大きな翼～《愛の世界》Migiwaより～

先週に引き続き、シンガー･ソングライターのMigiwaさんのアルバム『愛の世界』から、一曲、紹介いたします。

今回、紹介するのは、「大きな翼」という曲です。とても短い歌詞が繰り返し歌われます。

「恐れずに目を上げよ大きな翼であなたをおおう。暗闇もほろびもゆだね。ここに身を避けよ」

その後に同じメロディーで、英語でも歌われます。日本語と英語で、交互に、ゆっくりと、魂に染み込ませるように、繰り返し歌われます。

この日本語の歌詞は、神様から呼びかけるように語られている言葉です。「恐れずに、目を上げよ」神様が「大きな翼で」覆ってくださる。だから、うつむいていなくていい。あなたを覆ってくださる主を見上げよ。「暗闇も」「ほろびも」どんなに恐怖を感じさせる困難も、主が翼で覆ってくださるならば、絶対に手出しできない。主の翼の下に避難して、すべてをお任せしなさい。そんな意味の歌詞です。

この日本語の歌詞に応答するように、同じメロディーで英語の歌詞が続きます。実は、英語の歌詞は、最初に読んだ聖書の言葉を、ほぼそのまま歌っています。

「神よ、わたしを憐れんでください。わたしの魂はあなたを避けどころとし災いの過ぎ去るまであなたの翼の陰を避けどころとします。」

日本語の歌詞は、神様から私たちに呼びかけるように歌われていました。それに対して、英語の歌詞は、私たちから神様に訴えかけるようにして歌われます。ちょうど、日本語で語られた神様からの言葉に応答するようにして、「神よ、わたしを憐れんでください」と叫び返します。あなたが避難しなさいと言われた、あなたの翼の陰に、わたしは避難します。今、わたしの人生に起こっている、とても難しい問題、これが過ぎ去るまで、あなたの翼の陰にかくまってください。そんな、私たちの側からの応答が、歌われています。

聖書の言葉には、私たちに教訓を教えるような言葉もありますが、私たちのほうから、神様に向けて語る言葉も記されています。つまり、祈りの言葉です。

私たちは、人生の中で、とても耐え難いような経験をすると、言葉を失ってしまいます。神様に祈る事さえも、できなくなってしまいます。けれども、そんな時のための言葉が、聖書にはきちんと記されています。自分の言葉では、とても祈ることができなくなっていたとしても、聖書の言葉が、わたしの思いを代弁して祈ってくれます。私が思いつく以上に、私の思いを大胆に表現してくれることさえあります。今日、読みました詩編５７編も、そんな祈りの言葉です。

「憐れんでください。神よ、わたしを憐れんでください。わたしの魂はあなたを避けどころとし、災いの過ぎ去るまであなたの翼の陰を避けどころとします。」

東北の被災地を訪問したとき、仮設住宅にお住まいの人のためのミニ･コンサートで、Migiwaさんが歌うのを、たまたま聴く機会がありました。歌もすばらしかったのですが、曲と曲の間に話すMigiwaさんの話し方がとても印象的でした。ありきたりの言葉ではなく、集まった人たちの気持ちを考えながら、一言一言、言葉を選んで語られていました。

この曲には、そんなMigiwaさんの、被災地の人たちに対する思いが込められているように感じます。神様の大きな翼の陰こそが、唯一つ、私たちが心安らかになることができる場所であることを伝える。「ここに身を避けよ」という神様からの呼びかけを伝える、そんな歌であるように思います。

聖書の言葉、そして聖書の中にある祈りの言葉を与えてくださっているのは、神様です。つまり、神様ご自身が、この祈りの言葉によって、私の翼の陰に、身を寄せて、難を逃れなさいと、言って下さっているのです。

私たちは、どうしようもない不安、どうしようもない悲しみ、心が落ち込んだり、恐怖で動悸がしたりする中で、苦しんでいることがあります。そんなとき、理屈なしに「神よ、憐れんでください」と叫ぶことができます。自分で解決方法を考え出し、うまく立ちまわることができなくなっていることもあります。人間関係の問題などでは、自分がどんなにうまく対処しようとしても、ガッカリする反応が返って来ることもあります。自分にはどうにもならないことが、世の中にはたくさんあります。「あなたの翼の陰」に避難させてください。この問題を過ぎ去らせてください。この詩編の言葉に重ねながら、私たちは自分の祈りとして、祈ることができます。祈ることで、実際に、主の翼の陰に避難するのです。

もう一度、Migiwaさんの歌を引用します。「恐れずに目を上げよ大きな翼であなたをおおう。暗闇もほろびもゆだね。ここに身を避けよ」