バーハンバグ

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聖書の言葉

天使は言った。「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。」

新約聖書 ルカによる福音書 2章10,11節

吉田隆によるメッセージ

私がアメリカの神学校でキリスト教の勉強をしておりました時に、妻も同じ学校で学んでおりました。で、ある先生が「いつも口癖のように言う言葉があるんだけど、どういう意味かさっぱりわからない」と言うのです。私も聞いたのですが、何のことやらわかりませんでした。辞書を引いても出てこない。その言葉は「バーハンバグ」という言葉です。お分かりになりますか?知っている方は、そうとうの英語通です。「バーハンバグ」。私は何か、ハンバーグのことかなあと思ったのですが、実はこれ、イギリスのチャールズ・ディケンズという人が書いた有名な『クリスマス・キャロル』というお話の主人公スクルージの口癖のセリフで、「フン、くだらん!」というような意味の言葉なんです。冷酷で、欲深くて、親切心のかけらもない、意地悪な老人のスクルージが、事あるごとに世間の人々を嘲笑うようにして「フン、くだらん!」と捨て台詞を吐く。その言葉です。もちろん、クリスマスが近づいて、町がウキウキし始めますと、やっぱりスクルージは「バーハンバグ/ケッ、くだらん!」と言うのです。

さて、きらびやかな街の飾りや猫も杓子もクリスマスで売り込んでいる商売合戦を見て、クリスマスなんてくだらんと思っている人もおられるのではないでしょうか。私も、かつては「くだらん」とまでは言いませんでしたが、クリスマスなんて何の意味があるのか、さっぱりわからずに過ごしておりました。私は普通の未信者の家に育ちましたので、クリスマスと言えば、御馳走を食べて、ケーキを食べて、プレゼントを買ってもらう。それ以上でも以下でもありませんでした。子どもにとっては、それはそれで楽しいワクワクするようなひと時ではありましたが、大きくなると、何の感動も喜びもなくなりました。クリスマスは子供のためのイベントだと思っていたからです。

けれども、親元を離れて殺風景な学生生活の中で、ひょんなことから教会に通い始めて、礼拝に出席して聖書を学ぶうちに、クリスマスは本来教会の行事なのだということを、恥ずかしながら初めて知ったのです。救い主イエス・キリストの誕生を祝う日なのだと、初めて知りました。そして、わかりました。なるほど、そういうことなのか、と。子供の頃、訳もわからずに「もろびとこぞりて」を歌って、「しゅはきませり、しゅはきませり」と口ずさんでいた、あの歌が讃美歌だということ。「シュ」というのは主イエス・キリストのことであること。イエスの誕生は、すべての人の救いのためであったこと。だからこそ「もろびとこぞりて」、すべての人々よ共に集まり喜び祝おう、神を「ほめたたえよ、ほめたたえよ」と歌うのだということなど。まるで、すべての謎が解けて行くように、クリスマスのあの何とも言えない清らかで神秘的な雰囲気の秘密、その理由がわかったのです。当時、私が通っていた教会は、普通の民家を改造した教会でしたからロマンチックのかけらもない。教会の中も何の飾りもない。実に質素で素朴なクリスマスでした。けれども、教会と言う場所で生まれて初めて祝うクリスマスに、私の心は深い深い喜びで満たされたのです。そうして、その翌年、私は晴れて洗礼を受けてクリスチャンになりました。

「バーハンバグ!」クリスマスなんて「くだらん!」。そうけなしていたスクルージは、ある晩、不思議な経験をいたします。三人のゴーストが現れて、スクルージの過去と現在と未来を見せるのです。夢破れた過去、冷酷非情な現在の自分と貧しく憐れな人々の姿、そして無残に死んで荒れ廃れた墓に葬られる未来の自分。その幻を見させられたスクルージは激しい衝撃に襲われます。なんと虚しい悲惨な人生かと。けれども、彼は、過去の自分はもう変えられないが、未来はまだ変えられるということに気づきます。そして、まるで別人のように生まれ変わるのです。貧しく憐れな人々のために惜しみなく親切を施し、やさしく朗らかな人間へと変わって行く。やがて彼は、「ロンドンで一番クリスマスの楽しみ方を知っている人」と呼ばれるようになるのです。

クリスマスは、神様が、すべての人に大きな喜びをもたらしてくださった出来事です。それは愛による喜びです。私たち一人一人を、たといそれがスクルージのような人でも、神様は愛しておられること。ですから、私たちも互いに愛し合うべきこと。それを教えてくださった出来事です。

多くの教会では今日クリスマスの礼拝があるでしょう。明日も何かの集会があるかもしれません。教会に行ってみようかなぁ、どうしようかなぁと迷っておられる皆さん、是非、勇気をもって教会に出かけてみてください。そして、皆さんが「バーハンバグ!」というのではなく、心から「メリークリスマス/クリスマスおめでとう!」と言えるような、素晴らしい人生を、これからずっと送ってくださいますように、心から願っております。

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