聖書の言葉
主は羊飼い。私には何も欠けることがない。主は、私を青草の原に休ませ、憩いの水のほとりに伴い、魂を生き返らせて下さる。
旧約聖書 詩編 23編1,2節
田村真理子によるメッセージ
今日は、私の最も好きな御言葉の一つ、旧約聖書、詩編の23:1,2をお読み致しました。
この詩編23編は、聖書の中でも世界中の多くの方々が愛読し、暗唱し、心に刻み込まれているものの一つです。
「主は羊飼い。私には何も欠けることがない。」
神様は羊飼い、私には何も欠けることがない、この私は羊、私には何も心配はないのです、と書かれています。私が心配しなくても、羊飼いが私を青草の原に休ませて下さるし、憩いの水のほとりに一緒にいて下さるし、魂までも生き返らせて下さると、綴られているのです。
私は20年ほど、病院ボランティアをさせて頂いてきました。聖書に根差したキリスト教病院ですので、毎朝毎朝欠かすことなく、60年間も、職員、患者様、ボランティアも、チャペルに集まり、15分の短い礼拝を捧げています。200名ほども集まるでしょうか。朝の病院は、特に就業前はとても忙しく慌ただしいのですが、病棟のスタッフも交互に時間をやりくりし、チャペルに集まり、心と体を静めてから、一日のスタートをしています。病室におられる患者様方は、院内の放送でお話を聞き、TV画面でその様子を観ることもできるようになっています。またお元気な患者様はチャペルに集うこともできます。
私がボランティアを始めてまだ間もない頃、一人の女性患者様のヘルプをさせて頂いていました。車椅子の移動中、「ねぇ、あそこへ寄って。」「えぇっと、えぇっと、あの教会みたいな…。」「あっ、チャペルですね。」「そう、チャペルや。」チャペルのドアはいつも開いています。車椅子を押して静かなチャペルに入りました。静かな、少し暗いチャペル。窓からの陽射しは、明るすぎず、程よい明るさでした。私がその朝も礼拝の奏楽をしていたオルガン近くで車椅子を止めての静かな時間が過ぎました。彼女は「あんなぁ、私、あと三つきやてぇ。先生に、昨日、言われたんよ。」「どうしたらいいか、分からん、分からん、分からん」とおっしゃいました。
私は「Aさん、私の好きな讃美歌を弾きますね」と言って、讃美歌298番を静かに弾きました。
「やすかれ、わがこころよ、主イエスはともにいます
いたみも苦しみをも. おおしく忍び耐えよ
主イエスのともにませば、 たええぬ悩みはなし」と小さな声で歌いました。
「えぇなぁ、オルガン、えぇなぁ、この歌」と、讃美歌を聞き、見入っておられました。「私のために弾いてくれたん?ありがとう。」Aさんも私も涙をこぼしながら、私は続けて備え付けの聖書で、詩編23編をお読みしました。「えぇなぁ、えぇなぁ、ここが少し静かになった…」とご自分の胸を押さえておられました。そして、ゆっくりお部屋に戻りました。
また、ボランティアの友人の一人が重篤な病にかかり、受診に付き添いました。「真理ちゃん、聖書読んでぇ」と弱い声で言われ、もう体のしんどい彼女は横たわり、目を閉じたまま、私の手を握りながら、詩編23編を静かに聴かれていました。「23編、いいねぇ」と少し微笑んでおられました。
お二人共、死を近く感じ、恐怖と孤独に押し潰されそうな日々を過ごされていました。こんな時、一層、この御言葉は私たちに静かに語り続けます。「心配はいらない。主(神様)は羊飼いなのだから」と。
患者様の多くが「家に帰りたい」とよく言われます。家はとても大切な存在、居場所です。私の日常に戻りたいという希望をお持ちです。いつものあの家に帰りたいと。家は、私の家でもありますし、天国でもある。そして、主イエス様のおられる、招いて下さっている場所、「教会」でもあります。いつでも、このイエス様の“おうち”は、皆様をお待ちしています。
2019年、新しい年が始まりました。私たちにとってどのような一年になるのか、予想もつきません。でも、どのような時にも、「主は羊飼い。私には何も欠けることがない」と言われる神様が、皆様を愛し、守って下さると信じます。
23編の最後、6節には、「命のある限り、恵みと慈しみが、いつも私を追う。主の家に私は帰り、生涯、そこに留まるであろう」と締め括られています。
さて、この「キリストへの時間」の司会をさせて頂いて、考えてみると、ほぼ30年が過ぎておりました。本当に拙い者でしたが、こうしてラジオを通して神様の御言葉をお伝えする番組スタッフに入れて頂いて、本当に幸せでした。病院ボランティアと共に、私の大切な宝物になっております。リスナーの皆様、またスタッフの皆様、長い間、本当にありがとうございました。心から深く感謝致します。
では、お祈り致します。「神様、今日も新しい朝をありがとうございます。一日、私たちを守り、助けて下さい。イエス・キリストの御名によって、お祈り致します。アーメン」