どこへ行っても、あなたと共にいる神
佐野結子
- ひたちなか教会 定住説教者
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「見よ、わたしはあなたと共にいる。あなたがどこへ行っても、わたしはあなたを守り、必ずこの土地に連れ帰る。わたしは、あなたに約束したことを果たすまで決して見捨てない。」
旧約聖書 創世記 28章15節
今日は、3月の終わり、年度末です。明日から4月になり、新しい年度を迎え、入学や就職で人生の新しいスタートをきる方、あるいは、転勤で引越しをして、環境も仕事も人間関係も大きく変わる方もいらっしゃるでしょう。新しいことへの期待と同時に、不安も抱えることでしょう。このような時に、聖書は、神さまは、あなたがどこへ行っても、あなたと共にいてくださってあなたを守る、と告げています。
ここでは、イスラエル民族の父祖、アブラハム、イサクに続くヤコブの人生のターニングポイント、転換点が描かれています。ヤコブは、お兄さんが持っていた長子の権利、つまりお父さんのイサクから受け継ぐ土地や財産、子孫の繁栄という、神さまからの大きな祝福を、兄からだまし取ってしまいました。当然、兄の憎しみと怒りを買います。それが治まるまで、親戚の家へ逃げることとなります。両親とふるさとから遠く離れ、一人孤独にとぼとぼと、荒れ野の旅路を、後悔しつつ歩んでいたことでしょう。神さまの祝福とはまるで正反対のような道のりだと、望みを失って一夜を過ごしているときでした。ヤコブは夢を見ます。何と、天から地上に向かって階段が伸びていました。そこを神の使いたちが、上ったり下ったりしています。そして主なる神様が、ヤコブの傍らに立ってこう言います。
「あなたの子孫はこの土地で増え拡がり、繁栄する。世界の民は、あなたとあなたの子孫によって、祝福に入る。」
これは、アブラハム、イサクから受け継いだ神様の約束の言葉です。そして、
「見よ、わたしはあなたと共にいる。」
一人ぼっちだと思っていたヤコブの傍らに、なんと、主なる神様が立っている。「あなたがどこへ行っても、あなたを守る。」そして「この地に連れ帰る、決してあなたを見捨てない、約束の言葉は必ず果たされる。」と言われました。すべてをご支配してくださっている神様が、「あなたを見捨てない」と言ってくださる。人生の大事なスタートの時に何と勇気をいただく言葉でしょう。ヤコブは、そののち、伯父の家で、労苦を重ねることになりますが、多くの子孫と財産を得て、ふるさとに帰ることができました。神様の約束の言葉どおりでした。
さて、私の亡くなった母の話で恐縮ですが、母の人生を振り返りますと、大きなターニングポイントは、やはり、洗礼を受けたことと、その後すぐに、結婚式を教会で挙げていただいたことだと思います。新しいスタートに神様と共に歩む、ということに導かれたことです。母は関西出身でしたが、間もなく、父の仕事のために、ふるさとを離れ、東京に移り、親戚もいない中、心細かったと思います。そんな中で、教会に行き続けることができました。教会の礼拝とは、天と地をつなぐ階段を神の御使いが上り下りするようなものです。天にいらっしゃる神さまが聖書を通して語ってくださる、それに応えて、地上にいる私たちが祈り、また讃美歌を歌う。母は、教会の礼拝から帰ってくると、「今日は本当に満たされたわ」とよく言っていました。「あなたがどこへ行っても、あなたを守る。決して見捨てない。」これは本当にそうだったと思います。母は持病もあり、ひととおりの労苦も負いましたが、子孫も、そして経済的な事もすべて神様が備えてくださり、神様に祝福されました。最期の病の床で、母の好きな聖句を牧師が語ってくださいました。ローマの信徒への手紙8章35節~39節ですが、それは、どんな艱難も苦しみも、また死も命も、あらゆるものによっても、私たちの主イエス・キリストによって示された、神の愛から、私たちを引き離すことは出来ない、という御言葉です。神様の御子である、イエス・キリストは、私たちの罪を赦すために、その罪を背負って、十字架に掛かって死んでくださり、三日後に復活させられました。神様は、ご自分の御子をさえ惜しまず、私を愛してくださいました。私が死を迎える時も、この神様の愛から、引き離すことは出来ない。愛の神様が、とこしえに私と共にいてくださるからです。母はこの御言葉に大きくうなずいて、天の神様のみもとに召されていきました。
どうぞこの日曜日、教会にお出かけください。どこへ行っても共にいてくださる神様がいらっしゃいます。あなたをとこしえに愛し、守り、決して見捨てないという神様が、あなたの傍らに立っていることを知ることになるでしょう。