心がざわつくときは

ラジオ放送 キリストへの時間のトップページへ戻る

聖書の言葉

それゆえ、わたしの主が御自らあなたたちにしるしを与えられる。見よ、おとめが身ごもって、男の子を産み、その名をインマヌエルと呼ぶ。

旧約聖書 イザヤ書 7章14節

國安光によるメッセージ

クリスマスにお生まれになった救い主イエスの名について、聖書は「インマヌエル」(神は我々と共におられる)と呼ばれる、と伝えています。「インマヌエル」という名は、旧約時代に預言者を通して語られた神の言葉の一つです。「見よ、おとめが身ごもって、男の子を産み、その名をインマヌエルと呼ぶ。」

時代は紀元前740年から730年の頃、イスラエル王国が北と南に分裂していた時代です。その頃預言者イザヤは、南のユダ王国のエルサレムを中心にその働きをしていました。その当時、南ユダ王国も北イスラエル王国も、大国アッシリアの脅威にさらされていました。小さい国々は、アッシリアに対抗するために小国の間で同盟を組みました。北イスラエル王国は、隣国アラム(現在のシリア)と同盟し、軍隊を編成しました。北イスラエルは、南ユダ王国にもこれに参加するように求めることとしました。

そのような動きを知った南ユダ王国のアハズは、「森の木々が風に揺れ動くように動揺した」(7:2)とあります。揺れ動く心でアハズ王が出した決断は、北イスラエルではなく、アッシリアの属国となり、生き延びるというものでした。

これに対して預言者イザヤは激しく批判しました。そのとき、主なる神が「アハズ王に向かって語れ」とイザヤに命じられた言葉が、「落ち着いて静かにしていなさい。恐れることはない。」「恐れることはない」。この言葉は、本当に恐れるべきは神であるということ、これまで神の民を導いてくださった神に信頼するように、ということです。

どうでしょうか。私たちも人生の歩みの中で「森の木々が風に揺れ動くように動揺」することがあるかもしれません。さまざまな困難や危機が私たちの生活の中にあります。その困難や危機を解決するために、私たちは解決の道を懸命に探します。なかなか道を見出せない時、自分の目に見える範囲の手の届くところに解決を見出そうとし、結局、道が見えず、かえって悩み続けてしまうということもあるのではないでしょうか。

ある神学者はこういうことを言いました。「信仰は一種の疑問である。」この場合の疑問は、神に対する疑問ではなく、自分が見えるもの、手の届くものに対しての疑問です。自分の知恵、力、方法、手近に得ることのできる解決策を疑ってみる、果たしてそれでよいのだろうか、問うてみるということです。つまり、疑問をもつことによって、もっと別の次元に目を向けようとする、神の御心がどこにあるのか、そのことに目を開かれるということです。

さてアハズは、イザヤが「恐れるな」「神を信じるように」と語ったのに対して、素直に応じようとはしませんでした。それゆえ主なる神はこのように語られました。11節「主なるあなたの神に、しるしを求めよ。」神は、自ら南ユダ王国を守るというしるしを与えるとおっしゃいます。それが14~17節で語られる「インマヌエル預言」です。

インマヌエル預言で神がおっしゃったことは、ひとりのおとめが身ごもって、男の子を産む。その子の名は「インマヌエル」と呼ばれる。この名は「神がわたしたちと共におられる」という意味の名で、神がユダの民を守り、危機から救ってくださることが約束されているのです。

インマヌエルという名の子について、このようにも告げられます。「エッサイの株からひとつの芽が萌えいでその根からひとつの若枝が育つ。」(11:1)エッサイの株、エッサイはダビデの父であり、ダビデの家系からひとつの芽が萌え出でる、その芽は若枝となると語られます。若枝とは、旧約聖書に中で、神が約束された救い主を象徴する言葉です。

この神の約束に従って、700年余り後に、ユダヤの地ベツレヘムにインマヌエルと呼ばれる神の御子が、エッサイの株、ダビデの家系からお生まれになりました。インマヌエル、神が私たちと共にいてくださる、その預言が完全な意味で実現し、御子イエス・キリストが誕生されました。

神は南ユダの王アハズに、「インマヌエル」(神はわれわれと共におられる)という名の男の子が生まれるというしるしを与える、と約束し、何よりもまず神を信頼せよと、イザヤを通してお語りになりました。

神は、いまクリスマスを迎えようとする私たちに、神の御子の誕生というしるしを与えながら、何よりも神を信頼せよ、高く天の方に視点を向けよ、と語られます。目には見えませんが確かに生きて、神は共におられます。今日も明日も、私たちの生活の只中、困難の只中にもおられ、御手をもって支えてくださるのです。

クリスマスを迎えようとする私たちは神に心を注ぎます。今世界には人間の罪によって生まれた深い暗闇があります。しかし神が私たちにお語りになります。「うろたえてはならない、おののいてはならない、あなたがどこに行っても、あなたの神、主は共におられる。」「恐れることはない、たじろぐことはない、わたしはあなたの神、わたしの救いの右の手であなたを支える。」

関連する番組