行って、あなたも同じようにしなさい

私たちは、毎日の生活の中でいろいろなことに思い悩むことがあります。自分たちの毎日の生活のことや、食べるものや着るものなど、悩みは数え上げれば切りがありません。けれども、その中で私たちはいったいどういうことに一番思い悩んでいるでしょうか。

私たちが日頃一番思い悩んでいることは、おそらくは人間関係ということではないかと思います。私たちが生きるということは、周りにいる一人一人と支え合って生きるということです。人の支えがなければ、私たちは生きることはできません。ただ、周りにいる一人一人と、自分は全く何の問題も無く人間関係を築くことができている、こう言うことできる人は一人もいないのだと思います。

私たちは誰もが、人との関係において問題を抱えています。そのことに悩んで、苦しんでいます。仕事をする時に、人間関係の難しさに悩むことがありますし、家族の中でさえ、子供たちが親を愛することができなかったり、また夫婦の間でも互いに愛し合うことができない、そういうことがあります。

自分が愛すべき人を愛することができない。これはとても辛いことです。私たちは誰もが、周りの人たちとの関係の中で、何らかのこういう問題を抱えているのだと思います。そして、このような問題は、私たちが生きている限り決して無くなることはありません。家族の中で、そのことに苦しむということがありますし、この世界を見ても人が愛し合うどころか、憎み合うこと、命を奪い合う現実が強まっています。人が真実に愛し合うことのできない現実があります。このような中で、私たちは一体どのようにして、生きていけば良いのでしょうか。どこに、愛があるのでしょうか。

私が今働きをしている教会で、ある方がこういう話をされていました。私たちが人を愛することのできる秘訣がある。それは、イエス・キリストだったらこの時どうするかを考えることだ、こう言われていたのです。

私はその話を聞いた時に、本当にそうだなあと思いました。私たちが人と一緒に生きていて突きつけられる一つのことは、私たち自身の中には本当の愛は無い、ということです。人を愛そうと思っても愛することのできない自分があります。結局は自分自身の都合や、相手を支配しようとする自分がいます。私たちの愛は欠点だらけのものです。愛と言いながらも、実はいつの間にか、ただ自分のために生きている、自分を愛している、ということのあるものです。

しかし、聖書に書かれているイエス・キリストという方は違います。イエスは、神の愛をこの地上で実現されたお方です。このイエスは、人生の中で迷い出ているような人を尋ね求めておられます。迷い出ている人を御自分のところに連れて来よう、導こうとされます。この方は、この世で傷ついた一人一人を包み込まれます。そして、病気に苦しむ人、力の弱った人を力づけられます。誰からも見向きもされない人、助けを求めている人、そういう人のところにイエスは行かれます。そして、その人を心から憐れみ、その人に触れて、助けを与えます。そのようなイエスのことが聖書には書かれています。そして、このイエスは、自分のために生きるという人ではありません。むしろ私たちを愛するため、御自分の命を捨ててくださいました。この方は愛するため御自分を捨てられたのです。それがイエスの十字架です。イエス・キリストは私たちに本当の愛を示しておられます。

そして、このイエスの愛を受け取る時、私たちは変えられます。私たちは誰でも、自分の尊敬する人や自分の好きな人の影響をいつの間にか受けているということがあります。例えば、少し話し方が似てきたり、いつの間にかその人の真似をしているような時があります。それは、イエス・キリストを信じることに少し似ているのかもしれません。聖書に書かれているイエスの素晴らしさを知る時、私たちは変えられます。イエスのように生きることが、私にとっての幸せであり、生きがいである、そのように変えられるのです。私たちの中には真実の愛はありませんけれども、イエスの中にはそれがあります。そして、その愛を受け取る時、私たちは愛する者に造り変えられるのです。

ただ自分のために生きる人生は、決して幸せなものではありません。ただ自分のためだけに生きる生涯は、決して満たされたものではないのだと思います。むしろ、私が人を本当に愛することができた時、また私が人のために用いられた時、その時に私たちの内側には本当に満たされた思いがあるのです。

イエスは聖書の中で、御自分の愛について語られた後で、「行って、あなたも同じようにしなさい。」と言われました。イエスが示した愛は、愛の見えないこの世の現実にあって、最も力をもっている、そう言えるものです。この世にあって最も強く大きなもの、それがイエスの愛です。イエスはこの世界に来られて、その愛を実現してくださいました。イエスは、この愛を受け取ってあなたも同じようにしなさい、と私たちに語っておられます。この愛を受け取って、私たちも自分を献げて人を愛し、人のために生きる時、私たちの内には深い喜びがあるのです。