。一方で、絵具がはげている人形たち、失敗ばかりしている人形たちには、灰色のシールが貼られていたのです。そしてこの本の主人公パンチネロには、だめじるしばかりがたくさん貼られていたのです。何をしても上手くいかないのです。「お前はだめなやつだ」「お前はだめなやつだ」…。灰色のシールを貼られる度に、体だけではなく、心の中までも灰色に汚れていき、生きるのが嫌になっていったのです。

木彫りの小さな人形たちが生きる世界というのは、絵本の中だけの世界ではなく、私たちが生きる世界を見事に描き出しているのではないでしょうか。周りの人たちから星シールを貼ってもらいたい。星シールを貼ってもらえるだけの才能や力を身に着けて、周りからも素晴らしい人間なのだと評価してもらいたい。そうやって人の目を気にしながら生きているところがあります。また私たちは自分のことだけではなく、共に生きている人たちに対しても、同じような眼差しを向けながら生きてしまうところがあるのではないでしょうか。つまり、人の欠点や弱点を見出して、その人にだめじるしシールを貼ることによって、「私はあの人よりは立派なのだ」言って、優越感に浸ってしまうことがあるのです。

また星シールばかりに貼られている人たちについて少し考えてみたいと思います。確かに彼らは他の人たちからは羨ましがられる存在です。しかし当の本人が必ずしも幸せだとは限りません。なぜなら、どんなに才能豊かな人でも、どんなに力強い人でも、どんなに美しい人でも、いつかはその才能や力が衰えることがあるからです。評価してもらいたいという一心で、自分をキレイに飾って、強がっているのですが、その心の奥は恐さで震えているのです。いつその飾りが剥がされて、本当の自分の姿が明るみに出されるか、びくびくしながら生きているのです。今は星だらけかもしればいけれども、いつ「お前はだめなやつだ」というだめじるしのシールを貼られるか分からないのです。その心に喜びと平安はありません。つまり、星シールとだめじるしシールを、人間同士がお互いに貼り合っている限りは、ずっと不安に囲まれながら生きなければいけないということなのです。

さてもう一度、絵本の内容に戻ります。物語の後半に「ルシア」という木の人形が登場します。不思議なことにルシアの体には、星シールもだめじるしシールも貼られていませんでした。シールを貼ろうと思っても、すぐに落ちてしまうのです。その様子を間近で見ていただめじるしシールばかりのパンチネロは、自分もルシアのようになりたい。どうしたら星シールからもだめじるしシールからも解放されて生きられるのかを知りたくて仕方ありませんでした。それで、ルシアに尋ねるのです。そうしますと、ルシアはこう答えます。「それなら簡単。毎日エリに会いに行くのよ」と。「エリ」というのは、小さな木彫りの人形たちを造った人物です。パンチネロは勇気を出してエリのもとを訪ねました。エリは、パンチネロが来てくれたことを心から歓迎してくれたのです。自分はだめしるしシールばかりだから、こんな自分に会ってはくれないのではないかという不安は一気に吹き飛んで行ったのです。

ではなぜエリは、村では嫌われ者で、だめなやつだという評価しかされないパンチネロのことを喜んでくれたのでしょうか。エリに気に入ってもらえるために、密かに練習を重ねた特技を披露したのでしょうか。そうではないのです。なぜエリが、パンチネロのことを喜んでくれたのか。それはエリがパンチネロを造ったからです。彼に命を吹き込んだからなのです。村で、周りの人形から何と言われようとも、パンチネロが自分の惨めさを見て、自分で自分を好きになれなくても、そのパンチネロを造ったエリからすれば、なくてはならない存在なのです。

エリは言うのです。「みんながどう思うかなんてたいしたことじゃないんだパンチネロ。もんだいはねこのわたしがどう思っているかということだよ。そしてわたしはおまえのことをとてもたいせつだと思っている。」『たいせつなきみ』―英語のタイトルでは“You Are Special”です。「あなたは特別な存在だ」と言われるのです。そして、木彫りの人形たちを造った「エリ」というのは、神様のことを表わしています。神様はあなたのことを、特別な存在、大切な存在として見てくれています。たとえあなたが、自分はだめなヤツだと思っていたとしても、あるいは他の人にだめシールを貼り続けなければ自分の尊厳を保つことができなかったとしも、イエス・キリストのゆえに赦されています。神様の目に、あなたは高価で、貴いのです。

「本当に自分は、貴い存在なの?」と疑う人もいるかもしれません。パンチネロもエリの愛が最初はよくわかりませんでした。そんなパンチネロにエリは言うのですね。「これからは毎日

わたしのところへおいで。わたしがおまえのことをどれくらいだいすだきだかわすれないようにね」と声を掛けました。どうかこの神様の愛の声を聞き続けてください。どれだけあなたが大切にされているのかということを、神様は必ずあなたに教えてくれます。

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