自閉症児の豊かな世界 その4

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聖書の言葉

あなたはわたしの嘆きを踊りに変え 粗布を脱がせ、喜びを帯としてくださいました。

旧約聖書 詩編 30編12節

吉田実によるメッセージ

我が家の長男の献(ささぐ)は重度の知的障害を伴う自閉症という障害を持っています。そんな息子が与えられましたことで、私たちの家族はいろんな苦労もありますけれども、またいろんな大切な事を教えられています。そんな彼を通して教えられたことを中心にお話しさせていただいております。

今朝お話させていただきたいと思います事は、私たちにとりまして本当の幸せとは何か、ということです。私は正直に申しますと、息子が生まれますときに、「障害だけはないように、五体満足に生まれて欲しい」と願っていました。障害児が生まれたら、私の人生はもう大変なことになるに違いないと恐れていたのです。けれども、与えられました息子は重度の知的障害を伴う自閉症という障害を持った子供でした。何度も申し上げましたように、自閉症とはコミュニケーションの障害ですから、意思のやり取りをすることがとても難しいのです。こちらの意思もなかなか彼に伝わりませんし、彼の意思も分かりづらいのです。彼が泣いていても、お腹が痛いのか、お腹がすいているのか、寂しいのか、悔しいのか、ほとんど分からないのです。また遊ぶ時も一緒にやりとりをして遊ぶということが難しくて、彼はひたすら鉛筆をならべたり、針金を曲げたり、ぴょんぴょんジャンプしたりするだけなのです。

最初の子は女の子でしたので、息子が与えられたときには、そのうち一緒にキャッチボールをしたり、サッカーをしたり、魚釣りをしたりとか、いろんな事を考えました。けれども、そういうことは今でも何一つ出来ませんし、これからも難しいと思います。そういう意味では、私が初めに息子に対して思い描いていたことは何も実現しませんでした。けれども、では私は、私たち家族は、今不幸なのかと申しますと全然そんなことはなくて、強がりでもなんでもなく、私たちはとても幸せです。色んな苦労はありますけれども、私たちはとても幸せなのです。彼を通してつくづく教えられましたことは、物事が自分の思い通りになることが幸せなのではないということです。私たちはとかく、自分の思い通りになること、自己実現することが幸せで、そうできないことは不幸だと思いがちなのではないかと思います。そして様々な痛みや悲しみを経験することは不幸で、それが解決することが幸せなのだと思いがちなのだと思います。もちろん、何かに向かって一生懸命努力して、それを成し遂げるということは素晴らしいことですし、治る病気なら治った方がよいに決まっていますし、解決できる問題は解決すべきです。けれども、自分の思い通りになることが幸せで、思い通りにならないことは不幸だとしたら、私たちは多くの場合、幸せになれないのだと思います。自分の思い通りになることは少ないからです。

けれども、息子を通して教えられましたことは、たとえ自分の思い通りにいかなくても、たとえ思ってもみなかった悲しくつらいことが起こったとしても、それが偶然ではなくて、私たちに命を与え、ご自身の独り子の命にかけて愛してくださっている神様の御手の中で起こっていることであるなら、そこにも必ず神様の良いご計画があり、そこから始まることがある。神様の良いご計画が、そこにも必ずあると信じることです。そう信じて歩むときに、実際に、時が来ればその悲しくつらい出来事の中からも、素晴らしいことが始まってゆく。このことを、私たちは今教えられています。実際、彼を通して出会うことが出来た素敵な仲間たちの輪が広がっています。それぞれに苦労があり、沢山の涙を流した人たちが、今一緒に集まって、一緒に祈りながら、一緒に歌ったり踊ったり、美味しいものを食べたりしながら、沢山笑って笑って、気がつけばみんなとても幸せそうなのです。本当の幸せは、私の思い通りに物事が進むことではなくて、神様のお心の通りに物事が進むことなのだと思います。この小さな私を神様が愛してくださっていて、この私を通して神様の素晴らしいご計画が進んで行くということを知る事、そしてそのために喜んで神様に従ってゆくこと。本当の幸せはそのような歩みの中にこそあるのではないでしょうか。

このことを知るときに私たちは、思い通りにならない自分の人生を恨んだり、過ぎたことをいつまでもくよくよと後悔したりすることから解放されて、もっと大きな世界とつながることが出来ます。神様の素晴らしいご計画の実現のために仕えるという、光栄ある大きな喜びの中に生かされるようになります。そして気がつけば、いつの間にか嘆きは踊りに変わり、その喜びの踊りの輪が、神様を中心に広がってゆく。悲しみも痛みも、やがてはこの喜びの踊りのステージとなる。私たちは息子やそのお友達や、そのお母様方との交わりを通して、このことを今、学び続けています。

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