福音書をどう歌うか

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聖書の言葉

ペトロは、「鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」と言われたイエスの言葉を思い出した。そして外に出て、激しく泣いた。

新約聖書 マタイによる福音書 26章75節

赤石純也によるメッセージ

福音書にこういう文章があります。「イエスが、『マリア』と言われると、彼女は振り向いて、ヘブライ語で『ラボニ』と言った。イエスは言われた。『わたしにすがりつくのはよしなさい』」。これをどう歌うか、お聞きください。

♪音楽

イエスやマリアのセリフだけを歌うのですね。これが福音書を歌う一番古い歌い方です。今朝は、ここから順を追って、福音書の歌い方の変化を聞いていただきたいと思います。まず宗教改革の時代になるとどんな歌い方になるか。ペトロがキリストを裏切ってしまう場面を聞いてみましょう。「ペトロは呪いの言葉さえ口にしながら『そんな人は知らない』と誓い始めた」と歌います。

♪音楽

「ペトロは呪いの言葉さえ口にしながら誓い始めた」という地の文も歌うようになりました。こんなふうに、福音書に書いてある文章を全部歌うようになったのですね。これが、さらに時代が進むとどんなサウンドになるか。同じ場面を聞いてみてください。「ペトロは呪いの言葉さえ口にしながら誓い始めた」『そんな人は知らない』

♪音楽

楽器の伴奏が付くようになりました。しかもずいぶん表現が豊かになってきました。「呪いの言葉さえ口にしながら誓い始めた」という地の文も緊迫感がありますし、「そんな人は知らない」というペトロのせりふも、必死さがよく出ていますね。もう一度聞いてみましょう。

♪音楽

こんなふうに、時代を追うにつれてどんどん立体的になっていきます。福音書の文章が生命力をもって立ち上がってくるのですね。こういう福音書の歌い方が、最終段階ではどれほどメッセージ性に満ちたものになるか、今日はそこを聞いていただきたいのです。同じ場面をどうぞ。「ペトロは呪いの言葉さえ口にしながら誓い始めた『そんな人は知らない』」。

♪音楽

地の文までが、何という緊迫感でしょうか。そしてペトロの「そんな人は知らない」。存在をかけている感じです。オルガンも非常に効果的です。地の文とペトロと両方が全身全霊・命がけなのですね。もう一度聞いてください。

♪音楽

この直後の地の文、「するとすぐ、鶏が鳴いた」。

♪音楽

ペトロは、「鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」と言われたイエスの言葉を思い出した。

♪音楽

そして外に出て、激しく泣いた。

♪音楽

福音書の一つ一つの文章はここまでの深みをもっていたのかと私たちに思わせます。いや福音書の文章のひとつひとつはそもそもそういうものなので、それが自ずからこのような表現を求めていたということなのかもしれません。最後にもう一度、ペトロが「そんな人は知らない」といってしまったところから聞き直してみましょう。

♪音楽

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