キリスト教人物伝

ラジオ放送 キリストへの時間のトップページへ戻る

吉田謙によるメッセージ

今日は、目が見えず、耳が聞こえず、ものも言えない、三重苦に苦しんだヘレン・ケラーの家庭教師、アン・サリバンを紹介します。

今から130年ほど前のことです。アメリカの一軒の貧しい家で二人の子供が泣きじゃくっていました。何故でしょうか。その二人の子供の間に、彼らの母親が倒れていたのです。近所の人たちが駆けつけてきた時には、もうその母親は、息を引き取っていました。この二人の子供の父親は、仕事もせずに飲んだくれて、妻や子供を苦しめたあげくに、ついには家を出て行ってしまったそうです。そして苦労に苦労を重ねた母親は、とうとう過労と心痛のために突然台所で倒れ、二人の子供を残して死んでしまったのです。なんという悲惨な出来事でしょうか。残された二人の子供の名前は、アニーとジミーと言いました。

二人は「貧民院」に引き取られていきました。残念ながら弟のジミーは、5歳の時に、その「貧民院」の中で亡くなったそうです。残された姉のアニーは、文字通り一人ぼっちになってしまいました。しかも、このアニーは視力が極端に弱くて、不自由な体で一人で生きていかなければならなかった。どんなに不安だったことでしょう。けれども、幸いなことに、一人のお金持ちの善意で、彼女は盲学校で学ぶことが出来るようになりました。そして、そこでアニーは、ついに聖書の神様と出会った。その盲学校で、チャプレンが語る言葉を通して、彼女はイエス・キリストと出会ったのです。

このイエス・キリストとの出会いが彼女を大きく変えていきました。これまでの彼女は、「こんな自分は生きている価値がない」「誰にも愛されていない」と卑屈になって、人生を諦めて生きていました。ところが彼女は、イエス・キリストとの出会いを通して、「自分がどんなに大切な人間か」ということを知ったのです。神様がどんなに自分を愛し、自分にどんなに大きな力を与えていて下さるか、自分がどんなに必要とされて生まれてきた人間であるか、ということを、このイエス・キリストとの出会いは気づかせてくれたのです。その結果、彼女の心は新しく生まれ変わりました。そして、やがて彼女は、世界の歴史に残る偉大な生涯を送ることになります。

このアニーこそ、後に、見えない、聞こえない、話せない、という三つのハンディをかかえたヘレン・ケラーという少女の家庭教師となり、そのヘレンを世界的な教育者に、また社会福祉の指導者にまで育て上げた、あのアン・マンスフィールド・サリバンその人であります。

アン・サリバンは、初めてヘレン・ケラーに出会った時の印象を、このように語っています。「この子は可愛い。でも何かが足りない。まるで可愛い人形みたいだ。」見ることも、聞くことも、話すことも出来ないヘレンは、両親にとっては人形と同じだったんですね。「この子には、普通の子と同じように、考えたり、一緒に遊んだり、礼儀を守ったりする生き方は出来ない。だから、せめて可愛がって、何でも好きなことをさせてやりたい。」ヘレンの両親はそう考えていたのです。けれども、これはとんでもない誤りでありました。彼らは、ヘレンの本当の姿を見つめようとしなかった。人格ある人間として接するというよりも、まるでペットを可愛がるようにしてヘレンと過ごしていたのです。結局、彼らはヘレンを暗闇の中に封じ込めてしまったんですね。

けれども、アン・サリバンは、そういうヘレンを暗闇の中から強引に引きずり出しました。彼女はヘレンのことを神様が造られた尊い一人の人間として、人格のある一人の人間として見ていました。反対する両親と喧嘩しながらも、ヘレンと格闘し、体当たりで彼女と関わっていったのです。「そんな事どうせ出来っこないんだから許してやって下さい。」そう訴える両親に「いいえ、出来ます!」と宣言して、普通の子供と同じ厳しさで、いやそれ以上の愛情を込めて、ヘレンを教育していたったのです。

このアン・サリバンがヘレンに注いだ愛、ヘレンを見つめ続けた眼差し、これは、彼女が信じたイエス・キリストと無関係ではなかったと思います。これこそイエス・キリストの愛、イエス・キリストの眼差しであります。彼女もまた悲惨な境遇の中で、もうどうにも立ちゆくことの出来ない状況の中で、このイエス・キリストの十字架の愛に触れて、変えられた人だったんですね。真っ暗闇の中で、イエス・キリストという真の光を見出した人だったのです。その彼女が今度は、同じように暗闇の中で苦しむヘレン・ケラーの光となった。

イエス様を信じる時に、私たちは命の光を持つのです。そして、自分だけが明るい人生を歩むというのではなくて、共に歩む家族や共に生きる友人や職場の人々や地域の人々や、色んな人々に向かって、この命の光を差し出すことが出来るのです。

関連する番組