羊飼いとクリスマス

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聖書の言葉

天使たちが離れて天に去ったとき、羊飼いたちは、「さあ、ベツレヘムへ行こう。主が知らせてくださったその出来事を見ようではないか」と話し合った。

新約聖書 ルカによる福音書 2章15節

山下正雄によるメッセージ

おはようございます。日本キリスト改革派教会メディア伝道局主事の山下正雄です。

クリスマスが近づくと、街中では華やかなイルミネーションが輝いています。多くの人にとって、この時期はプレゼントの準備や、楽しいパーティーへの出席で忙しい時期かもしれません。また、ある人にとっては、自分だけが取り残されたような気持ちになって、クリスマスを忌まわしく感じるかもしれません。

流れてくるクリスマスキャロルも明るい調子で、キリストの誕生を祝う喜びに満ちたものが多く聴かれます。そのクリスマスキャロルに必ずと言ってよいくらい登場する人物に羊飼いたちがいます。聖書を読んだことがある人にとっては当たり前のことかもしれませんが、キリストの誕生と羊飼いがどう結びつくのか、考えてみる価値があります。今朝はクリスマスの夜、なぜ神はイエス・キリストの誕生をほかでもない羊飼いたちに知らせたのか、ご一緒に考えてみたいと思います。

さて、イエス・キリストの誕生の出来事は、決して華やかものではありませんでした。実に静かで、ひっそりとしたものでした。新約聖書のルカによる福音書二章は、神が特別な知らせを「羊飼いたち」に最初に伝えたと書かれています。この点は、とても重要で、私たちがクリスマスに込められた意味を知るための大きなヒントになります。

イエス・キリストがお生まれになった時代のユダヤでは、羊飼いは社会的に高く評価されていたわけではありませんでした。むしろ、当時の社会では羊飼いの仕事は過酷で、他の人々からは敬遠される職業のひとつでした。羊飼いは長時間、野外で羊を見守り、狼や盗賊から守るために昼夜を問わず働かなければなりませんでした。そのため、家族や友人ともほとんど交流ができない孤独な生活を送っていました。また、羊飼いたちはユダヤ人たちが信じる宗教では儀式的に「清い」とされることが少なく、礼拝の場からも疎外されがちでした。

実はイエス・キリストがお生まれになったのは、ローマ皇帝の命令で丁度人口調査が行われていた時でした。ですから、ベツレヘムでも宿屋が満杯になるほど、人々で町はごった返していた状態です。しかし、それとは対照的に羊飼いたちは、郊外で夜通し羊の群れを番するしかありませんでした。そんな羊飼いたちに、神は真っ先に救い主誕生の知らせを届けました。この選択にはどんな意味があるのでしょうか。

私たちが思い描く「神のメッセージを受け取るにふさわしい人」というと、どんなイメージでしょう。特別に立派な立場の人々でしょうか。あるいは立派とまではいかなくても、少なくとも人々から受け入れられている人々でしょうか。神が選ばれたのは、当時の社会で見過ごされがちだった、地位も権力も持たない人たちでした。その上、時には敬遠されがちだった羊飼いたちだったのです。これは、「神のメッセージは誰にでも届くものであり、特別な資格は必要ない」ということを表しています。

クリスマスは、華やかなパーティーや贈り物だけの行事ではありません。神が「すべての人と共にいる」という約束が形になった日です。救い主が生まれた知らせは、立派な宮殿やお金持ちの家にではなく、簡素な家畜小屋の中で響きました。そして、そこに駆けつけたのは、社会の片隅で生きる羊飼いたちでした。羊飼いたちが聞いた天使のメッセージは、「今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった」というものでした。「あなたがたのために」という言葉には、どんな人であれ神からの愛が注がれているという強い意味が込められています。

私たちは時として、自分が「大した人間ではない」と感じ、他人と比べて落ち込むことがあります。自分の存在が社会に必要なのか、自信を失うこともあるでしょう。けれども、神が羊飼いたちに最初に知らせを伝えたように、神の愛はすべての人に、特に弱い立場の人々や心が傷ついた人々に届けられています。私たち一人一人が神にとって大切な存在です。どんな小さな存在でも神の目にはかけがえのない存在なのです。

羊飼いたちは、天使たちの言葉を聞いたあと、急いでベツレヘムに向かい、実際に救い主であるイエス・キリストを見つけました。彼らはその喜びを抑えきれず、人々に伝えずにはいられませんでした。神の愛を知るとき、人はその喜びを他の人にも伝えたくなるものです。クリスマスは、ただの賑やかなイベントではなく、「神が私たち一人一人を愛してくださっていることを確かめ、分かち合う日」なのです。

あなたがどんな立場や境遇にあっても、クリスマスはあなたのためにもあることをどうか覚えてください。

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