主はわたしの羊飼い

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聖書の言葉

主は羊飼い、わたしには何も欠けることがない。[…]死の陰の谷を行くときも、わたしは災いを恐れない。あなたがわたしと共にいてくださる。

旧約聖書 詩編 23編1,4節

藤井真によるメッセージ

たくさんある聖書の言葉の中で、とても愛されているのが今お読みした詩編第23編です。「主は羊飼い」という言葉で歌い始めるこの聖書の言葉に、どれだけ多くの人たちが慰め励まされてきたでしょうか。信仰というのは、「主は羊飼い」といつも心から告白し、賛美することができれば、それでもう十分という思いさえするのです。

ところで、細かいことですが、「主は羊飼い」と訳されています言葉は、より丁寧に訳すと「主は”わたしの”羊飼い」となります。「羊」であるこの私と「羊飼い」である神様との関係が歌われているということです。神様がまことの羊飼いとして、私の人生を守り、導いてくださるならば、「わたしには何も欠けることがない」と心から口にすることができます。それは、「死の陰の谷を行くときも/わたしは災いを恐れない」という言葉にもあるように、人生に死の陰が散らつくようなことがあったとしても、そこで神様からいただく慰めと希望の中を歩むことができるのです。「主はわたしの羊飼い」という言葉によって生かされる時、そこでもう死を突き抜けたいのちの中を歩んでいるのです。絶望の闇の中に救いの光が差し込んでいるのです。

「主はわたしの羊飼い、わたしには何も欠けることがない。」このように心から言うことができたならば、どれだけ素晴らしいことでしょうか。「わたしには何も欠けることがない」というのは、理想でも、強がりで言っているのでもありません。本当に、「わたしには欠けることがない」生き方をすることができるというのです。つまり、すべてにおいて満たされて生きることができるということです。よく考えてみますと、私たちには多くの欠けがあります。それらの欠けをどのように埋めるのか、どのように克服するのか、そのことに一所懸命になって生きていることがあります。「このようにしたら満たされるに違いない」と信じて、色んなものに手を伸ばすものの、「これも違った」「あれも違った」と言ってがっかりしながら、また別の道を行こうとするのです。いったいいつになったら、すべてにおいて満たされた人間として立つことができるのでしょうか。もし、満たされないならば、結局は中途半端で、手応えのない人生で終わってしまうということになるのでしょうか。

ところで、私たちのことを言い表している「羊」という動物ですが、色々調べてみますと、とても興味深い動物であることに気付かされます。羊もまた、私たち人間のように欠けだらけの動物だということです。そもそも、羊は弱い動物です。自分よりもどう猛な動物に襲われたらおしまいです。自分で自分の身を守る強さを持っていないのです。足も遅いですから、敵から逃げようとしても、すぐに追いつかれてしまいます。また、目もあまり良くありません。見るべきものをしっかりと見ることができないのです。また、臭覚もあまり良くありませんし、犬のように帰省本能というものを持っていませんから、はぐれてしまったら自分一人の力で帰ることもできないのです。このように羊は弱いところばかり、欠けているところばかりの動物です。ですから、羊が安心して生きていくためには、羊の世話をし、敵から身を守ってくれる「羊飼い」という存在が必要です。羊にとって羊飼いが必要なように、私たちにとって神様という存在がどうしても必要なのです。

羊飼いである神様は、私たちに必要なものを備え、養ってくださいます。神様を無視して、群れからはぐれてしまうことがあったとしても、神様は心を痛め、悲しみながら、しかし、見つかるまで一所懸命捜し出してくださるお方です(ルカ15:4〜7)。人間にとって最後にして、最大の試練である「死」においても、共にいてくださり、死に勝利したいのちに導いてくださいます。だから、私たちにとって、本当に辛いことは死ぬことではありません。本当に辛いことは、神様が共におられないということです。しかし、神様はいつも共にいてくださいます。「こんなところにまで、神様は来てくださらない」と疑ってしまうような所にも、神様は降りて来てくださって、救いを与えてくださるのです。

イエス・キリストはおっしゃいました。「わたしは良い羊飼いである。…わたしは羊のために命を捨てる。」(ヨハネ10:14,15)良い羊飼いである主イエスは、私たちを救うために、十字架でいのちを献げてくださいました。ここに救いの道が拓かれました。もう、自分で自分の欠けを満たそうとする生き方に捕らわれるのではなく、羊飼いである神様が、私の神様となってくださる。ここにいのちの喜びが満ち溢れるのです。「主はわたしの羊飼い、わたしには何も欠けることがない。」

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