キリストとの出会い

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聖書の言葉

わたしの律法を彼らの胸の中に授け、彼らの心にそれを記す。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる。

旧約聖書 エレミヤ書 31章33節

柏木貴志によるメッセージ

この朝も、先週に引き続きキリスト教会の「古代」と呼ばれる時代に生きましたひとりの人のお話をさせていただきます。それは、エイレナイオスという人の、キリストとの出会いのお話です。

エイレナイオスは、先週のユスティノスとだいたい同じ時代、西暦100年代の中頃に生きた人です。「エイレナイオス」、それは「平和の人」という意味ですけれども、その名のとおり、教会に起こる様々な問題を解決するために奔走し、まさに平和をもたらす人として活躍をした人物です。最後は現在のフランス、リヨンの司教として殉教の死を遂げたと伝えられる人物です。

なんともすごい先生なんですけれども、このエイレナイオスが、自分の小さい頃の記憶を記している手紙があります。彼は小さい頃から教会に通っていまして、その頃のことをよく覚えているんだと記しています。エイレナイオスの言葉で言いますと、「子供の頃に学んだことは、魂とともに成長しその一部になるからです」(「フロリノス宛ての手紙」)。エイレナイオスが小さい頃に見た教会の風景、そこで教えられたこと、それは彼にとってとても心温まるものでした。その記憶に励まされ、その記憶と共に成長してきたというんです。そして、その教会の風景のなかでも最もよく印象に残っていると、エイレナイオスが記すのが、ポリュカルポスという、今のわたしたちで言う牧師先生のことなんです。

このポリュカルポス。エイレナイオスが見た時には、既にかなり高齢のおじいちゃん牧師だったようですが、なかなか面白い人物です。なんと、イエス様の弟子でありました、あのヨハネから教えを直接に受けたそうです。そういう時代なんですね。西暦100年代半ばの教会というのは。さすがに、イエス様と直接お話をしたという人はもういないとしても、イエス様の弟子は知っていると、教えを受けたと、そういう人がいる。ポリュカルポスもまたそうでして、ヨハネからイエス様の教えを聞いていたということです。そのポリュカルポスのことを、エイレナイオスはよく覚えているというんです。教会のどこに座って説教をしておられたのか、どのように歩いておられたのか、その時の立ち居振る舞い、顔の表情、ありとあらゆることを、自分は覚えていると、エイレナイオスは言います。

しかし、何より覚えていること、自分がポリュカルポスから授けられたもの、それは、ポリュカルポスがヨハネたち、イエス様の証人から聞いた命の御言葉、それを一生懸命に語られた説教、その言葉であったというんです。その言葉を通して、その姿を通して、エイレナイオスはキリストに出会ったのでした。

エイレナイオスはこういうふうに記しています。

わたしはそのときわたしに与えられた神の憐れみのおかげで、それらのことを熱心に聞き入り、紙の上にではなく心の中に書きとめました。そして、神の恩寵のおかげで、わたしは絶えずそれらを忠実に反芻しています。(エイレナイオス「フロリノス宛ての手紙」『原典古代キリスト教思想史Ⅰ初期キリスト教思想家』106頁)

ポリュカルポスの立ち居振る舞い、その姿、その声を通して語られた命の御言葉は、エイレナイオスの心に書きとめられたというんです。だから、忘れることがなかった。自分から離れることはなかった。いっつも思い出して、いっつも反芻して、それは神の恩寵として、自分を支えてきたと語るんです。

この感じ、わたしもなんとなく分かる気がいたします。わたしが教会に通い始めました時に、教会のおじいちゃんたち、おばあちゃんたちがいろいろな仕方で、イエス様のお話をしてくださいました。その時の、まるで天国を見つめているような、キラキラとした眼差しを忘れることができません。

その眼差しの先に、イエス様を見る思いがいたしました。その眼差しにずっと憧れてきました。その眼差しを思い出すと、心が強くされます。

この朝、このラジオを聞いてくださっているあなたの視視線の先にはどのような光景が広がっているのでしょうか。いろいろな心模様のなかで今、聞いてくださっていることと思います。ありがとうございます。心から願っています。今、ご覧になっておられるものと、聖書の御言葉とが一緒に心の中に書きとめられることをです。その経験が、これからの日々の歩みを支えくれるものになることをです。

今日、聞く聖書の御言葉は一回聞いて、それで終わりというものではありません。もしかしたら生涯、反芻しながら、聞き続けることになるものかもしれません。あなたに読まれることを待っている御言葉があります。そのために、イエス様が語られた命の御言葉は人を通して、人から人へと伝えられてきました。その御言葉を通して、キリストとの出会いが導かれますように。

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