映画と信仰

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聖書の言葉

あなたがたを襲った試練で、人間として耐えられないようなものはなかったはずです。神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えていてくださいます。

新約聖書 コリントの信徒への手紙一 10章13節

赤石純也によるメッセージ

小津安二郎という映画監督がいます。『東京物語』という映画を撮っていますが、その『東京物語』の中で笠智衆が原節子にこんなことを言ってます。

(セリフ)

そんな「親切」で「いい人」の原節子が別の場面ではこんな会話をしています。

(セリフ)

どんなに親切でいい人であってもこの世の中で幸せかというとそうではない、「世の中なんてずいぶんつまらない」「やあねえ、世の中って」「そう、やなことばっかり」。名作といわれる『東京物語』ですけれども、その底には「世の中なんてやなことばっかり」という気持ちが流れているのですね。東京物語は小津が撮った最後の白黒映画ですが、その次の最初のカラー映画『彼岸花』の中では、こんな夫婦喧嘩の場面があります。

(セリフ)

お互いの矛盾を責め合う、こんな夫婦喧嘩の中で「矛盾がないのは神さまだけだ」という言葉が飛び出します。人間は矛盾だらけだ、人生は矛盾だらけだ。その矛盾を責め合って喧嘩になってしまっている。世の中なんてやなことばっかり、人間は矛盾だらけ、という小津の感覚はやっぱり流れています。これだけを言えばいいようなものですが、なぜかそこに「神さまだけは矛盾がない」という言葉が飛び出して来るのが小津映画なのです。

『お茶漬の味』という映画の中で鶴田浩二がラーメン屋でラーメンを食べています。そのとき鶴田浩二がこんなことを言います。

(セリフ)

「大きい神さまの目から見りゃあどっちだっておんなじなんですよ」、こんなことを言ってラーメンを啜り続けています。ラーメン屋でまで小津は「大きい神さま」を出すのですね。

『晩春』では原節子に向かって、見ている私たちには聞こえないのですけれども、何かショッキングなことを月丘夢路が内緒話しています。

(セリフ)

「すべては摂理よ、神さまの」、若い女友達同士の会話でさえ、小津はこういう言葉を言わせる。この声からもわかるように、何かあきらめて「すべては摂理」だといっているのではないのです。こんなに明るい声で、すべては神の摂理よ、すべては神さまが計画通りに運んでいらっしゃるのよ、こう言ってそれを肯定しているのですね。信頼しているのです。これが小津安二郎という監督の明るさなのです。暗い映画もいくつも作っている小津です。いやな世の中や人間の矛盾を知り尽くしている小津ですけれども、小津には明るく肯定できるものがあったのです。神さまがすべて計画通りに運んでくださっている、そういう信頼があったのですね。だからラーメン屋の中でも大きい神さまのことを考えている。夫婦喧嘩で矛盾を責め合うときでも、神さまには矛盾がないという言葉を入れずにはいられないのです。

私たちはいろいろな複雑な問題の中で、それに押しつぶされてしまいそうになることもありますが、「大きい神さまの目から見ればどうなのか」、そんなふうに小津は私たちの視野を開放してくれる。心を開放してくれます。神さまだけは矛盾がない。その神さまがすべてを運んでくださっている。これが小津安二郎の明るさの秘密なのですね。だから小津は若い月丘夢路にこんなに明るく、毅然として、肯定的に言わせたかったのです。

(セリフ)

「世の中なんてずいぶんつまらない」「やなことばっかり」そういう毎日があると思います。もしあなたの生活がそんな生活だったとしても、神さまに目を向けてみてください。素晴らしい解放を味わうことができると思います。どうぞお近くの教会にいらしてみてください。そこには、明るく、毅然とした、肯定的な生き方があなたを待っています。

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