民謡と信仰-ドナドナ

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聖書の言葉

神はあなたにも

苦難の中から出ようとする気持ちを与え

苦難に代えて広い所でくつろがせ

あなたのために食卓を整え

豊かな食べ物を備えてくださるのだ。

旧約聖書 ヨブ記 36章16節

赤石純也によるメッセージ

この音楽をお聞きください。

♪音楽

小学校時代、音楽の時間に歌った覚えがおありかも知れません。「ドナドナ」です。私もよく覚えています。「ある晴れた昼下がり市場へ向かう道。荷馬車がごとごと子牛を乗せてゆく」。小学校の時には暗い歌だと思いましたが、こうしてもとの曲を聞いてみるとずいぶん印象が違いますね。不思議なリズムです。

実は、この市場へ運ばれてゆく子牛というのは、ナチスに連行されてゆく自分の奥さんのことです。この歌詞を書いた詩人は、家族親戚全員を一人残らずナチスに殺されて、自分だけただ一人生き残った人でした。どこかに隠れて見ていたのでしょうか、自分の妻もナチスに連行されて強制収容所送りになっていく、そういう情景を、市場に売られていく子牛、これから屠殺されるしかない子牛に見立てて歌にしたのがこの「ドナドナ」という歌です。

ですから私たちが小学校のとき歌ったように暗く悲しくて当然なのですね。それなのにそれを悲しくは歌わない、それがドナドナという歌です。ナチスにわからないようにこのことを残しておく。わかれば自分も殺されてしまいます。そしてこの歌も葬り去られてしまうでしょうから、それと悟られないような歌にして残しておこうとしたのですね。

そのことが、この奥さんを子牛に例えるということ以外に、もう一つの言葉に現れています。それが、この「ドナドナ」という、意味のわからない題名です。歌の中でも、「ドナドナドーナ、ドーナー」と繰り返しているわけですけれど、その所をもう一度お聞きいただけますか。

♪音楽

「ドナドナドーナイドーナー」と言っています。「ドナドナドーナイ」、アドーナイという音が聞こえますね。このアドナイという言葉が「主よ」という言葉、神さまへの呼びかけの言葉なのですね。どうぞもう一度アドナイ、主よ、という暗号を聞きとってみてください。

♪音楽

この「主よ」という呼びかけも分からないように、暗号のようにして、この詩人は自分の奥さんが目の前で屠殺場に引かれてゆく状況の中で、祈っていた。それがこのドナドナイ、アドナーイ「主よ」という祈りの歌なのですね。

今日最初に、こういう聖書の言葉をご紹介しました。

「神はあなたにも、苦難の中から出ようとする気持ちを与え、苦難に代えて広い所でくつろがせ、あなたのために食卓を整え、豊かな食べ物を備えてくださる。」

「神はあなたにも、苦難の中から出ようとする気持を与えてくださる」。ドナドナの詩人は、奥さんも子供も、親も兄弟も、一人残らず殺されてしまいました。自分の妻や子供が殺されるのを見るという耐えられない体験に、一生一人ぼっちで耐えていかなければなりませんでした。それがこのドナドナという歌になりました。アドナーイ、主よ、と祈りながら神と共に歩む。そのときこの人は生きて行けたのですね。「神はあなたにも、苦難の中から出ようとする気持ちを与えてくださる」。

あなたにも、あなた固有の苦難があると思います。それはあなたが一生ひとりで背負っていかなければならない苦難かもしれませんし、あるいはあなたが生きていけないほどの苦難である場合もあると思います。しかし神は「あなたにも、苦難の中から出ようとする気持ちを与えてくださる」。そしてあなたが生きて行けるようにしてくださる。

あなたの苦しみや悲しみは消えてなくなるものではないけれども、その事実は変わらないのだけれども、その苦難の中からあなたがなお「生きる」ということを始めるために、「神はあなたにも、苦難の中から出ようとする気持ちを与えてくださる」。

この神にあなたの苦難の中から、呼びかけてみてください。神は必ずあなたにも生きようとする気持ちを与えてくださいます。ドナドナという歌の歌詞の苦難は変わりませんけれども、神に祈り続けたときに、その苦難の中からこの人が生きていくための不思議なリズムが与えられました。そしてそれからはただ苦しんで、ただ悲しんで、生きていけなくなってしまうのではなくなりました。

「神はあなたにも、苦難の中から出ようとする気持ちを与え、苦難に代えて広い所でくつろがせ、あなたのために食卓を整え、豊かな食べ物を備えてくださる」。

苦難に代えて広いところであなたをくつろがせるということを神は必ずなさいます。あなたのために食卓を整えてくださるのが神です。もし今日、あなたの前に食卓が整えられるなら、それは神からの合図です。その神を、あなたの今の苦難の中から求めてみてください。今日、この朝も、あなたのために教会の門が開いています。勇気を出して門を叩いてみてください。教会ではあなたのための神の言葉が語られています。一度聞きにいらしてみてください。

「神はあなたにも、苦難の中から出ようとする気持ちを与え、苦難に代えて広い所でくつろがせてくださ」います。

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