自閉症児の豊かな世界その5

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聖書の言葉

この使いについて、離れ去らせてくださるように、わたしは三度主に願いました。すると主は、「わたしの恵みはあなたに十分である。力は弱さの中でこそ十分に発揮されるのだ」と言われました。だから、キリストの力がわたしの内に宿るように、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう。

新約聖書 コリントの信徒への手紙二 12章8~9節

吉田実によるメッセージ

今回は久しぶりに私の息子についてのお話をさせていただきたいと思います。

私の息子は重度の知的障害を伴う自閉症という障害があるのですけれども、その息子に関して昨年の夏に大変心に残る出来事がありました。それは日曜日のことなのですけれども、朝の礼拝が始まりまして、静かにオルガンの前奏が流れておりますときに、突然息子がパニックを起こしまして、礼拝堂の入り口の大きなガラスを叩き割ってしまったのです。

私は牧師ですし、もう礼拝が始まっていましたから、説教壇の上で声を上げることも、飛んでゆくことも出来ず、「ケガをしなかったか!?」という心配と、「これから礼拝が始まるというときに、一体何をしてくれるのだ!」という気持ちが一気にこみ上げてまいりまして、本当に何ともいえない思いをいたしました。

けれどもそのときに、礼拝の司会をしてくださっている役員の方が機転を利かせてくださいまして、オルガンの演奏者にブロックサインを送ってくださって、前奏を繰り返して倍の時間弾いていただきまして、その間に役員さんや近くの方々が協力してガラスを片付けてくださいまして、危なくないようにダンボールまで張って下さいまして、「息子さん、ケガはありません。大丈夫ですよ!」と身振りで教えてくださる方もいらっしゃいまして、私がお話を始めますときには、もう何事も無かったかのように皆さんいつもどおり前を向いて座っていらっしゃったのです。

私はその様子を見て大変感激いたしました。そして、何か自分の教会自慢みたいに聞こえるかもしれませんけれども、「ああ私たちの教会は、こういう教会になれたのだ!」としみじみと思いまして、心から感謝をいたしました。そして、大変手前勝手な言い方かもしれませんけれども、うちの息子のような子どもの存在を受け入れてくださるときに、ご迷惑をおかけすることも多いのですけれども、知らず知らずのうちに教会としても恵みが与えられて成長出来ているということがあるのではないかと、思わされたのです。

今日の聖書の箇所を書きましたパウロという人には、何らかの肉体のとげがありました。それが何だったのか具体的にはわからないのですけれども、何かの病気だったのではないかと言われています。そしてその肉体のとげを取り除いて下さいと、彼は3度主に願ったと書いています。

でもそのとげは取り除かれることが無かったのです。そしてこのときのキリストの答えは「わたしの恵みはあなたに十分である。力は弱さの中でこそ十分発揮されるのだ」というものでした。そのような答えをいただく中でパウロは、この肉体のとげは自分が思い上がることなく神様に頼ることを忘れないように与えられたものなのだと悟りました。

もちろん病に全てそういう意味があるということではなくて、パウロ自身は自分の病をそう理解したということです。そしてキリストにあって「私は弱いときにこそ強い」と告白することが出来ました。キリストの力は、高ぶる者の強さの中にではなくて、へりくだって主にのみ寄り頼む者の弱さの中にこそ発揮されるのであって、キリストにあって私の弱さは、良い事が始まる舞台となる。そう確信することが出来たのです。このことを、私自身も少しずつ学ばせていただいています。

昔イギリスのお医者様が医療奉仕でアフリカの奥地に遣わされた時に、現地の人々が橋の無い流れの早い川を渡るときに、重たい石を胸にしっかりと抱えて、流されないように一歩一歩川底を踏みしめながら進んでゆく姿を見て、とても感心したそうです。重たい石を抱えて歩むなどという事は、普通ならしたくないことですが、流れの早い川を渡るときにはそれが有効なのです。

同じように、私たちにも「なぜ私はこんなものを抱えて生きなければならないのか」と思うような、受け入れがたい特徴があるのかもしれません。こんなもの投げ出してしまいたいと思うときもあるかもしれません。

けれども、「私を造り、ご自身の独り子の命と引き換えにしてくださるほど私を愛してくださる神様がいらっしゃって、そんな神様のご支配の中で全てのことが起こっているのなら、この私の弱さの中からも、この痛みや悲しみの中からも、きっと始まることがある。」そう信じて、「これが私だ」と、自分自身の特徴をしっかりと抱きしめ受け入れるときに、そこから本当に神様の良いご計画が始まる。人に流されない、世界でただ一人の私らしい歩みが、そこから始まると信じています。

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