もはや戦うことを学ばない

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聖書の言葉

主は国々の争いを裁き、多くの民を戒められる。彼らは剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない。ヤコブの家よ、主の光の中を歩もう。

旧約聖書 イザヤ書 2章4,5節

弓矢健児によるメッセージ

先週の8月15日、日本の国は戦後74回目の敗戦記念日を迎えました。また6日には広島原爆の日、9日には長崎原爆の日を迎えました。私たちにとって8月は、特に戦争と平和のことを考える月でもあります。二度と戦争の過ちを繰り返してはならない。そんな思いから、各地で平和の集いが開催されています。私の所属しています西神教会でも、8月には平和について共に考え、その中で、戦争を体験なさった方々の声を聞く会を開催しています。

しかし、私もそうですが、今や戦後に生まれ、「戦争」を体験していない人の方が多くなっています。もちろん、戦争を体験していない世代が増えているということは、この間日本は戦争をしてこなかったということですから、そのこと自体は素晴らしいことです。けれども、戦争を体験していないからと言って、戦争を知らないということであってはいけないと思います。体験していないということと、知らないということは違うからです。体験していなくても、知ることはできます。そして、戦争の過ちを繰り返さないためには正しく知ること、学ぶことが大切です。

先の戦争において日本の国はアジア近隣諸国を侵略し、2000万人とも言われるアジアの人々の命を奪いました。また、300万人とも言われる日本人の命も犠牲になりました。その戦争の痛みは今も続いています。だからこそ、戦争を体験した人も、体験していない人も、戦争の愚かさと悲劇の現実を正しく知るように努めていくことが大切です。そして、そのことを次世代の者たちにも語り伝えて行く責任があります。そうしてこそ、私たちは平和を育んで行くことができるのです。

本日の聖書箇所で預言者イザヤは、戦争も戦争の道具も廃絶された平和な世界の到来について預言しています。その時人々は、戦争の道具である剣や槍を、農業の道具である鍬や鎌に打ち直すというのです。現代の言葉で言い換えるならば、ミサイルや戦闘機と言った武器を廃棄し、その技術を人間の命を育む産業に転換して行くということです。そのようにして、世界の国々は争いを止めて、二度と戦争をすることを学ばない。むしろ、愛し合うこと、助け合うことを学ぶ、これが、聖書が私たちに約束している平和です。

このように言いますと、そんなことは夢物語だとか、この世界に戦争や紛争がある以上、国を守るためには強い軍事力を持つ必要があるとおっしゃる方もいます。確かに、今の世界を見渡した時、本日の箇所で、預言者イザヤが語っているような平和からは程遠い現実を私たちは目の当たりにします。しかし、今私たちが目で見ている現実だけが唯一の現実ではありません。私たちは決して今ある現実を絶対化してはなりません。それどころか、もし今の現実が間違っているならば、それに代わる新しい現実を立てていかなければなりません。

そもそも神がこの世界と人間を創造し、私たちに命を与えられたのは、私たちが神の愛の中で互いに愛し合い、平和に生きるためです。そうである以上、私たちは現実的と言う言葉に逃げ込んでしまってはなりません。戦争をすること、軍備を持つことがあたり前であるという現実に対して、むしろ別の現実、預言者イザヤが語るように、「剣を打ち直して鍬とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」。この平和の現実こそ、打ち立てて行くことが大切です。なぜなら、イザヤの語る平和の預言は、決して人間の理想や願望ではないからです。それは、神が私たちに約束された、来るべき世界の現実であるからです。

預言者イザヤが、この平和の預言を神から与えられた時、イスラエルの国はアッシリヤ帝国の軍事的脅威のただ中に置かれていました。そうした中で、多くの人々は、当時の大国であったエジプトと軍事同盟を結んで対抗すべきだと考えていました。それが現実的な選択であるかのように思われました。しかし、そのような現実を人々が選択しようとしていた時、神は預言者イザヤに対して、この平和の預言を与えられたのです。つまり神はイスラエルの人々が軍事力やエジプト軍に頼るのではなく、むしろ力を捨てて神に委ねること、そこにこそ真の平和があることをお示しになったのです。

さらにイザヤは5節で、「ヤコブの家よ、主の光の中を歩もう」と呼びかけています。この言葉から分かることは、イザヤの語る「平和の預言」は、単に遠い将来の約束というだけではなく、この今という時に、私たちに示されている新しい生き方でもあるということです。

どんなに今の現実が、平和から遠いように見えても、また、どんなに今の世界が力によって支配されているように見えても、神は必ずこの世界からすべての戦争を廃絶し、真の平和を実現してくださいます。そのために神は御子イエス・キリストをこの世に遣わし、神の愛を示してくださいました。そしてイエス・キリストは、敵を愛し、剣を捨てる生き方を私たちに教えてくださいました。

神は今、私たちに対しても、剣を捨てて平和に生きるようにと招いておられます。

「国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」、この新しい現実の中を、私たちもまた勇気をもって歩み出して行きましょう。

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