アドベントって何?

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聖書の言葉

そのとき、エルサレムにシメオンという人がいた。この人は正しい人で信仰があつく、イスラエルの慰められるのを待ち望み、聖霊が彼にとどまっていた。そして、主が遣わすメシアに会うまでは決して死なない、とのお告げを聖霊から受けていた。シメオンが“霊”に導かれて神殿の境内に入って来たとき、両親は、幼子のために律法の規定どおりにいけにえを献げようとして、イエスを連れて来た。シメオンは幼子を腕に抱き、神をたたえて言った。

「主よ、今こそあなたは、お言葉どおり/この僕を安らかに去らせてくださいます。わたしはこの目であなたの救いを見たからです。

新約聖書 ルカによる福音書 2章25~30節

田村英典によるメッセージ

お早うございます。今年は、11月27日の日曜日からアドベント、日本語で待降節と呼ばれる期間に入っています。皆様もアドベントという言葉を聞かれたことがあると思いますが、これはどういうものでしょうか。

アドベントという言葉は、ラテン語から来ています。来臨とか到来という意味で、天地を創られたまことの神が旧約聖書の時代からずっとイスラエルを通して約束しておられたメシア、つまり待望の全世界の救い主キリストが世に来られることを意味します。

それが、神の御子イエスの誕生を祝うクリスマスを待ち望み、クリスマスに備えるという意味で使われるようになりました。5世紀頃には、クリスマスの4回前の日曜日からクリスマス前日までを、アドベントとして守る習慣が定着したようです。

先程お読みしましたルカ福音書の2:25以降には、シメオンという人のことが伝えられています。この人は、「イスラエルの慰められるのを待ち望」んでいたとあります。要するに、神様が遣わされる救い主の来臨をずっと待ち望んでいました。

また、先程は読みませんでしたが、ルカ福音書2:36以降には、アンナという女性が幼子イエスにお会いして神を賛美し、「エルサレムの救いを待ち望んでいる人々皆に幼子のことを話した」とあります。この二人に代表されますように、全世界の救い主の来臨を熱心に待ち望む人々が、ユダヤ人の間では絶えなかったことが分ります。

こういう聖書の記述を読みますと、のちの教会の中に、イエス・キリストの誕生を祝うクリスマスを心から待ち望み、それに備えるための習慣が生れてきたことは、よく理解できます。良い習慣だと思います。

それで、アドベントの期間ですが、ヨーロッパでは色々なことが行われてきました。例えば、アドベントリースとかアドベントクランツと呼ばれる、常緑樹の枝を円い形にまとめたものの上に、4本のローソクを立て、アドベントの期間中、日曜日毎に灯すローソクの数を増やしていく習慣があります。これは今もよく見られます。

今ではどれ位守られているのか分りませんが、この期間には結婚式をしないとか、断食の時を持つという習慣もあったそうです。

また、子供たちの楽しみのために、アドベントカレンダーという可愛いカレンダーを作る習慣もあります。

ドイツでは、アドベントの日曜日毎に、シュトレンと呼ばれる菓子パンを薄く切って食べるという楽しい習慣もあるそうです。シュトレンの形と、お砂糖でおおわれた外見は、幼子の主イエス・キリストが、純白のマントで包まれていたことに由来するなどと言われています。

4、5年前だったと思います。キリスト教のある冊子に一人の牧師の書いたその内容が、心に残っています。留学中だったか旅行中だったかは忘れましたが、彼が滞在したヨーロッパのある地域では、アドベントの時期に鉢植えのクリスマスの愛らしい花が、各家の出窓の外に置かれるそうです。

しかし、何故窓の外なのでしょう。家の中に飾るのが普通ではないのでしょうか。そんな疑問を人々に向けたところ、「窓の外に花を置くのは、イエス様を我が家にお迎えする徴なのです」という返事が帰ってきました。この人はいたく感心したと書いていました。家族皆で、家の中へ、心から神の御子、救い主イエス・キリストをお迎えするという、その敬虔で温かい優しい心が、私も素晴らしいと思いました。

以上、申し上げたようなアドベントの習慣を、私たちも守らなければならないというのではありません。けれども、より敬虔な思いで、そして神様の愛に感謝し喜ぶ気持で、その期間を家族や友人と過し、クリスマスを熱い思いで「待ち望む」その姿勢は、何と尊いかと思います。キリスト教の伝統の内に見られるこうした姿勢に、今日の私たちも是非見習いたいと思います。

そしてもう一つ。近くの山の頂を見つめつつ、そのさらに向うにあるもっと雄大な山を目指して進むように、毎年、クリスマスを待ち望み、それに備えることを通して、もっと先の世の終りに救い主イエス・キリストがもう一度来られ、罪深いことや争いや混乱の絶えない今の世界を終らせ、神様の支配と究極の平和を確立されるその時を仰ぎ、しっかり私たちも備える!アドベントにはそんな大切な意味もあります。そんなことも心に留め、残り1週間となった今年のアドベントの時を過ごしたいと思います。

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