愛されているあなたへ

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聖書の言葉

わたしの目にあなたは価高く、貴く

わたしはあなたを愛し

あなたの身代わりとして人を与え

国々をあなたの魂の代わりとする。

恐れるな、わたしはあなたと共にいる。

旧約聖書 イザヤ書 43章4~5節

吉田実によるメッセージ

今日ご紹介する作品は、2004年に公開された、是枝裕和監督の作品『誰も知らない』という映画です。ネグレクト(育児放棄)の問題を取り扱った作品です。

とある2DKのアパートにスーツケースを抱えた母親けい子と長男の明が引っ越してきます。大家さんには、主人は長期出張中で息子と二人暮らしだと説明をするのですけれども、実は明にはそれぞれ父親が違う一人の弟と二人の妹がいるのです。スーツケースの中には、じつは次男の茂と次女のゆきが密かに入っていて、外で待っていた長女の京子も夜にこっそりと部屋に入り、彼らの生活が始まります。

母親は子どもがたくさんいると部屋を借りることができないので、長男と二人暮らしであると嘘をついていたのです。そして長男以外の子どもたちには家の外に出ないようにと命じます。子どもたちは学校に行きたいのですが、母親は「行かなくても良い」と言います。そもそも子どもたちは4人とも出生届けが出されていませんので、行政も彼らの存在に気づかないのです。

母親はお金をいくらか置いてすぐにボーイフレンドのところに行ってしまいます。子どもたちはそんな母親を待ちながら、長男の明を中心に一緒にその2DKの部屋の中で暮らすのですけれども、やがて母親は時々現金書留でお金を送って来るだけで、全く家に帰ってこなくなります。そして子どもたちだけの、誰も知らない生活が始まるのです。

やがて生活費も底をつき、電気、ガス、水道も料金滞納で止められてしまい、近所の公園で水を汲み、コンビニの賞味期限を過ぎた食品をもらいながら、なんとか力をあわせて生きてゆくのですけれども、次第に子どもたちの体は汚れて異臭を放つようになり、家の中はゴミ屋敷のようになっていきます。

それでも、警察や福祉に相談すれば4人バラバラになってしまうということを彼らは知っていましたので、なんとか自分たちだけで生きて行こうとするのですけれども、そんな中、明が留守をしている間に、末の妹のゆきが高いところにあるものを取ろうとして椅子から転落し、打ちどころが悪くて動かなくなってしまうのです。

明が家に帰ると、動かなくなったゆきの前で、京子と茂が呆然と座り込んでいます。そして京子が言います。「ゆき、椅子から落ちて、目を覚まさない。」

明は郵便書留の住所をたよりに何とか母親に電話をして連絡を取ろうとしますが、母親が出る前にお金が切れてしまいます。そして明は生まれて初めて薬局で薬を万引きし、必死でゆきの手あてをしますが、翌朝目が覚めたときに、ゆきはもう息絶えていたのです。

明は、ただ一人友達になってくれた不登校の女子高生に手伝ってもらって、ゆきの亡骸を大好きだったアポロチョコレートと一緒にスーツケースに入れて、モノレールに乗り、羽田空港の近くの空き地に運んで埋めます。ゆきは飛行機が大好きだったからです。

ゆきを埋めたあと、泥だらけになってモノレールに乗って、黙って帰ってくる明と女子高生の姿を映しながら、映画の主題歌「宝石」という曲が流れます。その歌詞の中で「誰も寄せ付けられない、異臭を放った宝石」という歌詞があって、その歌を聴きながら、私は涙があふれて仕方がありませんでした。そして私がショックだったのは、この映画が事実に基づいて作られたということ。そして事実は映画よりもはるかに悲惨だったということです。

末の妹は実際に亡くなったのですけれども、それは事故ではありませんでした。実際の彼らの家は長男の悪友たちのたまり場になってしまって、そのいじめの結果、末の妹は亡くなったのだそうです。人間は、愛されなければおかしくなってしまうのです。なぜなら、人間は愛し愛されるように初めから造られたからです。愛されることを知らない人が、また近くにいる人を愛せない。そんな愛の飢餓状態が、密かにこの国を被っているのかもしれません。

マザーテレサという人は、「この世界は食べ物による飢餓よりも、愛に対する飢餓の方が大きい」と言いました。

この世界を愛をもって造ってくださって、特別な愛をもって人間を造ってくださった神様は、そんな様子を深く悲しまれ、はらわたが痛む程に憐れんでくださっています。そして心を痛めつつ、語りかけてくださっています。

「あなたは高価で尊い。私はあなたを愛している。独り子の命を引き換えにする程、私はあなたを愛している。私のもとに帰ってきなさい」と招いてくださっているのです。

ラジオの前の皆様に、ぜひこの神様の招きの言葉を聞いていただきたいのです。そして神様に愛されている私として、私も隣の人を愛する。そのようにして愛が連鎖して広がってゆく、その出発点となっていただきたいのです。

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