パパ、パパ、抱っこして

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聖書の言葉

あなたがたは皆、信仰により、キリスト・イエスに結ばれて神の子なのです。

新約聖書 ガラテヤの信徒への手紙 3章26節

大西良嗣によるメッセージ

我が家には、3人の子供がいます。2番目の子が生まれるとき、妻は実家に帰って出産をしました。いわゆる「里帰り出産」です。一番上の子は、妻が入院するまでは母親と一緒に過ごすことができたわけですが、入院をしてからはおじいちゃん、おばあちゃんと過ごすことになりました。大好きなおじいちゃん、おばあちゃんと一緒ですから、何も心配することはないのですが、それでも心細い思いをしていたことでしょう。

いよいよ生まれたという連絡があって、私は新幹線で妻の実家へと向かいました。生まれたばかりの2番目の子を見て、ビデオ・カメラで撮影などをしました。しかし、仕事の都合上、何日も妻の実家に滞在しているわけにはいきません。その晩は、上の子と一緒に過ごすことができましたが、翌日には家に戻らなければなりませんでした。まだ幼かった上の子は、私が妻の実家を離れようとするとき、おばあちゃんの腕に抱かれながら、「パパ、パパ、抱っこして」と言って泣きました。私は、その声を振り切って、家に帰らなければならなかったのですが、駅へ向かう道すがら、思わず涙がこぼれている自分に気がつきました。

何のことはない、また何日かすれば、会うことができます。妻が退院してくるのも、そんなに先の話ではありません。それなのに、子供が「パパ、パパ、抱っこして」と泣く声に、涙が流れてしまったのです。

親というものは、こういうものなのでしょうか?そんなに大変なことではないと、理性的には理解していても、子供が不安から泣き声を上げると、愛しくて涙が出てしまうのでしょうか?

子供を虐待してしまう親が増えていることを、テレビや新聞が伝えています。子供にとってはあまりにも悲劇的なことですが、親は決して最初から虐待をしようと思っているわけではありません。

朝日新書の『ルポ児童虐待』という本を読みました。この本には、いくつかの虐待の事例が載っています。虐待の報道を聞くと、鬼のような親を想像してしまいますが、実際には、私たちが想像するような鬼親の姿はありません。むしろ、必死になって、子育てに取り組んできたけれど、行き詰まり、頼るべきところもなく、どうしたらよいのか分からなくて、虐待へと進んでしまうケースがあります。どんな親でも、子供に対して確かに愛情を持っていることを、この本から教えられました。

私は、自分自身が親になるまで、親の愛情というものを理解することができていませんでした。頭では、親の愛というものを理解していたつもりですし、自分自身が親から受けた愛情にも感謝していました。けれども、「パパ、パパ、抱っこして」と泣く子供の声に、自分自身が涙を流すまで、親というものがそれほどまでに子に対して、思いを向けているのだということに気がつきませんでした。

ガラテヤの信徒への手紙3章26節には、「あなたがたは皆、信仰により、キリストに結ばれて神の子なのです。」と記されています。キリストを信じて、キリストを救い主として受け入れた人は、神様の子供とされているのです。私たちは、キリストと共に「アッバ、父よ」「パパ、パパ」「お父さん」と叫ぶことが、当然のこととして許される、神様の子供とされているのです。

私たちが子供とされているのですから、神様は「親」になってくださっているのです。私のような親でさえ、子供が不安の中で「パパ、パパ、抱っこして」と泣く声に、涙を流します。愛そのものを造られた神様は、どれほどの愛情を私たちに対して抱いてくださっているでしょうか。

少なくとも、私たちが苦しくて、もがいていて、泣き叫んで助けを求めているならば、思わず涙を流してくださる方であるはずです。悲しみの中で打ちひしがれているならば、私たちに寄り添い、涙をいっぱいにためて見つめていてくれているはずです。たとえ、神様の目から見たならば、大した問題ではなく、ほんのわずかなことで解決するような状況であったとしても、泣きながら父を求める私たちの声に、思わず涙を流してくださるはずです。

そして、本当に助けを必要とするときには、命を懸けてでも、助けようとするはずです。それが、親というものでしょう。そして、実際、私たちが本当に助けを必要としているところに、助けを与えてくださいました。イエス・キリストが十字架で死んでくださったのは、私たちが本当に必要としている助けを与えるためです。これ以上の愛はありません。主なる神様は、確かに、これ以上にない親の愛を私たちに示してくださっています。

イエス・キリストを救い主と受け入れて、「神の子」となってください。人間の親よりもはるかに深く、子供を愛してくださる神様の、子供になってください。これ以上の喜びは他にないからです。

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