香港のクリスチャンたち(2)

ラジオ放送 キリストへの時間のトップページへ戻る

聖書の言葉

イエスは、近寄って来て言われた。「わたしは天と地の一切の権能を授かっている。」

新約聖書 マタイによる福音書 28章18節

大西良嗣によるメッセージ

先週から、香港のクリスチャンたちのことを取り上げてお話しています。香港はイギリスの植民地だったこともあり、人口の約12%がクリスチャンです。中国大陸が共産化された時、中国大陸にあった13のキリスト教大学が香港中文大学内にある崇基学院(キリストを崇めると書きます、崇基学院)に引き継がれたという歴史もあります。

昨年の5月末、香港の自由が脅かされていることに危機感を持った香港のプロテスタント教会の牧師たちが、6項目からなる「香港2020福音宣言」を公表しました。その第一項に、このようにあります。

「イエス・キリストは救い主、王であり、そして福音の土台である。この福音は、神の国の到来と現臨、また罪と悪の闇の力に対する勝利を宣言し、それによって世界のすべてのものに変革をもたらす。」

つまり、キリスト教を信じるということは、単に心の中の問題なのではありません。イエス・キリストが、天と地の一切の権能を持った、全世界の王であられることを信じるということでもあります。ですから、キリストは、私たちの心の中だけでなく、世界のすべてのものに変革をもたらします。ご自身が支配する神の国をもたらしてくださり、この世の中の闇を根絶してくださいます。

この「香港2020福音宣言」は、決して過激な宣言なのではありません。むしろ、香港の危機的な状況の中で、自分たちのキリスト教信仰を確認しようとするものだったと言ってよいでしょう。しかし、特に中心になって宣言の作成に携わった4人の牧師たちのうち2人は身の危険を感じて、国外に逃れなければならなくなりました。香港に残っている2人も、困難な立場に立たされています。

イエス・キリストを信じてクリスチャンになったら、危険がなくなるというわけではありません。クリスチャンになっても危険なことは起こります。しかし危機的な状況の中でも、クリスチャンには希望が失われることがありません。それは、単に、強い精神力によって危機を乗り切ろうとするのではありません。あるいは、政治的な手腕によって、困難を打開しようというのでもありません。クリスチャンの行動には、祈りが伴っています。「香港2020福音宣言」にも、こうあります。

「教会の祈りと具体的な行動は結びついており、行動は祈りの実践であり、祈りは行動の基礎である。教会の祈りと行動は、決して止むことがない。」

聖書には、「イエス・キリストが天と地の一切の権能を持っている」と記されています。目に見える状況を見ると、権力を持っている人間たちが、すべてを支配しているように見えます。しかし実際はそうではありません。キリストこそ一切の権能を持っているので、キリスト教会はこのお方に祈ります。またキリストの父なる神様に祈ります。

なおしばらく、香港の人たちは、困難の中を過ごさなければならないかもしれません。しかし、それが、永遠に続くことはありません。力を持っているように見えていた人間の権力は、やがて力を失います。天と地の一切の権能を持ったキリストのご支配が、やがて現わされることになります。

実は、香港のクリスチャンの全員が、同じように行動を起こしたり、立場を表明したりしたわけではありません。政府に反発するような政治的な活動はすべきでないと考える人たちもいます。実際の状況の中で、どんなふうに行動すべきかを判断することは、簡単なことではありません。日本のキリスト教会が、実際に行動を起こそうとする時にも、意見が割れることがあります。

それでも、教会は、イエス・キリストを頭として、一つの体とされています。クリスチャンは、キリストに結ばれて、一つとされているのです。「香港2020福音宣言」は、こうも語ります。

「教会は、最終的には、地上のいかなる政治的・経済的支配者や権力者に服従するにもまして、天の御国の王であり救い主であるキリストにのみ服従し、忠実でなければならない。」

教会は、正しく治める政府にはきちんと服従します。通常は、法令違反をしないように注意します。しかし、著しく正義に反することが政府によってなされれば、抗議の声をあげてきました。

クリスチャンになるということは、私たちがどのように生き、どのように行動するかに影響を与えます。そして、困難の中でも、信頼して祈ることのできるお方と、ともに歩んでいくことになります。

関連する番組