死んだ人の語り

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聖書の言葉

イエスは言われた。「わたしは復活であり、命である。わたしを信じる者は、死んでも生きる。生きていてわたしを信じる者はだれも、決して死ぬことはない。このことを信じるか。

新約聖書 ヨハネによる福音書 11章25~26節

申成日によるメッセージ

最近、教会員のお姉さんが亡くなって、教会で葬儀を行いました。亡くなった方は、わたしたちの教会の会員ではありませんが、時々教会に来られた事もあるクリスチャンの方です。2年前の真夏日に、一人暮らしの部屋で脳梗塞を起こし、さらに熱中症になって意識を失いました。そして、2年間ずっと植物のような状態を過ごし、つい最近、肺炎を起こして亡くなったのです。

わたしは亡くなった方と個人的に話すこともあまりなかったし、どのような人生を過ごし、どのような信仰生活をなさったのか良く分かりませんでした。牧師にとって、わたしは、このような場合の葬式説教はなかなか難いと感じていました。

しかし、ご遺族で私たちの教会の会員である方から、故人が使われた一冊の聖書をいただき、その聖書を手掛かりとして故人の信仰を発見し、故人が自分の信仰生活をとおして、葬儀に来られた方々に伝えたかったメッセージを語ることができました。

亡くなった故人は、何も語ることができないけれども、そして生きていた時も人々にイエス・キリストについてほとんど話したことがなかったとしても、残していた一冊の聖書を通して、彼女の気持ちを察することができたのであります。

わたしは今の教会で働き始めて6年目に入っています。この5年間、4回の葬式を執り行いました。亡くなった方々の事は、個人的にそれほど良く知っているのではありません。40数年の歴史がある教会ですから、もっと長い付き合いをしている教会の会員も多くいるのです。

しかし、亡くなった方々が残された様々な痕跡を通して、その方々の信仰を確認することができます。そして、そのように守ってきた信仰は、彼がこの世を去る時、このように牧師の口を通して、まるで遺言のように人々に語られて行くのです。

ふっと、自分が死んで、自分の葬儀に訪れた人々に、既に死んだわたしが何かを語るとしたら、何を話したいのかと考えて見ました。わたしの死に悲しんでいる妻や子供たちに、「突然いなくなってごめんなさい。いつか再び会えるから泣かないで強く生きなさい。愛してるよ」と言うかもしれません。ずっとお世話になっていた方が見えたら「本当に今までありがとうございます。」とお礼を言うこともあるでしょう。

また、式場内には深い交わりを持たず、挨拶だけの関係であった町内の方や、妻や子供の友たち関係など、ほとんど話したこともない方も見えるかもしれません。そのような方にも「ここまで足を運んで下さってありがとうございます。また、わたしの家族をよろしくお願いします」と言えるでしょう。

しかし、一人のクリスチャンとして、この世に生きて、最後の時を多くの人々を招いて礼拝をささげる者として、どうしても語りたいことがあります。クリスチャンであれ、ノンクリスチャンであれ、一度も生きている間には何も話したことがないとしても、この教会でささげる自分の葬儀礼拝に参列してくださった皆さんに話したいことがあるとしたら、それは、イエス様が話しておられた言葉「わたしは復活であり、命である。わたしを信じる者は、死んでも生きる。生きていてわたしを信じる者はだれも、決して死ぬことはない」という言葉です。

特に、「わたしを信じる者は、死んでも生きる」という言葉を、自信を持って言えるのは、死んだ後の時ではないかと思います。自分の肉体は死んでも、神の御国において、神様と永遠に生きることをすでに味わいながら、この言葉がいかに真実な言葉なのか実感しているならば、自分の葬儀礼拝に来てくださった方々に、この言葉を伝えたくてしょうがないのではありませんか。

イエス・キリストを信じて神に召された信仰者は、自分の生涯を通して、また、自分の死を通して、葬儀に参列した人々に語ります。それはどんなことでしょうか。「神様の御国においての希望」です。この世の中で、どんなに辛いことがあっても、神様を信頼し、イエス・キリストを信じて、試練と戦い抜いた先には、神様の素晴らしい御国がある。「皆、その御国でお会いしましょう。」信仰者は、人々にそう語っていると思います。まさに信仰者は最後の死をもって、イエス・キリストを証しするのです。

信仰者は、 そのような希望の中で生きる人です。彼は間違いなく生涯をかけて復活の希望を抱きながら、一日一日を過ごして来たでしょう。 そして、今わたしたちにもその希望を持つようにと勧めています。かの日に神の国で再会出来ることを楽しみにしながら、今日、自分に与えられた一日、一日を希望をもって生きたいと切に願います。

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