イーグルスの~ならず者~より

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聖書の言葉

そこで、彼は我に返って言った。『父のところでは、あんなに大勢の雇い人に、有り余るほどパンがあるのに、わたしはここで飢え死にしそうだ。ここをたち、父のところに行って言おう。「お父さん、わたしは天に対しても、またお父さんに対しても罪を犯しました。もう息子と呼ばれる資格はありません。雇い人の一人にしてください」と。』

新約聖書 ルカによる福音書 15章17~19節

吉田実によるメッセージ

今回は私の大好きな曲をご紹介しながら、聖書のお話をさせていただいております。今日ご紹介いたしますのは、イーグルスのデスペラード(邦題では「ならずもの」)という曲です。イーグルスとは1970年代にアメリカ西海岸を拠点に活躍した、カントリー色の強いロックバンドで、「テイク・イット・イージー」とか、「ホテル・カリフォルニア」など、数多くのヒット曲を生んだバンドです。そんなイーグルスのデスペラード(ならず者)という曲は、しみじみと心にしみる、とっても美しいスローバラードです。

この曲の主人公はデスペラード(ならず者)と呼ばれる一人の中年の男です。恐らくそういうニックネームなのでしょう。舞台は西部のどこかの牧場でしょうか。この男は長い間フェンスの上に座って遠くを眺めています。自分の手に入らない物を追いかけ続け、無茶なことばかりをしては傷つき、意固地になって自分の殻に閉じこもり、もはや感情もなくしてしまったような男、そんなデスペラードに友人が語りかける、という設定です。

歌詞の一部をご紹介します。「デスペラード、どうして目を覚まさないんだい?君は随分長い間フェンスの上に座っているんだね。なんて頑固なんだ。君には君の理由があるのだろうけれど、君が楽しんでやっていることは、君を傷つけることもあるんだ。デスペラード。どうして手に入らない物ばかり欲しがるんだい?君の痛み、君の飢え、それらは君に懐かしい場所を思い出させてくれるだろう。自由、自由!人々が讃美する自由。君はその言葉に囚われて、歩み続けている。この世界を、一人ぼっちで。デスペラード、どうして目を覚まさないんだい?フェンスから降りてきなよ。心を開いて。そこには雨が降っているかもしれないけれど、君の上には虹も架かるさ。君は誰かに愛されるべきだ。君は誰かに愛されるべきなんだ。手遅れになる前に。」こういう歌詞です。

私はこの曲の歌詞の意味を知った時に、初めにお読みした、ルカによる福音書にある放蕩息子の物語を思い出しました。父親がまだ生きている間に自分の財産の取り分を要求して、それを受け取った息子は、それを全部金に換えて外国に旅立ち、そこで遊び暮らします。けれどもやがてお金も底をつき、仲間も去って行ったときにその地方にひどい飢饉が起こります。誰も助けてくれない。何も食べる物がない。そんな痛みと飢えの中でこの放蕩息子は、懐かしい場所を思い出します。父のいる家です。そして彼は、父に謝って雇い人の1人にしてもらおうと決心をして、父の元に帰ってゆくのです。そしてそんな帰ってきた息子を、父親はそのまま息子として喜んで迎えます。それが放蕩息子の物語です。

この父親の姿に、御自身の元を離れてしまった罪人である私たちが帰って来ることを切に願ってくださる、父なる神様の愛が表されています。自分の好き勝手をして、手に入らない物を手に入れようとしては傷つき、意固地になって自分の殻に閉じこもるデスペラードに「君の痛み、君の飢えは、君に懐かしい場所を思い出させてくれるだろう。」と諭し、「心を開いてよじ登ったフェンスの上から降りておいで」と招き、「雨が降っても虹がかかる」と励まし、「君は愛されるべきだ。手遅れになる前に!」と諭す、このデスペラードの友人。その姿は、私たちの本当の故郷、すなわち造り主なる父なる神様の御元に帰ることが出来るように、そのための道となって下さって、十字架の上に死んでよみがってくださったお方、イエス・キリストのお姿と重なって見えて仕方がないのです。

人は自由に、自分が手に入れたいものをつかみ取りながら生きていても、心の深いところでは隙間風が吹き、傷つき、血が流れているのではないでしょうか。人が本当に心の底から満たされることが出来るのは、自分の手で何かをつかみ取ることではなくて、そうやって自分で自分の存在価値を証明することによってではなくて、たとえ何も持っていなくても私たちの存在そのものを喜び愛してくださる、造り主なる神様の御もとに立ち帰る時なのです。

そのことを実現するために、この世に真の人として生まれ、十字架の道を歩み通してくださった神の子救い主なるイエス・キリストは「わたしはあなた方を友と呼ぶ」と、御言葉を通しておっしゃいます。この真の友が、私たちにも語りかけてくださる。「君はあの懐かしい、帰るべき場所に帰るべきだ。君を造り、君を愛し、『帰っておいで』と招いておられる、父なる神様の愛の御手の中に君は帰るべきだ」と語りかけてくださっている。そんな曲として、この曲が皆様の心にも届きますように。「デスペラード、そこから降りておいで。デスペラード、心を開こうよ。君は愛されるべきなんだ。手遅れになる前に。」

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