微笑み

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聖書の言葉

「はっきり言っておく。子供のように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入ることはできない。」そして、子供たちを抱き上げ、手を置いて祝福された。

新約聖書 マルコによる福音書 10章15~16節

田村英典によるメッセージ

私は、大阪市東淀川区にある淀川キリスト教病院で牧師をしている田村と申します。今朝と来週の朝の2回、聖書からお話させて頂きます。少しお耳を傾けて頂けますと、幸いです。

今朝は微笑みについて、お話したいと思います。

改めて申し上げるまでもなく、微笑みは、私たち人間にとって、どんなに大切でしょうか。微笑みは、人間として本質的なものとさえ言えるように思います。ご存じのように、人間の顔には、笑顔を作るための筋肉が、他の動物とは違って、本当に沢山あります。つまり、神様は、人間をそのように特別に造られたということです。ですから、大袈裟ではなく、笑顔、微笑みというのは、人が人として生きる上で本質的なものであり、人が人であることの証しとさえ言えるように思います。

そして実際、笑顔ほど、素晴らしいものはありません。私は時々そうするのですが、例えば電車の中でお父さんやお母さんに抱っこされている赤ちゃんに、私が笑顔を送りますと、興味津々の顔でこちらを何度も見つめたり、嬉しいのでしょう、少しはしゃいだり、可愛い満面の笑みを返す子もいます。

また人の顔の中で、どうでしょう、笑顔ほど美しいものは、ないのではないでしょうか。笑顔、微笑み一つで、人は理屈を超えて、垣根も取れ、互いにすぅっと親しみを覚えられます。

不思議なことに聖書には、神の独り子イエス・キリストが微笑まれたという記録がありません。そこで、イエスには笑顔がなく、いつも堅い顔をしていたという見方もあるそうです。しかし、それは違うと思います。

先程、聖書のマルコによる福音書10:15、16をお読みしました。そこを見ますと、イエスが、幼い子供たちを前にして、周りの大人に「はっきり言っておく。子供のように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入ることはできない」と語られた後、子どもたちを抱き上げ、手を置いて祝福されたことが分かります。私たちを愛し、私たちに罪の赦しと永遠の命を与えるため、ご自分の命まで十字架で献げられたイエス・キリスト。また幼子たちを一人一人抱っこし、優しく手を置き、祝福されたほど、慈しみに満ちた神の御子イエスが、こういうことを柔和な微笑み以外のどのようなお顔でされたことでしょう。

確かにイエスが微笑まれたという記録は聖書にありませんが、むしろ、微笑みが普通のことでしたので、敢えて書く必要もなかったのだと思います。

とにかく、こういう救い主イエス・キリストを心から信じ、イエスに仕えるように、貧しい人々に終生仕えたマザー・テレサでしたので、彼女が、一緒に働く若い修道女たちにしばしばsmile、smile、smile(微笑みなさい)と教えたのも当然だと思います。

そこで、微笑みについてのマザー・テレサの言葉をご紹介します。「貧しい人たちに、命だって上げることはできます。しかし、微笑みを浮べてそれをしなければ、何も与えたことにはなりません。平和は微笑みから始ります。一日5回、あなたが本当は笑顔を見せたくない人に微笑みなさい。それを平和のためにするのです。何でもない微笑みが及ぼす効果には、計り知れないものがあります。温かい微笑み。妻に、夫に、子どもに、そして全ての人に微笑みかけなさい。微笑みは愛を育てます。」

もう一つ、作者は分っていませんが、「微笑みをあなたに」という詩もご紹介したいと思います。

「微笑み、それは少しも元手はかかりません。しかし、多くのものを人に与えてくれます。

微笑み、それは人に与えても、いっこうに減りはしません。しかし、もらった人を限りなく豊かにします。しかし、この微笑みはお金で買うことも、人から借りることも、盗むこともできません。

微笑み、それを生み出すのに少しも時間はいりません。しかし、それを受けた人の記憶の中には、永遠に残ることさえあります。

微笑み、それがなくても生きていける程強い人は、この世にいません。それがなくてもいいほど豊かな人もいません。

微笑み、それは疲れ切った心に休みを与え、失望した人に励ましを与え、悲しんでいる人に光をもたらしてくれます。

微笑み、それは人生のあらゆる問題に対して、神が与えて下さる妙薬です。

ある人は微笑むことができないほど疲れているかもしれません。ですから、その人にあなたの微笑みをあげて下さい。あなたの微笑みを最も必要としているのは、その人かも知れないのですから。」

新しい一日、新しい一週間が始まります。神様が私たちに下さった最も素晴らしい贈り物の一つ、微笑みをもって、意識的に互いに接し、共に神様の祝福の内に過ごさせていただければと思います。

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