家の中のポスト

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聖書の言葉

わたしパウロが、自分の手で挨拶を記します。これはどの手紙にも記す印です。わたしはこのように書きます。わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがた一同と共にあるように。

新約聖書 テサロニケの信徒への手紙二 3章17,18節

國安光によるメッセージ

私には5歳の娘がいます。娘は最近、手紙にはまっています。幼稚園で友達ができて、その友達と手紙を交換し合っています。手紙にはキラキラのシールが貼ってあったり、絵が描いてあったり、「大好きだよ」とか書いてあったり、もらったらうれしくなるような手紙でした。

娘も手紙をもらったら返信の手紙を書きます。今日はだれだれちゃんに、明日はだれだれちゃんに、と嬉しそうに手紙を書いています。そして私にも手紙を書いてくれるようになりました。「パパ、これあげる!」と折り紙を手渡され、見るとならったばかりの手書きの文字でメッセージが書いてありました。それは本当にうれしくて、書斎に貼っています。

そんな娘から「パパも手紙を書いて!」と言われました。「わかった」と答えながら、なかなか書けずにおりました。するとあるとき、家の中にポストのようなものができていました。段ボールで作られたポストのようで、娘に「ここに手紙を入れたらいいの?」と聞くと、「そう、ここに手紙を入れてね!私も入れるから」と言われました。

その夜、仕事を終えて、ポストをのぞいてみました。何もなさそうだったのですが、一応開けてみると、ぱさっと一枚の手紙が出てきました。どうやら私への手紙のようで、オレンジ色の文字で「パパ、お仕事お疲れ様」と書いてありました。へとへとだったのですが、その手紙を読んだら、本当にうれしくて、元気が出てきました。それから私は娘に手紙を書いて、ポストに入れました。

その次の朝、娘は目を覚ますと、すぐにポストに行きました。手紙が入っているか確かめに行ったのです。娘がポストをあけるとぱさっと、一枚の手紙が落ちました。娘はそれを拾ってじっと読んでから、私の方に来ました。「パパ、手紙読んだ?」「うん」と答えると、「また今日手紙を書くから、パパも書いてね」そう言って、ニコニコしていました。

家の中のポストのおかげで、私と娘で文通ができるようになりました。娘とは毎日会い、言葉を交わすんですけれども、手紙だからこそ伝えられることもあります。話す言葉ではなくて、文字で書いて伝えることで、より大きな喜びを届けることもできます。いまはデジタルの時代ですので、あまり手書きの手紙は好まれないかもしれませんけれども、手書きならではの味わいがあります。

聖書にも多くの手紙があります。新約聖書には、○○への手紙と名がつけられた書がいくつかおさめられています。その中の一つ、テサロニケの信徒への手紙二の結びの言葉にこうありました。「わたしパウロが、自分の手で挨拶を記します。これはどの手紙にも記す印です。わたしはこのように書きます。わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがた一同と共にあるように。」(テサロニケの信徒への手紙二3章17〜18節)

パウロという伝道者は、旅をしながら福音を宣べ伝えた人です。一つの場所にずっととどまっていたわけではありませんでしたので、旅先で教会に手紙を書いて同じ信仰に生きる人々を励ましました。パウロは手紙の最後の挨拶の言葉を、自分の手で記す、これはどの手紙にも記す印です、と言い、パウロの思いをぎゅっと詰め込みました。どんな字だったのか、見たことがないのでわかりませんが、パウロを知っている人がその字を見たら、ああパウロが確かに書いたものだ、遠くにいても私を思ってくれているのだ、そう感じて元気をもらったことでしょう。

あなたは手紙を書くことがありますか?いまはメールやLINEでメッセージを送っていますという人がほとんどの時代だと思います。それも大切な手段だとは思いますけれども、やっぱり手紙だからこそ伝わるものがあると思います。コロナウィルスによって、なかなか遠方の家族や友人と会えなくなった今、手紙はお互いを近くに感じさせてくれる、また励ましを届けてくれるよい手段だと思います。

遠くで会えない方だけではありません。近くにいて、話すことができる人にも手紙でしか伝えられない思いや励ましがあるように思います。家族以外の方とはおそらくほとんどマスクを介しての会話になるのだと思います。表情がわからない会話は、お互いの気持ちを読むしかないわけで、疲れますし限界があります。そんな私たちにとって、手紙は心の距離を少しでも縮めてくれるはずです。

パウロは手紙の最後にこう書きました。「わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがた一同と共にあるように。」ここにはパウロがではなくて、主イエス・キリストがあなたに恵みを届けてくださるように、と書かれています。パウロが書いた手紙なんですけれども、そこには主イエス・キリストからの恵みへの信仰がありますので、この手紙を受け取った人はイエス・キリストの手紙としても受け取ったのだと思います。

私たちもパウロから主イエス・キリストからの手紙を受け取りたいと思います。聖書に込められた主イエス・キリストの手のぬくもりを感じながら、恵みを受け取り、励ましを受けて、元気を与えられたいと思います。聖書は神様からのラブレターです。ぜひ聖書を開いてみてください。またぜひ教会の礼拝で語られる聖書の言葉に耳を傾けてください。主イエス・キリストが近くにおられることを感じながら、歩んでいただきたいと願います。

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