こんな時こそ、あなたの声を

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聖書の言葉

これらすべてに加えて、愛を身に着けなさい。愛は、すべてを完成させるきずなです。

新約聖書 コロサイの信徒への手紙 3章14節

國安光によるメッセージ

コロナウィルスの影響で、これまで当たり前だったことができなくなりました。そのような状況にあって、皆様もそれぞれにつらさや疲れを感じる日々をお過ごしなのではないでしょうか。互いに距離を取らなければならない、これがいかに辛いことか。距離を取ることによって、物理的な距離だけではなく、人と人とが集まることによって育まれてきた大切ないのちの営みがバラバラにされてしまう、これは本当につらいことです。人と会えないことがこんなに辛いことであるということを、私も日々感じています。

そういう時だからこそ、いろんな気づきを与えられることもあります。最近、教会に荷物を届けに来られる業者の方に、丁寧に声をかけるようにしています。マスクはつけたままですけれども、「こんにちは!今日も大変な中でありがとうございます。」業者の方は、最初は緊張した面持ちですけれども、その一声があるだけで笑顔になります。人によってはお話をしてくださる方もおられます。

ある方はこういうこともおっしゃっていました。「今、荷物を届ける量がとても多くて、大変です。それに加えて荷物をお渡しする時には、とても神経を使います。アルコールスプレーを毎回手にかけるので手がカサカサです。また怖いのは、人によっては何も言わずにアルコールスプレーを急にかけられる時もあります。精神的に参ります。」

本当に辛い中でお仕事をなさっているんだな〜と感じました。自分のことだけでもいっぱいいっぱいの中で、精一杯の中で仕事をしているのに、その苦労が労われない。かえって虐げられるような言葉をぶつけられたり、冷たい態度を取られる中で、ますます人が怖くなってしまう。怖いので、物理的な距離だけではなくって、心の距離も取らなくてはならない。私は「本当に大変ですね、お疲れ様です。いつもありがとうございます」と声をかけるしかありませんでしたが、その言葉をその方は喜んでくださいました。

ただならぬ緊張と不安に覆われた社会の中で、目の前にいる誰かはもしかしたら、とても大変な中で歩んでいらっしゃるのかもしれない。辛い思いを抱えていたり、傷ついていたり、誰かの優しい言葉を、労ってもらえる言葉を、欲しておられるのかもしれない、そのような想像力を絶やしてはならない、と気づかされます。そして自分の一言が、もしかしたら誰かの1日を変えていくのではないか、ああここに来てよかった、あの人と話せてよかった、そういう思いで、気持ちよく過ごせるようになるのではないか、と思いました。

いつもどこか人と人との関係がぎすぎすしている今だからこそ、これまで気づかなかった感謝を伝えてくれる誰かの存在の貴さ、心を込めて労う言葉の貴さに目が開かれていく時なのかもしれません。私の実感としては、心ない態度や言葉が巷にあふれている今こそ、声をかけたり、感謝を伝えたり、労ったりすることで、力を失っている誰かを励ますことができますし、悲しんでいる誰かを喜ばせることができます。大きなことをしなくても、ほんの小さな言葉、心の持ち方次第で、良い繋がりを生み出していけるのだと思います。

聖書にはこういう言葉があります。「これらすべてに加えて、愛を身につけなさい。愛は、すべてを完成させるきずなです。」(コロサイの信徒への手紙3章14節)

きずなという言葉があります。私は昨年まで仙台で奉仕をしていました。東日本大震災の後、東北で度々「きずな」という言葉を耳にしました。私の好きな言葉の一つです。困難な状況の中で、誰かと共に支え合う関係をあらわす言葉です。大変な時に「きずな」があることで支えられることがあるんです。しかし今味わっている困難は、その「きずな」が壊れてしまう悲しみ。あるいは「きずな」を生み出せない苦しみかもしれません。

でもその悲しみ、苦しみがわかるからこそ、今しか生み出せない「きずな」もあります。愛を身に着けることによって、私たちのために愛する独り子イエス・キリストを送ってくださった神の愛を受け取ることによって、私たちから始まっていく「きずな」があるのではないでしょうか。神に愛されていることを味わい、誰かに神の愛の香りを届けることができます。言葉によって、態度によって。私たちを通して、神の愛に触れた誰かに喜びを、勇気が与えることができるとするなら、そこに心の交流が生まれてきます。顔にはマスクをしていて、どこか寂しいかもしれませんけれども、でも心のマスクを取って、心を通わせることができます。喜びを生み出していく関係も生まれてくるんです。神様が私たちを通して、新しいきずなを与えてくださいます。

あなたの今日の1日の上に神様の愛が豊かに注がれますように。また不安に平安が、悲しいに喜びが与えられますように、心からお祈りをしています。

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