キリストによって変えられる

先日、「ベン・ハー」という映画を観る機会がありました。今から60年以上も前の映画ですけれども、数多くの賞を受賞したとても有名な映画です。舞台は紀元1世紀のイスラエルです。ちょうどイエス・キリストが生まれて、十字架で死に、復活をするまでの時代が扱われていました。

ユダヤ人貴族のベン・ハーはエルサレムでとても裕福な暮らしをしていましたが、ある時不意に起こった事故をきっかけに、ユダヤを支配していたローマ帝国に捕らえられてしまいます。そこから彼は、ローマの奴隷として過酷な労働を強いられることになりました。しかし、思いがけないことが起こって、彼は奴隷の身分を逃れて、再び自分の家に戻ることになるのです。

この映画で印象的な場面は、このベン・ハーがイエスに出会うところです。彼が奴隷として、水も与えられずにいた時、一人の青年が彼に水を差し出します。それがイエスでした。ベン・ハーはやがて、イエスが十字架に付けられる姿も目撃をします。

そして、イエスに出会った彼は、生き方が変えられることになるのです。かつて苦しみの時にイエスに水を飲ませてもらった彼は、今度はイエスが十字架の苦しみにある時、彼に水を飲ませようとしました。今度はイエスに自分が水を飲ませようとした。さらに、ベン・ハーの心には、自分をローマ帝国に奴隷として引き渡した者たちへの消えることのない怒りと恨み、憎しみの思いがありました。しかし、それも十字架のイエスを見る中で、そういう思いから回復させられていくのです。

この映画を観て、改めて、イエスに出会った者は変えられる、ということを思わされました。水を飲ませてもらった者が、今度は水を飲ませる者になる。また、消えることのない激しい怒りと恨みのある者が、今度はそのような思いから解放された喜びに生きる者にされるのです。

最初にお読みした聖書の箇所に出てきたザアカイという人、この人もイエスに出会ったことでその生き方が大きく変えられた人です。

このザアカイという人は、当時税金を徴収する仕事をしていました。ユダヤのためだけではありません。当時そのユダヤを占領していたローマ帝国のための税の徴収も行っていたと言われます。ザアカイはとても金持ちだったと聖書に書かれています。おそらく、人々から取り立てたものから、自分自身が様々に利益を得て、それでもうけていた人のようです。先ほどお読みした聖書の箇所では「だまし取っていた」とも言われています。

しかし、人間というのは、たとえそのようにして金持ちになっても、決してそれで自分が満たされたとは言えません。そのような彼はイエスに会いに行く。そして、イエスと出会って、生き方が変えられるのです。「わたしは財産の半分を貧しい人々に施します。また、だれかから何かだまし取っていたら、それを四倍にして返します。」彼はイエスにこのように言いました。

財産の半分を貧しい人々に、また、だれかから何かだまし取っていたらそれを四倍にもして返す。私たちにとっては少し考えられないようにも思います。ザアカイにとっては、もはや自分のお金以上の存在に出会った、ということです。たとえ自分の財産を捨ててでも、イエスに従って生きる。そういう様子があります。本当に生きる喜びが与えられた、という姿です。

私たちは生きていれば、人生の中でいろいろな移り変わりや変化を経験させられます。しかし、聖書にあるイエスという方に出会ってこれを知るということは、これこそ私たちの生き方が根本的に変えられると言えることです。この方は、ベン・ハーのように、耐え難い苦しみの中にある者に、手を差し伸べられる方です。そして、聖書に出てくるザアカイのように、金持ちになっても満たされない、そういう人生を送っている人が求めれば、その人と出会ってくださるお方なのです。聖書は、十字架の死から復活されたイエスは、今も人々のために生きて、働いておられると私たちに告げています。

人生の中でイエスとの出会いが与えられる。イエスを信じる者にされる。考えてみると、とても不思議なことだと思います。私は自分でも、なんで自分が今牧師になっているのか、なんで自分が教会で働いているのか、不思議に思うことがあるのです。不思議としか言えない。自分がずっと昔からやりたいと思っていた訳でもありません。むしろ、それまでイエスとは全く関係のないような生き方をしていた自分です。ただ自分の欲望や自分の思いに忠実でした。しかしそのように生きていた者が、ある時イエスを知る者にされるのです。本当に不思議です。

このイエスはこの放送を聴いておられるあなたにも出会ってくださる方です。私たちの生涯は、ただこの方によって豊かに変えられます。