香港のクリスチャンたち（1）

宗教を信じるということについて、皆さんは、どんなイメージを持っていらっしゃるでしょうか？もしかすると、宗教は、その人の心の中の問題に過ぎないとか、ご利益があるかどうかが重要だと、考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、イエス・キリストを信じて、クリスチャン／キリスト教徒になるということは、心の中の問題だけなのではありません。ご利益があるかどうかはあまり関係ありません。それどころか、その人の人生観や世界観に大きく影響を与えます。毎日の生活の中で、どう行動するか、何を選択するかに影響を与えます。もちろん、クリスチャンになったからと言って、みんなが同じ行動を採るわけではありません。けれども、大きな問題が起こった時、聖書は私たちがどう行動するべきかを考えるために、指針を提供します。

香港では2019年に立法会で「逃亡犯条例」改正が審議され、大きな反対運動が起こりました。刑事事件の容疑者を香港から中国大陸に引き渡すことを可能にする改正です。歴史的に中国大陸から多くの人が政治的な理由で香港に逃げて来ましたが、この改正が実現すれば、もはや香港も安全な場所ではなくなってしまいます。多くの市民が反対し、2019年6月には100万人デモ、さらに200万人デモが起こりました。この改正は撤回されましたが、2020年6月に「国家安全維持法」が施行されました。これによってデモに関わったリーダーたちや、民主化を求めて積極的に行動してきた人たちが逮捕されています。

実は、香港の人口の約12%がクリスチャンです。キリスト教系の学校や病院も数多くあります。自由を求める運動をしている人たちの中にも、多くのクリスチャンがいます。インターネットで 「香港 “Sing Hallelujah to the Lord”」と検索していただくと、香港でデモ隊がこの讃美歌“Sing Hallelujah to the Lord”を歌っている動画をいくつも見ることができます。日本でも有名になっている周庭（しゅうてい）さん／英語名：アグネス・チョウさんも、クリスチャンの家庭で育ったそうです。

若いリーダーである黄之鋒（こうしほう）さん／英語名：ジョシュア・ウォンさんのご両親は特に熱心なクリスチャンです。彼の中国名：之鋒（しほう）は、聖書の詩編45編から付けられました。ジョシュアという彼の英語名も、旧約聖書の登場人物ヨシュアから来ています。彼自身も自分がクリスチャンであることを公言していて、昨年、出版された彼の著書でも、またツイッターでも、聖書の言葉をたびたび引用しています。禁固刑の実刑判決が言い渡される直前、昨年11月22日には、ローマの信徒への手紙5章3－4節を引用しました。こんな言葉です。「そればかりでなく、苦難をも誇りとします。わたしたちは知っているのです、苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを。」この言葉を引用してから、「種が蒔かれれば、いつの日か芽を出します。疲れや当惑を感じている人もいると思いますが、お互いに背中を支えあってください」と仲間を励ます投稿をしています。

イエス・キリストが十字架にかかって死なれたのは、私たちの個人的な罪が赦されるためだけではありませんでした。罪を赦された者たちが、もはや自分自身のためではなく、イエス・キリストのために生きるようになるためでした。イエス・キリストのために生きるということは、キリストが命じられたように生きるということです。それは、お互いに愛し合うということです。平和を作り出すということです。正義を求めるということでもあります。

ジョシュア・ウォンさんの場合は、「自由に自分の考えを述べても罰せられることのない香港を守る」ということが、キリストに従うということなのかもしれません。そのために、ご利益があるどころか、苦難を経験しています。しかし、「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む」という聖書の言葉に励まされながら、仲間をも励まして、キリストに従う道を進もうとしています。

日本にいる私たちの場合はどうでしょうか？お互いに愛し合うため、平和を作り出すため、正義を実現するため、何ができるでしょうか？キリストは、「あなたがたには世で苦難がある」と言われました。そして同時に「しかし、勇気を出しなさい。わたしは既に世に勝っている」と励ましてくださいました。キリストに従う道は、苦難のある道でありながら、希望へと続いています。