天国は用意されている

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聖書の言葉

「心を騒がせるな。神を信じなさい。そして、わたしをも信じなさい。わたしの父の家には住む所がたくさんある。もしなければ、あなたがたのために場所を用意しに行くと言ったであろうか。」

新約聖書 ヨハネによる福音書 14章1~2節

田村英典によるメッセージ

今お読みした所は、イエス・キリストが全世界の救い主として、明日は十字架に架かられるというその前の夜、弟子たちに語られた言葉です。イエスは「私の父の家には住む所が沢山ある。もしなければ、あなたがたのために場所を用意しに行くと言ったであろうか」と言われます。要するにイエスは、天の父なる神様、およびご自分を心から信じる信仰者たちのために「私は天国を用意する」とはっきり約束しておられます。

今、私は天国と言いました。万物の造り主にして私たちを限りなく愛しておられる天の父なる神、またその独り子(ひとりご)イエス・キリストのおられる所です。私たち生れながらの罪人が自分の力では決して行くことのできない、しかし、罪と不信仰を悔い改め、イエスを自分の救い主として心から信じ受け入れ依り頼むなら、必ず誰でも入れていただける永遠の天の国です。今朝申し上げたいのは、この永遠の天国に私たちがただイエス・キリストへの信仰によって入れていただけることが、どれほど大きな幸せかということです。

『生と死を考える』という本に、医者に言われてから僅か10日で夫を急性白血病で亡くした一人の女性の話が出ていました。仲の良いご夫婦でした。夫の死後、ご自分の心の状態をこう書いておられます。「私の場合は、やたら攻撃的になって怒りと不当感を覚えたものです。孤独感も自己破壊的な攻撃性をもって、突如私を襲うのです。死への誘惑というのでしょうか。時・所を構わず自動車を飛ばし、大声で泣きわめきながら、涙でろくに何も見えないのに猛烈なスピードで走り、どこかへ激突することを望んでいたのだと思います。実行できなかったのは、他人の死傷・迷惑が心のどこかにブレーキをかけていたのでしょう。…医者や医学への不信と、他人への憎しみ、他人の同情や慰めの言葉に対する反発、自分では考えてもいない内に突如逆上してくる動揺、ふっと肩で息を抜くと、それだけで場所を構わず流れてくる大粒の涙、本当に自分であって自分でないような毎日でした。」

こんな彼女が立ち直る上で大きな力になったのは、多くの善意の人による支えのあったこと、それともう一つ、天国が用意されていることでした。こんなふうに書いておられます。「夫は既にここにいないという現実の認識があることによって、私は現在の生活を充実させているような気がするのです。…早く夫に再び会う日を望んで、この世を絶望的に否定する気に陥ることもありますが、確かにそうであってはならないと思います。しかし再会することに希望を抱き、愛と生の永遠性を信ずるならば、かえって現実の一瞬一瞬を、そして与えられている一時の充実と完成を求めるのです。…現実の全ての時点は垂直に永遠に連なり、天国での完成を構築していっているのです。」

昨年の秋、私の勤める淀川キリスト教病院で2年半以上お世話させていただいた、あるクリスチャンの女性が天に召されました。その時、私と同じ60歳ということもあって、ずぅっと親しくお世話させていただきました。当然、彼女には身体的苦痛に加えて、精神的に大変辛い時期がありました。しかし、特にホスピスへ移られる前後から、とても穏やかになられ、「私、ほんまに恵まれ過ぎてます。感謝ばっかりです」と毎日、訪問する度に笑顔で言われました。

ある時、天国の話になりました。淀川キリスト教病院のブラウン初代院長は、1981年1月に天に召されましたが、その4か月前、ご家族への手紙で、天国について、ご自分の気持を書いておられます。素晴らしい内容で、それをお話しました。そしてその後、私は「Yさん、天国へ行かれたら、イエス様は別として、誰に一番会いたいですか。僕は、20世紀最大の説教者の一人、マーティン・ロイドジョーンズと、それからクラシック・ギタリストのナルシソ・イエペスですね」と言いました。すると彼女は「天国でイエペスさんに、『田村さん、ギターの練習がまだまだ足りませんね』と言われるんと違いますか」と笑いながら言われました。そしてその後、彼女はニコニコとした笑顔で「私はバッハです」と、長年、教会の礼拝でパイプオルガンを弾いてこられた彼女らしく言われました。

私は不思議な感覚に襲われました。死の彼方(かなた)にある天国の話を、全く普通にできるからです。神様の独り子(ひとりご)イエス・キリストを心から信じ、永遠の命と天国の祝福を本当に信じられることに、私は改めて大きな幸せを覚えました。でも確かにこれが、私たちのために十字架で命を献(ささ)げ、また復活された神様の独り子(ひとりご)イエス・キリストを信じる信仰の与える祝福なのです。私はこの祝福に是非、この放送をお聞き下さっています皆様にもあずかっていただきたいと心から願っております。

最後にもう一度、天国についてイエス・キリストが言われたヨハネによる福音書14:1,2をお読みして、今朝のお話を終ります。「心を騒がせるな。神を信じなさい。そして、私をも信じなさい。私の父の家には住む所がたくさんある。もしなければ、あなたがたのために場所を用意しに行くと言ったであろうか。」

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