素晴らしき哉、人生

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聖書の言葉

神を愛する者たち、つまり、御計画に従って召された者たちには、万事が益となるように共に働くということを、わたしたちは知っています。

新約聖書 ローマの信徒への手紙 8章28節

吉田謙によるメッセージ

今日は「素晴らしき哉、人生」という題名の映画を紹介させていただきます。1946年に制作された随分と昔のアメリカ映画ですけれども、とってもいい映画です。

ジョージという主人公が橋の上に立って身投げしようとしていました。その時に天国で神様が一人の天使を呼んで、「川に身投げして死のうとしている男がいるから、今すぐ助けに行くように」と命じました。しかし、この天使はどうも要領が悪くて、結局、しくじってしまいます。勢い余って自分の方が川に落っこちてしまうのです。逆に死のうとしていたジョージに助けられるはめになってしまいました。けれども、そのことが幸いして、この人は天使と語り合うことになります。

「どうして、あなたは死のうとしたのですか」こう天使に尋ねられると、彼はその理由を話し始めました。彼は不動産屋だったんですね。銀行に8000ドルのお金を預けようとした時に、ちょっと目を離した隙に、それを盗まれてしまったのです。何とかそのお金を工面しようとあちこち走り回ったんですけれども、結局、どうすることも出来なかった。

このままでは会社は倒産してしまう。妻や子供を養うことが出来ない。もういっそのこと、死んで保険金が入った方が家族のためになるのではないか。彼はそう思って、この橋にやって来たのです。そして、彼は最後にこう言いました。「私なんか生まれてこなければよかったのに。」

天使はこの言葉を聞いてビックリしました。「生まれてこなければよかった?あなたは本当にそう思っているのですか。本気なのですか。」「分かりました。あなたの願いをかなえてあげましょう。」こう言って、その天使は、彼が生まれてこなかった世界を彼に見せてくれたのです。

彼が住んでいたはずの家は、蜘蛛の巣が張って空き家になっていました。そこには彼の子どもも奥さんもいません。なぜなら、彼は生まれてこなかったのですから。

「妻はどこにいるのか」と彼は天使に尋ねました。すると天使は奥さんの様子を見せてくれました。めがねをかけた、暗い、地味な女性が、図書館でしょんぼりと働いていました。それが奥さんでした。奥さんはまだ結婚していません。

ジョージと結婚して初めて、彼女の人生は生き生きと明るく輝き始めたんですね。けれども、ジョージと出会わなかった彼女の人生は、依然として暗いままでした。

次に場面は、彼の弟のお墓に移ります。彼の弟は戦争から帰ってきたばかりで、本来なら勲章をもらって町の英雄になっていたはずでした。「何故なんだ。何故、弟は死んだんだ」天使は言いました。「あなたの弟は9歳で死にました」と。9歳の時、彼の弟は氷の上で遊んでいて、その時、氷が割れて水の中に落っこちてしまったのです。その時に助けたのが、他でもないジョージでした。けれども、彼は生まれてこなかったのですから、誰も弟を助けることが出来なかった。弟はそのまま死んでしまったのです。

彼はやりきれなくなって、バーに行きました。バーでお酒を飲んでいると、一人の浮浪者が入ってきました。バーの主人はその浮浪者を店から追い出しました。ふとその浮浪者の顔を見ると、どこかで見たことのある顔でした。「あっ、あの人は私が子どもの時にアルバイトをしていたあの薬局のご主人だ」彼は気づきました。何故、薬局の主人が浮浪者になってしまったのでしょうか。

彼がアルバイトをしていた時、その薬局の主人は息子が戦死した知らせを聞き、動顛(どうてん)して、届ける薬の調合を間違えてしまったのです。そして劇薬をジョージに渡し、届けさせようとしました。ところが、届ける途中でジョージがそれに気付き、その薬を届けなかったのです。届けなかった彼は、主人からこっぴどく叱られて、殴り飛ばされたんですけれども、しかし、そのお陰でこの薬局の主人は助かったのでした。けれども、彼は生まれてこなかったのですから、その劇薬は届けられて、この薬局の主人は、誤って人を殺してしまったのです。そのために、この薬局の主人は資格を失い、仕事を失い、今は路頭に迷っているのです。

「あなたは、生まれなかった方がよかったと言ったけれど、あなたの人生は、あなたの知らないところで色んな人の人生に繋がっている。あなたの人生には意味がある。あなたはこの世界に必要な存在なのだ。これでもあなたは、生まれなかった方がよかったと思うのですか」こう天使に問われた時に、彼は答えました。「もとの世界に戻りたい」と。

これはあくまでも空想の物語です。けれども、神様の目から見た時に、私たちの人生にも、これと同じようなことが言えるのではないでしょうか。私たちも、苦しみや悲しみに出会い、本当に打ちのめされた時に、「こんな人生なら、無かった方がよかった」と思うことがあります。

けれども、本当はそうではないのです。私たちの苦しみには、ちゃんと意味がある。私個人の問題だけではなくて、私の苦しみは周りの人たちの人生にも繋がっている。この世界の動きにも繋がっている。ちゃんと意味があるのです。万事が益となるように、神様が全てのことを計画しておられます。全てのことの意味は、まだ私たちには明らかになっていません。けれども、神様が万事を益として下さることを信じて、今この時を、諦めずに希望をもって歩んでいきましょう。

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