『沈黙の春』にならないためにも

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聖書の言葉

神はお造りになったすべてのものをご覧になった。見よ、それは極めて良かった。

旧約聖書 創世記 1章31節

弓矢健児によるメッセージ

2011年に、わたしの教会では、「環境問題と私たちの生活―キリスト教からの視点―」というテーマで伝道集会を行いました。最近は環境問題に対する社会的関心も高まっています。この放送を聞いておられるみなさんの中にも、環境問題に関心のある方がいらっしゃるのではないでしょうか。けれども、そのこととキリスト教信仰とは一体どういう関係があるのか。そういう疑問を抱かれる方もおられると思います。

クリスチャンではないある方に伝道集会の案内をお渡ししたら、「教会でそういうこともやるんですね」と言われました。その方は、環境問題のような社会問題と、キリスト教とは別のものだと思っておられたのです。宗教は人間の心の問題、魂の問題を扱うもので、社会問題とは関係がないと思っておられました。確かに聖書は、人間の心の問題、救いの問題を扱います。しかし、そのことと、環境問題、社会問題は決して無関係ではありません。なぜならば、わたしたち人間を造られた神は、この世界を造られたお方でもあるからです。

旧約聖書の創世記を見ると、神がこの世界を創造なさったということが記されています。この世界は決して偶然に生まれたのではありません。しかし、神はただ創造されただけではありません。先ほど読みました創世記1章31節にあるように、神が創造された世界は、「極めて良かった」のです。そして神は、その極めて良かった世界を正しく管理し、耕してゆく責任を人間にお与えになりました。創世記2章15節を見ると、「人がそこを耕し守るようにされた」とあります。ですから人間はこの世界に責任があります。キリスト教信仰は、この世界の現実や、この世界の未来に対して深い責任があるのです。

しかし問題は、人間がそのような責任を正しく果たすことができなくなってしまった、という点にあります。聖書はその原因を人間の罪にあると教えています。人間は罪によって堕落したため、この世界を守り耕すことができなくなってしまいました。それどころか、人間は自分たちの欲望を満足させるために、この世界を壊してきました。今も壊し続けています。

あなたはレイチェル・カーソンという方をご存じでしょうか。彼女はアメリカの海洋生物学者で作家でもある方です。1962年に『沈黙の春』という本を出して、環境破壊について社会に警告を与えました。彼女は、アメリカやカナダの河川や湖で多発した、水鳥や魚の大量死の原因を調べていました。その結果、除草剤や殺虫剤として一般的に用いられていた合成化学物質による環境汚染があることを突き止めたのです。彼女は、もしこのまま環境汚染が進んでいくならば、将来わたしたちの世界は、春が来ても、小鳥たちの鳴き声さえ聞かれない死の世界、すなわち「沈黙の春」になってしまう、と警告したのです。

しかし、彼女の警告から約50年経ちましたが、この問題は決して解決してはいません。それどころか現代では、様々な化学物質による環境ホルモンによって、人間を含めた多くの生物に、生殖異常やガンが多発していると報告されています。まさに「沈黙の春」は、静かに沈黙の内に進行しています。

また、合成化学物質による環境汚染と同様に深刻な問題が、放射性物質による環境汚染です。ご存知のように1986年にチェルノブイリ原子力発電所が大爆発を起こし、推定10トンもの放射性物質が大気中に放出されました。今なお、原発から半径30km以内の地域での居住が禁止されています。日本でも昨年、福島原発の事故によって多くの場所が汚染されました。今後、人々の健康にも影響が懸念されます。本当にこの世界は、この大地は今傷ついています。

人間の罪は、わたしたちを堕落させ、わたしたちの心に闇をもたらしました。しかし、人間の罪はこの世界をも歪め、この世にも闇をもたらしたのです。わたしたちの心には、また、わたしたちの世界には、人間の罪が生み出した多くの闇があります。

けれども神は、この世の闇に光を照らすために、世の光としてイエス・キリストは遣わしてくださいました。そして、イエス・キリストを通して、この世界を再び、「極めて良かった」と言えるように回復してくださいます。

しかし聖書はまた、キリストを信じる者も世の光となる、と教えています。つまり、キリストを信じるということは、環境問題をはじめ、この世界の様々な問題とも向き合い、この世界の回復のために仕えて行く人になる、ということです。だからこそ、キリスト教信仰は環境問題や社会問題とも深い関係があるのです。

キリスト教信仰は決して社会の問題に無関心でも、目を閉ざしているのでもありません。それどころか、あなたを世の光として世界に遣わす信仰です。「沈黙の春」にならないために、あなたもこの世界に希望の光を照らす人になってください。

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