顧みて下さる神

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聖書の言葉

ヨセフは兄弟たちに言った。「わたしは間もなく死にます。しかし、神は必ずあなたたちを顧みてくださり、この国からアブラハム、イサク、ヤコブに誓われた土地に導き上ってくださいます。」それから、ヨセフはイスラエルの息子たちにこう言って誓わせた。「神は、必ずあなたたちを顧みてくださいます。そのときには、わたしの骨をここから携えて上ってください。」

旧約聖書 創世記 49章24,25節

吉田謙によるメッセージ

ここには、死に臨んだ時のヨセフの遺言が語られています。このヨセフの遺言に特徴的なのは、「神は必ずあなたたちを顧みてくださる」ということが、二度も繰り返されている、ということです。しかもヨセフは、必ず顧みてくださる、と断言しています。おそらく、これがヨセフの信仰の中心だったのではないかと思います。またこれは同時に、「神は必ずあなたたちを顧みてくださる」とあえて言わなければならないような現実があった、ということでもあります。つまり、神様は見ておられないのではないか、微睡んでおられるのではないか、もう私には興味がなくなってしまったのではないか、と思えるような厳しい現実を、これからあなた方も経験することになる、ということです。ヨセフは、長い人生の中で、そう思えるような現実を幾度も経験してきました。しかし、そこで彼が知ったことは、決してそうではなかった、ということです。「神様はちゃんと私のことを、微睡むことなく見つめていて下さった。その時々に必要な助けを神様はちゃんと備えていて下さった。しかも、人の悪意ある行為さえも神様は用いて、救いの御業を成し遂げて下さった。後になってそのことを知り、一時期、心の整理がつかず、悩んだこともあったけれど、今なら、はっきりと言える。『神は必ずあなたたちを顧みてくださる!』と。この信仰を、どうかあなたたちもしっかりと受け継いで欲しい!」これがヨセフの遺言の中心でした。

また、このヨセフの遺言には、神様が顧みてくださる具体的な内容も語られています。それは、「このエジプトの国から、約束の土地に導き上ってくださる」ということです。「やがて神様はあなた方を顧みてくださり、あなた方をこのエジプトから、約束の土地に導き上って下さる。その時には私の遺体をその約束の土地へと携え上って欲しい。それまで遺体は、このエジプトの地に置いておきなさい!」このようにヨセフは遺言したのでした。

このヨセフの遺言は、やがて実現する時を迎えます。この後、イスラエルの民は、およそ四百年間、エジプトで暮らし、繁栄していきました。しかし、やがてヨセフのことを知らない王様が現れ、増え続けるイスラエルの民を迫害し始めるのです。そんな中、レビ族の子孫からモーセが生まれました。そして、イスラエルの民は、このモーセの導きによってエジプトを脱出し、約束の地、カナンへと帰って行くのです。そのエジプト脱出の物語が、この後の出エジプト記に記されています。いよいよモーセに率いられてエジプトを出て行く際に、モーセはヨセフの骨をエジプトから運び出しました。その時のことが出エジプト記13章19節に、このように語られています。「モーセはヨセフの骨を携えていた。ヨセフが、『神は必ずあなたたちを顧みられる。そのとき、わたしの骨をここから一緒に携えて上るように』と言って、イスラエルの子らに固く誓わせたからである。」

こうしてヨセフの遺言は、確かに実現していったのです。主なる神様は必ず私たちを顧みてくださいます。決して約束を違えるようなことはなさいません。たとえ目の前の現実がどうであれ、神様が一端約束なさったことは、必ず実現するのです。ヨセフは、厳しい現実を突きつけられ、何度も涙を流しながらも、その晩年には、この信仰をしっかりと受けとめることが出来たのでした。私たちにも、この信仰が求められているのではないでしょうか。

私たちは、人生の中で起こり来ることを、すべて理解し、納得できるわけではありません。なお、分からないことが沢山あります。特に理不尽な苦しみを味わう中で、「神様は必ず私たちを顧みてくださる」と信じることは、なかなか難しいことでしょう。けれども、今、私たちは、どんなに納得できない暗闇の中にあっても、あのヨセフの時よりも、もっと鮮やかな仕方で神様を信頼し、希望をもって歩むことが出来ます。何故ならば、このお方は、私たちの救いのために、独り子の命をも惜しまずに差し出して下さったお方だからです。それほどまでに私たち一人一人を、愛して愛して止まないお方だからであります。そんな神様が、みすみす私たちを滅びるままにしておかれるはずがありません。やがて全てのことが相働いて必ず益となる!この信仰を、私たちも、しっかりと心に刻みつつ、それぞれの人生の旅路を歩んでいきたいと思います。

今、私たちは、新型コロナウィルス感染症によって悩まされ、不安の只中に置かれています。また、これまで経験したこともないような激しい豪雨や異常気象に脅える日々が続いています。これらは、人間の罪の影響を受けた、この地球の呻き声ではないかと私は思います。これからも世界は目まぐるしく動いていくことでしょう。明日のことは、私たちには分かりません。けれども、私たちの救いのために、独り子の命をも惜しまずに差し出して下さった神様は、必ず私たちを顧みて下さいます。そして必ずや私たちを永遠の御国へと導いて下さるはずなのです。この約束だけは決して変わることがありません。この約束をかたく信じ、これからもこの激動の時代を、諦めることなく、希望をもって歩んでいきたいと思います。

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