マリアとクリスマス・オラトリオ

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聖書の言葉

聞いた者は皆、羊飼いたちの話を不思議に思った。しかし、マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた。

新約聖書 ルカによる福音書 2章18節-19節

宇野元によるメッセージ

新年のご挨拶を申し上げます。

お正月はいかがお過ごしですか。普段より少しゆっくりできるこの時に、音楽を聴くかたもいらっしゃるでしょう。偉大な作曲家として知られるバッハ。「無伴奏チェロ組曲」「ゴルトベルク変奏曲」「ブランデンブルク協奏曲」……。すばらしい作品をいくつも数えることができます。すばらしい音楽家バッハはまた、キリスト教会の礼拝のために仕事をした人でもありました。

日曜日にひらかれる礼拝、そこで歌われる神をたたえる音楽のために、バッハは曲をつくりました。「カンタータ」と呼ばれるバッハの作品の中でもとりわけ特色あるジャンルが、これに当たります。日曜日、また、キリスト教祝祭日の礼拝における神の言葉の宣べ伝えのために、牧師は毎週、聖書の言葉に取り組みます。それとおなじように、それに勝るとも劣らず、バッハは毎週、作曲者として聖書の言葉に取り組みました。

大曲「クリスマス・オラトリオ」もこのジャンルに含まれます。クリスマスの日、12月25日から新年の1月6日にかけて行われる教会の礼拝で演奏されています。

イエス・キリストの誕生にかかわる聖書の言葉が語られる。牧師が説教を行う。それにバッハの作曲が豊かに協働します。見事な音楽であると同時に、聖書的で、神学的な、音楽的解釈を聴くことができます。

「クリスマス・オラトリオ」の中で、けさの言葉が取り上げられています。

最初のクリスマスの夜。野宿をしていた羊飼いたちに、天使を通して神の言葉が伝えられました。

「民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日、ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった」(ルカ2,11)。

ダビデの町、すなわちベツレヘムへ急いで行った羊飼いたちは、天使が知らせたとおりであるのを知ります。救い主がお生まれになった。飼い葉おけと布きれ。貧しくつつましく寝ている乳飲み子が、その方である。羊飼いたちは、今度は自分たちが神の言葉を伝える者になります。このあかちゃんがその方です。しかしこの知らせは人の想像力を超えています。

「聞いた者は皆、羊飼いたちの話を不思議に思った。しかし、マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた。」

福音書の言葉がそのままテナーによって伝えられます。すると、それに応答するように、アルトによる独唱がはじまります。

「この幸いな出来事を、信じる心のなかにしっかり納めよう。この不思議な御業によって、弱い私の信仰が、いつも力づけられるようにしよう。」

さらに同じアルトが、こんどは語るように歌い、それに合唱が加わって、キリスト者共同体の応答が表現されます。

「そうだ、そうだ。このよき時に、幸いにも、確かな証しとして知り得たことを、私の心に保たなければならない。」

「私は注意ぶかく、あなたを心に保ちます。私はここで生きてまいります。あなたのゆえに。」

ある人が述べています。バッハがその音楽において取り組んだことは、キリスト者の共同体にとって大切なことが、よく保たれることであると。キリスト者の共同体にとって大切なこと――それは、神が私たちと私たちの世界を顧みてくださり、私たちのために来てくださったことです。神が人となられ、歩まれた。このよき知らせを新鮮に、生き生きと保つこと。まさにこのことが、聖書が記すマリアのうちに示されます。

「マリアはこれらの出来事をすべて心に納め」た。

「この幸いな出来事を、信じる心のなかにしっかり納めよう」

「私は注意ぶかく、あなたを心に保ちます」

クリスマスにイエス・キリストが生まれた。神の子が人になられた。私たちを捨て置かれず、私たちの場所に来られた。

新しい一年、このことを拠り所としてはじめてまいりましょう。生きている今、そして死のときも。この事実を胸に。

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