ボンヘッファーの詩

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聖書の言葉

神はわたしたちの避けどころ、わたしたちの砦

苦難のとき、必ずそこにいまして助けてくださる。

旧約聖書 詩編 46編2節

宇野元によるメッセージ

ディートリヒ・ボンヘッファー。この人は、私たちにとって、「我が友」と呼べるような存在だと思います。医学博士を父親として生まれ、愛情豊かな、恵まれた環境の中で、幼い日を過ごしました。この家族は芸術一家でもあって、彼自身、音楽家になりたいと思った時期がありました。クラシック音楽がお好きな方は、ご存じかもしれません。クリストフ・ドホナーニという指揮者がおりますが、ボンヘッファーの甥に当たります。おじさんのボンへッファーがピアノを弾いて、その横で歌っている写真が残されています。

ボンヘッファーは、カール・バルトから大きな影響を受けている神学者でした。また、篤実な牧師でした。しかし、ナチス・ドイツの時代に抵抗運動に参加したため、刑務所に入れられてしまいます。そうして、戦争が終わるわずかひと月前に、悲劇的な死をとげています。連合軍が、首都ベルリンに迫り、ドイツの敗戦が近づく混乱のなか、彼はいくつかの収容所を引き回されます。解放への期待と不安の日々をすごしていました。そんな苦しく落ち着かない状況にあって、彼は手紙を書いて、離れている親しい人々に送りました。彼の生き方とともに、それらの言葉には、強く励ましてくれる力があります。

ある友人が、久しぶりに再会したときに、彼が通った道を親しく語ってくれました。そして思いがけず、ボンヘッファーの言葉がかたわらにあったと教えてくれました。その言葉にどれほど励まされ、今も支えられているか、そう打ち明けてくれました。友人は、困難な時をあとにしていました。「刑務所の中にいたボンヘッファーの言葉が、種類は違うけれども、同じような状況にあった自分の心に響いた。」そう言ってくれました。

心からうなずきながら、胸が熱くなりました。

いつも持ち歩いている、ボンヘッファーの言葉があります。不安な、寒い、冷たい刑務所の中で、クリスマスを迎えた。そうした折に、両親に向けて送った詩です。今の時を耐え、望みを持って前に進もうとする心が現れています。

こころみに訳したものを、読ませていただきます。

よき力に、誠実に、静かに囲まれ

守られて、思いにまさる仕方で支えられている。

だから、この日々を、あなた方と共に生きてゆこうと思います。

共に新しい年を迎えようと思います。

過去を思いだし、心が締め付けられそうになる。

困難な日々に、押し潰されそうになる。

主よ、はげしく揺れる心に

平安を与えてください、あなたが備えておられる平安を。

もしあなたが、重い杯

こぼれんばかりの苦い杯を差し出されるなら、

恐れずに、感謝の心を持ってお受けします。

あなたの優しい愛の手から。

もしあなたが、この世界、この世界の日の輝き

その喜びを、いまいちど贈り与えてくださるなら、

過ぎた時を胸に刻もうと思います。

人生はすべて、あなたのうちに置かれています。

いま、静けさが、深く、ひろく、私たちの周りにある。

世界に満ちる、美しい響きを聴かせてください。

大きくひろがる、目に見えない世界の音楽を。

あなたの子どもたちの、賛美の歌を。

よき力に、思いにまさる仕方で守られている。

苦難の中で、そう記しているのです。この詩は、最初にお読みした聖書の言葉と重なるものです。

神はわたしたちの避けどころ、わたしたちの砦

苦難のとき、必ずそこにいまして助けてくださる。

苦難の時の「はげしく揺れる心」は、避けどころの中に包まれる。砦の中にいるように、守られる。聖書は、イエス・キリストが私たちの砦であると語っています。私たちのために苦難を体験し、打ち勝ってくださった、この方のうちに守りがある。ボンヘッファーはこのことを信じていました。だから、いつも、苦しい時も、私は顧みの中にある、愛のうちに守られている、と伝えることができました。

私が奉仕しております教会は、阪神淡路大震災の時、まわりの住宅といっしょに全壊しています。当時の牧師が、きょうお読みしたボンヘッファーの言葉を記して、人々に紹介しています。苦難の中で、よき力に囲まれている。思いにまさる仕方で守られている。この事実を深く噛みしめておられたのだと思います。

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