自由な生き方

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聖書の言葉

イエスは、御自分を信じたユダヤ人たちに言われた。「わたしの言葉にとどまるならば、あなたたちは本当にわたしの弟子である。あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする。」

新約聖書 ヨハネによる福音書 8章31,32節

吉田実によるメッセージ

但馬みくに教会の吉田実です。前回もお話いたしました通り、私は昨年の春に神戸から兵庫県養父市に引っ越しました。大屋町由良と言うところに住んでいるのですけれども、夏に遊びに来てくれました友人が「高速を降りてからここまで、コンビニが1件もないのでびっくりしました。まるで日本昔話のような風景ですね」と驚いていました。確かに近所にコンビニはありません。お店は30分ほど歩いたところに小さなスーパーが1件あるだけです。「それでは不自由ですね」と言われることがありますけれども、実際に住んでみますと、そうでもないのです。前回お話しました通り、こちらの方は農家でなくても畑を持っていて野菜を作っておられる方がたくさんいらっしゃいますので、スーパーで買うよりもはるかに新鮮でおいしいお野菜をいつもお裾分けしていただいています。また教会には但馬牛を飼う牧場を経営しておられる方もいますし、畑を荒らすシカやイノシシなどの動物を駆除するための猟師としての資格を持っておられる方もいますので、時々美味しいお肉を分けていただくこともあります。都会で暮らしていますと食べ物はお金で買うのが常識ですけれども、自分たちで作ったり捕ったりしておられる方々の感覚は、根本的に違うのではないかと思わされています。また、食べ物ではありませんけれども、大屋は「木彫の里大屋」と呼ばれるほど、木彫作品を作っておられる作家さんが沢山いらっしゃいますし、それ以外でも絵画や陶芸や染色やさおり織りなどいろんな分野のアーティストたちが移住して来られて、大屋で制作をしておられます。旧八鹿高校大屋分校の校舎を利用した「おおやアート村ビッグラボ」と言う施設がありまして、そこを中心に協力しながら、制作や発表を続けておられるのです。誰よりも自由を愛するアーティストの方々が集まって来るということは、都会にはない自由がある証拠ではないかと私は思います。美しい自然と、おいしい空気と、広々とした土地と、安い家賃。そして特に木彫作家さんたちにとっては制作に必要な木材も豊富にあるわけですから、こんなに自由で豊かな場所は他にはないのかもしれません。このように考えますと、「コンビニがないような場所は不便で不自由だ」と感じるのは、都会のシステムの中に組み込まれて、消費者としてそのシステムに依存して生きるしか術がない、そういう意味での「不自由な暮らし」に慣れてしまっている人たちの感覚なのかもしれません。

私たちは知らず知らずのうちに、世の中の色んな価値観やそれに元づく色んな力に支配されて生きているという現実があると思います。例えば、もっと便利なもの、もっとよいもの、もっと新しいものを手に入れたい。そして同じものなら、もっと安く手に入れたいと人は思います。それは自然なことであり、自由なことです。けれども、そういう価値観が世界中を覆って、コストを抑えるための安い原材料と、安い労働力を探すために世界中の企業が競争をする中で、その結果、次第にそういう資本の自己増殖のプロセスに国家でさえも歯止めをかけることが出来なくなってしまって、格差と分断がどこまでも進んで止まらない。安い労働力を使い続けるためには、格差がある方が望ましいから。次第にそんな世界になりつつあるのではないかと危惧しています。

先ほどお読みいたしました聖書の個所で、イエス様は「真理はあなたたちを自由にする」とおっしゃいました。それに対してユダヤ人たちは「わたしたちは奴隷になったことはありません。『あなたたちは自由になる』とどうして言われるのですか」と尋ねました。するとイエス様はこうおっしゃいました。「罪を犯す者はだれでも罪の奴隷である」。人間の果てしない欲望は、自由を謳歌しているつもりの私たち人間をいつの間にか暗闇の力によって支配しようといたします。そのためのシステムに組み込んで、抜け出せないようにしてしまうのです。そのような暗闇の支配から解放されて本当の自由を味わう入り口として、もしかすると田舎暮らしは一つの良いきっかけなのかもしれません。是非大屋に遊びに来ていただきたいと思いますけれども、でも、何も遠くまで旅をする必要はありません。是非お近くのキリスト教会を訪ねてみてください。自分の欲望を満たすことよりも、罪と戦い真理の言葉に生きることに本当の自由を見いだそうとしている、新しい価値観に生きる人たちとそこで出会うことが出来るに違いありません。

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