ギャラリーwithへようこそ①

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聖書の言葉

「わたしがお前を憐れんでやったように、お前も自分の仲間を憐れんでやるべきではなかったか。」

新約聖書 マタイによる福音書 18章33節

吉田実によるメッセージ

私が勤めさせていただいております神戸長田教会では一昨年の春から、建物の一角に小さなギャラリーをオープンいたしました。「ギャラリーwith」というのですけれども、佐野由美さんという若い女性画家のギャラリーなのです。佐野由美さんは1975年に、私どもの神戸長田教会の会員夫婦の間にお生まれになりました。お父様は二紀会に所属する画家でいらっしゃいましたので、由美さんも幼いころからお父様が開く絵画教室で絵を学ばれまして、やがて大阪芸大に進学なさいます。そしてその芸大在学中に、あの阪神淡路大震災でお家が全壊となりまして、大変なご苦労をなさったのですけれども、その大震災の体験の中で、ボランティアの働きに目が開かれて行きます。ご本人がおっしゃるには、それまではボランティアというと何となく「偽善的」なイメージを抱いていて避けていたそうですけれども、「上から目線でかわいそうな人たちのために何かしてあげる」ということがボランティアなのではないということに気付かれまして、絵画制作をすると同時に、ボランティア活動にも導かれて行きます。そして大学卒業後、ネパールのパタン市のスラム街にありますラリット福祉小学校という学校で、ボランティアの美術教師をする決心をするのです。1年間という短い間だったのですけれども、彼女は驚くべき速さで言葉を覚えまして、子どもたちと一緒になって美術の授業に取り組み、子どもたちの世話をする傍ら、スラム街に生きる人々の生き生きとした姿を描き続けました。私自身も牧師になる前は中学校の美術の教師をしていまして、一時は画家を目指したこともありますので、彼女の行った仕事が量的にも質的にも尋常ではないということがよくわかります。一人の作家が一生かけて制作するくらいの作品をたった1年で、爆発するような勢いで描いたという印象です。そしてあと1週間で帰国するという時に、理不尽な交通事故に巻き込まれて、天に召されたのです。まだ23歳でした。「若き女性美術作家の生涯」というドキュメンタリー映画にもなりました、そんな佐野由美さんの作品を展示するギャラリーを、教会の中にオープンしたのです。

佐野由美さんはたくさんの作品を残しただけではなく、ネパールの子どもたち一人一人を深く愛して共に生きました。それだけに、ネパールという国の貧困や差別の現実にもろに直面し、御自身も深く傷つきながら、自分の力ではどうにもならない巨大な壁に、それでもあきらめずに向き合い続けたと思います。特に彼女が心を痛めていたのは「カースト制」という身分制度によるどうしようもない差別と貧困の現実です。人が生まれたときから定められた身分制度の枠組み入れられてそれを変えることが出来ないという理不尽な現実に、彼女は深く悩んだと思います。そして何よりも、そういう差別と自分自身が決して無縁なのではなくて、他でもない自分自身の心の中にもそのような差別意識がある事に気付いて行く中で、彼女の苦悩は良い意味で深まって行ったように思います。彼女は日記の中でこう書いています。「カーストが良いか悪いか。お金があるかないか。どんな仕事をしているか。人間性に関係のないことばかり。2年前ここに来た時私は何も知らなくて、ただただこの国のエネルギーに魅せられた。2年前子供だった私は、本当にどの人も同じに見えて、同じように話しかけていた。今、ネパール語が出来るようになり、人の階級が分かるようになり、言葉を変える私がいる。私はここに何をしにきたの、バカ。」そしてこうも書いています。「自分が住む世界から差別はおかしいことだ、差別するのが恥ずかしいことなのだということを思わなければならない。…少し時間がかかっても、すべての人の心の中から。私の心の中から。」

イエス・キリストのたとえ話に「仲間を赦さない家来のたとえ」という話があります。主人から莫大な借金を帳消しにしてもらったにもかかわらず、ほんのわずかな借金を期限までに返せなかった仲間を赦さなかった家来に対して、主人は怒って彼を牢に入れた」という物語です。ほんのわずかな借金でも、それを返さないということは悪いことに違いありません。でも、自分自身が莫大な借金を赦してもらった者であるということを自覚する時に、私も人を赦すという生き方が始まる。赦し、赦されながら共に生きるという生き方が始まるのです。自分のことを棚に上げて上から人を裁いたり、あるいは上から目線で人を助けてあげようとしたりする時に、そのこと自体は善であっても、その行いの全体は偽りとなるのだと思います。佐野由美さんの生き方は、どうしようもない差別の現実と共にそのような偽善とも戦いながら、真実な人と人との交わりを形づくろうとするものであったと思います。そんな佐野由美さんの歩みの中から生み出された、愛にあふれる作品の数々に出会うことが出来ますGallery withに、是非お越しください。

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