祈りの人、ジョージ・ミュラー

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高間満によるメッセージ

「キリストへの時間」をお聴きの皆さま、おはようございます。今朝は「祈りの人、ジョージ・ミュラー」の生き方をつうじて、祈りの大切さについてお話ししたいと思います。

ミュラーは1805年にプロシア(現在のドイツ)のクロッペンシュタットというところで生まれました。父親は税金を徴収する仕事をしていました。家庭は裕福で父親はミュラーに十分すぎるほどの小遣いを与えました。そのためミュラーは浪費癖が身につき親を騙してまで、さらに盗みをするほどに浪費をするようになりました。そして16歳の時には詐欺のために投獄される経験もしました。

そのような罪まみれのミュラーでしたが、父親のすすめで当時、牧師を養成する学校としてよく知られたハレ大学に進学しました。そしてミュラーに転機が突然やってきました。26歳の時のある夕方、友人に誘われて行った教会の祈祷会で、そこに集う信者たちの敬虔な祈りの姿に大きな感銘を受けました。そしてここでの経験が劇的な転機となり、ミュラーの品性は大きく変わり、神さまに素直に従う生活に入ることになりました。

その頃、ミュラーはハレ大学の神学教授であるフランケによって創設された孤児院(現代の児童養護施設)に併設された学生宿舎で過ごしていました。そしてそこでの体験が、彼の後の人生に大きな影響を与えることになりました。28歳の時、ミュラーは友人とともに、イギリスのブリストルに行くことになり、キリスト教の伝道活動に従事するとともに、生活困窮家庭の児童を集めて学習活動を始めました。また友人とともに伝道組織である聖書知識協会という団体を設立し、日曜学校の開設や聖書の配布活動などを行いました。

そしてミュラーが30歳の時、神さまへの熱心な祈りの結果、不思議にも思いがけず孤児院設立の基礎となる土地、家屋、1000ポンドの基金、そして子どもを世話する働き人が、聖書知識協会の仕事として与えられました。翌年には、女子のための孤児院も開設の運びとなり、両施設でそれぞれ30人ずつの孤児を保護することになりました。これは当時のイギリスにおいて、きわめて先駆的、開拓的な児童福祉の働きでした。

このようなミュラーの孤児院運営の基本的な姿勢は、神さまは必ず祈りのうちに求めたことは叶えて下さること、ただ神さまの約束を信じて祈り続けることが大切であるということでした。したがって、ミュラーは寄付金を募ることはしませんでした。どれだけ財政的に困難であっても、それを外部に公表し、援助を求めることはしませんでした。ただ神さまへの熱心な祈りにより、神さまからの恵みとして、心ある篤志家からの臨時的な寄付金のみに頼るという方針でした。借金もありませんでした。ミュラーのたゆまない熱心な祈りが神さまに届き、不思議にもそのつど思いがけず、その願いが叶えられ、篤志家による臨時的な寄付金が与えられたのです。以後、事業規模は施設数5カ所、入所児童数2000人にまで拡大していきましたが、入所児童の日々の必要が満たされないということはありませんでした。まさに神さまからの大いなる恵みであり、ミュラーの熱心な祈りの賜物でした。

なおミュラーは後年、来日し、滞在中、新島襄の招きにより、同志社でも講演をしました。その講演がきっかけとなり、石井十次や山室軍平が我が国の「社会福祉」、とりわけ「キリスト教社会福祉」のさきがけとなって活躍することになりました。ご存知のように、石井十次は「岡山孤児院」を創設し、わが国の児童福祉事業の先駆者となりました。また山室軍平は「救世軍」というキリスト教団体で、とくに貧しい人たちのための各種福祉活動を展開することになりました。このように「祈りの人、ジョージ・ミュラー」は、わが国の社会福祉にも多大な影響を与えました。

さて聖書でパウロは「絶えず祈りなさい」と言っています。なぜなら「祈りは神さまが、わたしたちにお求めになられる感謝のもっともすぐれたものであり、また神さまは恵みと御霊とを、心からの慕わしさをもって、たゆまずこれを求め、また感謝する者にのみ、与えようと思っておられる」(ハイデルベルク信仰問答116)からです。

またイエス・キリストは「求めなさい。そうすれば与えられる」(マタイ7:7)と言っておられます。神さまは、わたしたちが必要としている神さまの恵みと御霊とを、祈り求める人に、応えて与えてくださるのです。祈りに応えて、わたしたちに善きものを与えて下さるのが、神さまのみこころなのです。わたしたちの祈りに応えて与えてくださること、これが聖書にある神さまの方法であり約束なのです。

またヤコブは「正しい人の祈りは、大きな力があり、効果をもたらします」(ヤコブ6:16)と言っています。心から神さまを信じ、神さまのために善きことを行うならば、それはわたしたちが、はかり知ることができないほどに大きく、効果的なものになります。

今朝、お話ししましたように、ミュラーは孤児たちのために神さまに熱心に祈り、たえず求めた結果、神さまはこれに応えられ、しかもそれを大きく成長、発展させてくださいました。ミュラーの影響を大きく受けた、わが国の石井十次や山室軍平の場合もそうでした。わたしたちもミュラーのように「地の塩」「世の光」として、他者のために、とりわけこの世の社会的弱者とよばれる人々のために、絶えず祈り、そして奉仕し、神さまの栄光をあらわそうとする時、神さまは必ずや、わたしたちの熱心な祈りに応えてくださることでしょう。

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