神の国の秩序

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聖書の言葉

それどころか、体の中でほかとりも弱く見える部分が、かえって必要なのです。

新約聖書 コリントの信徒への手紙一 12章22節

吉田実によるメッセージ

いつもラジオ「キリストへの時間」をお聞きくださっています皆さまは、「今回の実先生のお話は、なんかおかしいぞ。いつもより音質が悪いぞ」とお気づきかもしれません。実はわたくしは目の網膜の前に別の膜が張ってしまうという病気になってしまいまして、その膜を取り除く手術を受けなければなりません。それがちょうどラジオの録音日と重なってしまいまして、実は今、自宅で自分のレコーダーで録音をしているのです。ですので、お聞き苦しい点がありましたら何卒お許しください。お医者様に「病気の原因は何ですか」とお伺いいたしますと「加齢です」と教えてくださいました。もう若くはないということをいまさらながら思い知らされていますけれども、短くても1週間、長ければ3週間入院をしなければならないということで、はじめはいろんな方にご迷惑をおかけすることを心苦しく思っていました。けれども、今はあえて「迷惑をかける」とか「心苦しい」と思わないようにしています。牧師は仕事柄「困っている方をお助けしなければならない」と思いがちなのですけれども、困ったときに助けていただくということもまた、大事なことだということを示されたからです。

悪魔の誘惑に負けてしまった人間を罪と死の支配から救い出すために来てくださいました救い主なるイエス・キリストは、病の人を癒され、悪霊を追い出されました。それは「神の国」すなわち「神様のご支配」が今ここに来たということを告げ知らせる、目に見えるしるしでした。そして先週もお話いたしましたように、イエス様は「誰が一番偉いか」と議論をしていた弟子たちの真ん中に幼い子供を立たせて「わたしの名のためにこの子供を受け入れる者は、わたしを受け入れるのである。…あなたがた皆の中で最も小さい者こそ、最も偉い者である」とおっしゃいました。またご自身のことを「人の子は仕えられるためではなく仕えるために」来たとおっしゃいました。また新約聖書でたくさんの手紙を書きましたパウロという人は、教会をキリストを頭とする体にたとえてこう言いました。「体の中ではほかよりも弱く見える部分が、かえって必要なのです」。すなわち、「神の国の秩序」は「この世の秩序」とは違うのです。上下が逆転しているように見えるのです。なぜなら、悪魔の暗闇の力が支配するところでは常に、弱く小さな者が犠牲になるからです。例えば戦争や未曽有の大災害が起こるような時に、真っ先に犠牲になるのは自分で逃げることが出来ない老人や病人、幼い子供や障がい者だと思います。他人を蹴落として上に昇り詰めることが求められるような厳しい競争社会で犠牲になるのは、人を蹴落とせなかった心優しき弱い人たちです。同じ神様によって神様に似たものとして特別に造られた尊く大切な人間が、虐げられ、抑圧され、さげすまれ、犠牲になる。そんな姿を、イエス様ははらわたがよじれるほどの痛みをもって憐れみをもって見つめてくださいます。ですから、そのような悪魔の暗闇の支配が打ち砕かれて神様の愛と正義のご支配が実現するところでは、逆に弱く小さな人たちが大切にされるのです。ということは、そういう弱く小さな人々にはある意味で特別な賜物と役割が与えられているということになります。その人がいるその場所で、悪魔の暗闇の支配が打ち砕かれて、神様の愛と正義のご支配が実現する。そのためのカギを握る大切な役割と賜物が与えられた人たちなのです。上から目線の「弱者への配慮」ではなく、同じ神様に造られた人間として、その一人の人の命が尊ばれ大切にされるなら、それは一部の人たちではなくすべての人が大切にされることを意味します。人は皆弱さを持っており、また今強い人もいつかは弱くなるからです。

ラジオをお聞きの皆様の中にはもしかすると、今病の床に伏せっておられる方もいらっしゃるかもしれません。また、いろんな悩みや痛みを抱えておられる方々も少なくないのではないかと思います。もしかすると、社会にうまく適応できなくて、ずっとごご自宅におられる方もいらっしゃるかもしれません。色んな痛みや悲しみや悩みを抱えていらっしゃって、ご自身の弱さや小ささを思い知らされているような皆様に、今日は特に語り掛けたいと思います。私も、実は良くない右目が昨日内部出血をいたしまして、今右目の視力がほとんどありません。本当に弱っています。でも、そんな私たちの存在が大切にされるときに、私たちの身の回りの人々は大事なことを学ぶのです。そして暗闇の支配が打ち砕かれて、ここに神の国が来る、そのきっかけを作ることが出来るのです。そんな大切な出来事のカギを握る重要な存在として、弱い私たちは堂々と顔を上げて、遠慮しないで、身の回りの人々にこう言いましょう。「私は今困っています。どうぞ助けてください。」

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